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七百九十一話 予想外の反撃

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(正直、大当たりというか、嬉しい誤算というか……まさか、冒険者になって数年も経っていないルーキーが、ここまで高い実力と優れた視野を持っていたとはな)

ソウスケに関する噂は、集団のリーダーを務める男も耳にしていた。

耳を疑うような噂が幾つもあり、普通はそれらを信じないの者が多い。
しかし、大き過ぎる噂は、幾つも流れるものではない。

一つだけでも市民や同業者から疑問の声を持たれるのに、幾つも流れれば余計に実力を疑われてしまう。
そんな事は、子供でもなんとなく解かる。

だが……ソウスケや、ソウスケたちパーティーに流れる噂は短期間のうちに、いくつもあった。
その中にはパーティーのリーダーであるソウスケが、ミレアナという美女エルフを働かせて生活している、ヒモニートだという内容もある。

それでも、一人でBランク……Aランクモンスターを倒せる実力があるという噂もあり、実際に会ったことがない人物からすれば、色々とイメージし辛いルーキーと言える。

(今回の衝突では、相手も並の戦闘力ではなかった……運悪くなくとも、一人か二人……最悪、三人ぐらいは殺られていたかもしれない)

色々と信じられない噂が多いルーキーだったが、実際に戦ってみれば……ソウスケのお陰で、死人が出なかったと言える場面が幾つかあった。

(ソウスケがいたからこそ、重傷は負えど死者は出なかった。戦闘力、多数の攻撃手段だけではなく、サポート能力も優れている……おまけに人との付き合い方も良いときた)

悪いところが一つもないように見える。
だからこそ……リーダーは、戦争が終わった後のソウスケに、早い段階から合掌を送っていた。

「そういえばソウスケ、お前って錬金術も出来るんだったか?」

「一応出来ますよ。そのお陰で、ポーション代がかからずに済んでます」

そのスキルを考えれば間違った会話ではないが、そもそもソウスケを含めた三人の戦闘力からいって、ポーションを使う機会は殆どない。

「羨ましいねぇ~。そういったスキルを身に付けてたら、冒険者を引退した後も、金に困らないもんな」

「そうですね。ぶっちゃけ老後は安泰だと思ってますっ!?」

そもそも金には困ってないけど、と思いながら答えた瞬間に、ルクローラ王国方面から遠距離攻撃が飛んできた。

ソウスケやミレアナを含めた魔法使い組とタンク組が即座に防御。
魔力もポーションを飲んで回復していたため、魔力量は問題無い。

スタミナは全回復していないが、戦闘に支障をきたす程ではない。

(先手必勝だ!!!!)

いきなり奇襲に対して、ソウスケは慌てることなく防御魔法を発動して遠距離攻撃を防いだ後、直ぐにエアステップを発動。

同時に身体強化系スキルも発動し、攻撃が飛んできた方に向かって走る。

(っ!? 邪魔くせぇえええええっ!!!!)

ソウスケが駆けだした時には、既に第二砲目が放たれていた。

客観的に見て、速攻で潰そうとして防御魔法の前に出たソウスケの動きは、完全に悪手。

だが、ここから目の前の攻撃を撃ち破る手段が……ない訳ではない。

右手に持つグラディウスを手放し、亜空間から一本の槍を取り出す。
その槍とは……レヴァルグ。

先日、超古代遺跡の中で普通ではないミスリルゴーレムを倒し、無理矢理ゲットした超が一つでは足りない程の名槍。

魔力をふんだんに使い、炎を……滅炎を発動させ、思いっきりぶん投げた。

「っ、逃げろ!!!!!!!!」

敵が放った遠距離攻撃はレヴァルグによる投擲で大きく削られ、大幅に下がった。

その光景にも驚きだが、敵騎士や冒険者たちが驚いたのは、その投擲速度。
予想していなかった一撃とはいえ、完全に反応が遅れた。

もう迎撃や防御も間に合わない。
そうなれば残る手段は……逃走しかない。

リーダーの指示に即従い、集団は即座にその場から離れた。
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