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八百四十話 良いギャップ
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「……とてもお似合いです」
三人が礼服に着替えた姿を見た迎えの騎士は、無意識に賞賛の言葉を口にしていた。
とてもありふれた言葉ではあるが、それでもそれ以外の言葉が見当たらない。
「ありがとうございます。個人的には、ちょっと恥ずかしいですけどね」
似合っていると他人から褒められれば、多少なりとも自信が付くというものだが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
「授与式? 的なのが終わって、それからパーティーが始まるんだよね」
「大体そういった流れになりますね」
「美味い飯が待っていると知っていれば、退屈な時間も我慢出来るというものだな」
今発したザハークの言葉を騎士が耳にすれば、大なり小なり怒りを感じる。
それでも……そもそも人ですらないザハークからすれば、授与式など面倒極まりないイベント。
正直なところ、折角購入した蒼をベースとした礼服も、今すぐ脱いでしまいたい。
「それもそうですね。ところで、授与式と言えど私たちは冒険者ですから、その場で褒美を渡されると思いますが……いったい国は何を用意するのでしょうか」
「妥当に金なんじゃないのか? 白金貨何十枚……いや、黒曜金貨数枚ぐらい貰ってもおかしくないか?」
自己評価が高過ぎるのではなく、ソウスケたちの活躍を考えれば、寧ろ数枚程度では少ないと考える者がいてもおかしくない。
「金か……いや、生きていく上で金が大事だということは解っているが、少し味気ないな」
「そうですね。ザハークの言葉には一理あります。私たちの……特にソウスケさんの活躍を考えれば、もっと特別な何かを褒美として渡してもおかしくない……寧ろ、それが妥当でしょう」
「頑張ったのは俺だけじゃなくて二人もだろ」
リーダーらしく仲間の労力も労うソウスケ。
しかし、わざわざ自身の戦闘力を分散させた分身の活躍も含めれば、ソウスケが今回の戦争で一番活躍したというのは、紛れもない事実。
「俺もミレアナも色んな敵をぶっ飛ばしてきたが、ソウスケさんは……あれだろ、自分が死ぬリスクを侵してでも、戦況を有利に進めようと頑張ってただろ。それを考えたら……王城には、宝物庫ってのがるんだろ? その中に保管されている武器の一つか二つ貰えるんじゃないか?」
「良いアイデアね、ザハーク。もし国がソウスケさんへの褒美を金だけで済ませようとするなら、直訴しましょう」
「おいおい、待て待て待て馬鹿野郎! せっかく戦争が終わったのに、なんで一応味方同士で争うんだよ!!」
二人の気持ちは嬉しいが、相変わらずの暴走っぷりは勘弁してほしい。
「到着いたしました」
あれこれ話している内に馬車は王城内に到着。
馬車から降りた三人は騎士の案内に従い、とある一室に通された。
「よぅ、三人とも!」
「どうも」
「赤いタキシードか……良いじゃねぇか。超カッコ良いぜ、ソウスケ」
「本当ですか? 俺としては、服に着られてる感が強い気がするんですけど」
「おいおい~、自己評価が低すぎるぜ? あれだけ戦場で活躍したんだ。確かにお前の顔は優男よりだが、その分醸し出す雰囲気にギャップがある。それを今着てる赤いタキシードは、存分に良い意味でのギャップを引き出してる」
「こいつの言う通りだよ、ソウスケ君。褒美を受け取り終わった後のパーティーでは、多くの女性たちから言い寄られること間違いなしだよ!」
「げッ!! マジですか?」
優顔先輩からの褒め言葉に、それはそれで困るという思いが言葉と顔にしっかり現れていた。
「はっはっは!! 確かにそうなってもおかしくねぇな。ソウスケはまだ十五か十六だろ? 婚約者がいない令嬢たちからすれば、少しのはしたなさなんて気にしないレベルで狙われるだろうな」
「……俺、パーティー最中は美味い飯だけ食べられればそれで良かったんですけど」
「無理無理、絶対無理だから諦めな!」
先輩冒険者からの絶望宣言に、がっくりと肩を落とした。
三人が礼服に着替えた姿を見た迎えの騎士は、無意識に賞賛の言葉を口にしていた。
とてもありふれた言葉ではあるが、それでもそれ以外の言葉が見当たらない。
「ありがとうございます。個人的には、ちょっと恥ずかしいですけどね」
似合っていると他人から褒められれば、多少なりとも自信が付くというものだが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
「授与式? 的なのが終わって、それからパーティーが始まるんだよね」
「大体そういった流れになりますね」
「美味い飯が待っていると知っていれば、退屈な時間も我慢出来るというものだな」
今発したザハークの言葉を騎士が耳にすれば、大なり小なり怒りを感じる。
それでも……そもそも人ですらないザハークからすれば、授与式など面倒極まりないイベント。
正直なところ、折角購入した蒼をベースとした礼服も、今すぐ脱いでしまいたい。
「それもそうですね。ところで、授与式と言えど私たちは冒険者ですから、その場で褒美を渡されると思いますが……いったい国は何を用意するのでしょうか」
「妥当に金なんじゃないのか? 白金貨何十枚……いや、黒曜金貨数枚ぐらい貰ってもおかしくないか?」
自己評価が高過ぎるのではなく、ソウスケたちの活躍を考えれば、寧ろ数枚程度では少ないと考える者がいてもおかしくない。
「金か……いや、生きていく上で金が大事だということは解っているが、少し味気ないな」
「そうですね。ザハークの言葉には一理あります。私たちの……特にソウスケさんの活躍を考えれば、もっと特別な何かを褒美として渡してもおかしくない……寧ろ、それが妥当でしょう」
「頑張ったのは俺だけじゃなくて二人もだろ」
リーダーらしく仲間の労力も労うソウスケ。
しかし、わざわざ自身の戦闘力を分散させた分身の活躍も含めれば、ソウスケが今回の戦争で一番活躍したというのは、紛れもない事実。
「俺もミレアナも色んな敵をぶっ飛ばしてきたが、ソウスケさんは……あれだろ、自分が死ぬリスクを侵してでも、戦況を有利に進めようと頑張ってただろ。それを考えたら……王城には、宝物庫ってのがるんだろ? その中に保管されている武器の一つか二つ貰えるんじゃないか?」
「良いアイデアね、ザハーク。もし国がソウスケさんへの褒美を金だけで済ませようとするなら、直訴しましょう」
「おいおい、待て待て待て馬鹿野郎! せっかく戦争が終わったのに、なんで一応味方同士で争うんだよ!!」
二人の気持ちは嬉しいが、相変わらずの暴走っぷりは勘弁してほしい。
「到着いたしました」
あれこれ話している内に馬車は王城内に到着。
馬車から降りた三人は騎士の案内に従い、とある一室に通された。
「よぅ、三人とも!」
「どうも」
「赤いタキシードか……良いじゃねぇか。超カッコ良いぜ、ソウスケ」
「本当ですか? 俺としては、服に着られてる感が強い気がするんですけど」
「おいおい~、自己評価が低すぎるぜ? あれだけ戦場で活躍したんだ。確かにお前の顔は優男よりだが、その分醸し出す雰囲気にギャップがある。それを今着てる赤いタキシードは、存分に良い意味でのギャップを引き出してる」
「こいつの言う通りだよ、ソウスケ君。褒美を受け取り終わった後のパーティーでは、多くの女性たちから言い寄られること間違いなしだよ!」
「げッ!! マジですか?」
優顔先輩からの褒め言葉に、それはそれで困るという思いが言葉と顔にしっかり現れていた。
「はっはっは!! 確かにそうなってもおかしくねぇな。ソウスケはまだ十五か十六だろ? 婚約者がいない令嬢たちからすれば、少しのはしたなさなんて気にしないレベルで狙われるだろうな」
「……俺、パーティー最中は美味い飯だけ食べられればそれで良かったんですけど」
「無理無理、絶対無理だから諦めな!」
先輩冒険者からの絶望宣言に、がっくりと肩を落とした。
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