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千二話 勿論、居る意味はある

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「ここが、ホワイトアントの巣に続く道です」

「ここか……お前たち、体力や魔力は万全の状態か!?」

「「「「「「「「「「おぅ!!!!!!」」」」」」」」」」

「よし。森の天敵を討ちに行くぞ!!!!!!!!」

「「「「「「「「「「オオォォオオオオーーーーーーーッ!!!!!」」」」」」」」」

気合も万全の状態で討伐隊はホワイトアントの巣への進行を開始。

ここからは完全にホワイトアントたちの領域。
到着するまでに数体のホワイトアントと遭遇し、その全てを殲滅させているため、多数の人間が殲滅に向かっているかもしれないという情報は伝わっていない。

だが、普段冒険者たちが行動しない彼らのホームグラウンドでの戦いとなれば、百パーセントの力を発揮するのは難しい。

それは討伐隊に参加していた冒険者たちも解っているが……彼らの表情に、不安の色は一切ない。

「ッ!! 来るぞ!!!!」

感知力に優れた斥候のエルフがホワイトアントの反応を感知し、仲間たちに即報告。

「戦るぞぉおおおおおお!!!!!」

「「「「「うぉおおおおおおっ!!!!!!」」」」」

今回討伐隊のリーダーを務めることになったエルフは接近戦が得意であり、腕力もそこら辺の前衛より強く、先陣を切ってホワイトアントを細剣で斬り裂いていく。

リーダーが後方で待機、指示を出さずにどうするんだと思われるかもしれないが、既にどういった戦法で戦うは事前に話し合っている。

後衛の者たちは前衛が戦っている個体よりも後ろの個体を集中的に狙って攻撃。

「ッ! そっちからも来るぞ!!!!」

ただ、進路方向が一つだけではないため、多方面に意識を向けなければならない。

「こっちは俺が対応しておく」

「では、俺は後方を警戒しておこう」

それでも今回は後衛であっても頼りになるメンバーがいるため、前衛で戦っている冒険者たちの顔には……やはり不満は一切ない。

ソウスケは器用に放った攻撃魔法を操り、前衛が戦っている個体よりも後ろの個体を殲滅。

ヤバい状況の前衛が居た場合、乱戦状態であっても絶対にミスショットしないようにコントロールし、援護に成功。

「よしっ、次行くぞ!!!!」

基本的に巣の殲滅が目標であるため、倒し終えたモンスターの死体は戻ってくるまで放っておくしかないが……ここには最強のアイテムボックスを会得しているソウスケがいる。

あっという間に死体を回収し、誰かにかすめ取られないように次の戦地へ移動。

「やぁ~~~、ソウスケさんたちがいるから本当に安心して戦えるぜ」

「どうも。ただ、前衛の人たちは……基本的に俺たちの戦いがないぐらい強いですよ」

一度目の衝突では数回ほど援護を行ったが、他はまだ前衛と衝突してないホワイトアントの殲滅。

ホワイトアントのランクがDということもあるが、前衛を担当している冒険者たちは非常に仕留めるのが早い。

(俺やミレアナ、ザハークがいることで士気が上がって、前衛の人たちが恐れることなく前に出れてるのかもしれないけど……正直、今回集まった戦力を考えれば、俺たち三人は要らなかったかもしれないよな)

本人の考えている通り、ソウスケたちが同行しているからこそ他の冒険者たちの士気が上がっている訳だが……集まった戦力を考えれば、犠牲はあれど……巣の殲滅は彼等だけで行えた可能性は高い。

だが、何事も例外という……嫌なパターンがある。

「ッ………………」

「ん? どうかしたか、ザハーク」

「……ホワイトアント、か? いや、すまない。少しホワイトアントとは違う気配を感じてな」

「ワームとか、モグラ系モンスターか?」

「その可能性も捨てきれないが…………すまない。あまり上手く言葉に出来ない」

「大丈夫だよ。まっ、あれだ。もしかしたらホワイトアント以外のモンスターがこっちに向かって来てるかもって話だろ」

ザハークの勘は侮れないと解っている為、ソウスケは直ぐに立体感知を展開して目に見えない部分を完全カバーしながら進み続けた。
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