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八百四十五話 何故集まる?

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数十分過ぎても貴族や騎士たちから囲まれ続けるソウスケ。

そんな中……意外にもザハークが貴族令嬢たちに囲まれていた。

「ザハークさん、今回の戦争で一番強かった相手は、どんな敵でしたか?」

ソウスケが直接口にした訳ではないが、間接的にお前たちではないと宣言したため、これは関わろうと頑張るだけ無駄だと判断。
貴族界で生きる彼女たちは基本的に蝶よ花よと育てられるが、ある程度の年齢までくると、そういったやり取りが自然と身に付く。

貴族界の嫌な部分ではあるが、空気を読む云々は大前提として、先程ソウスケが口にした意図を汲み取り、これ以上悪い印象を与えない様に下がるのが一番ベスト。

そして戦争で活躍した者はソウスケたちだけではなく、他の冒険者や騎士たちも活躍していたが……その中でも気になる存在と言えば、ソウスケの従魔であるザハーク。

「……俺が戦った相手に限れば、やはりルティナ・ヴィリストだな」

何故自分の元にこれほど多くの貴族令嬢たちが集まるのか理解不能。
理解不能ではあるが、それでもソウスケの従魔として、あまり失礼のない態度を取ろうという心がけはあった。

「ルティナ・ヴィリストと言えば、あのサイレントハーベストと呼ばれている」

「そんな二つ名があるらしいな。今までは基本的にモンスターを相手に戦ってきたこともあって、技術がある強敵との戦いに苦戦した……と言うイメージがある。少し前にクリムゾンリビングナイトやオールドオーガといった、技術力がある人型のAランクモンスターと戦っていたのだがな……うむ、やはりあいつは強かった」

綺麗どころ令嬢たちに囲まれても頬が赤くなることはなく、問われた内容に対して淡々と答える蒼いタキシードを身に纏う超ムキムキのオーガ。

希少種ゆえに見た目が鬼人族に近いこともあり、何人かの令嬢たちはザハークがモンスターであるという事実を、殆ど忘れかけていた。

「え、Aランクモンスター以上の強さが、あったということなんですね」

「そうだな……腕の一本や二本などくれてやる、といった闘争心で一歩踏み込まなければ倒さないような強敵。基本的に理解されることはないだろうが、あの戦いは……過去最高レベルの昂りを感じた」

淡々と質問に答えていた表情に、薄っすらと……心の底から楽しさを感じていたと解かるほど、狂気さを抑えた笑みを浮かべるザハーク。

ザハークの狙いとしては、普段通りの強敵と出会った時に浮かべる笑みを出すのは不味いと思い、主人に迷惑をかけない為に抑えた……ただそれだけであり、他意はない。
チラッと見ていたソウスケやミレアナもそれは理解していた。

しかし、傍で話しを聞いていた令嬢たちの反応は……やはりザハークには理解不能。

(発情、してるのか? いや、そういった目線ではないよな……とは言っても、俺はモンスターなんだが)

ザハークは万が一の可能性を捨て、無理矢理憧れの感情が籠った視線を向けられているのだと納得。

「ただ、戦場では俺よりもソウスケさんの方が活躍していたがな」

「まぁ!!! それはとても気になります!!!!」

そういった話を聞こうとしても、ソウスケはソウスケで多くの貴族や騎士に囲まれているため、どう考えても聞ける状態ではない。

繋がりを持つのは無理だと解っても……今回の戦争で一番活躍した噂されている少年の活躍内容など、気にならない訳がない。

(ほぅ、見る眼はあるようだな)

自身の主人の話に興味を持った令嬢たちに対し、気分を良くしたザハークはバラすと面倒な内容は省き、戦場でどれだけソウスケが活躍し、多くの敵を蹴散らしてきたのかをなるべく解りやすく説明し始めた。

ザハークのあまり失礼が無いようにという心がけもあって、令嬢たちは途中で飽きることはなく、最後まで集中して聞き続けた。
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