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六百三十四話 あれ? 気付いたら……

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「ザハークの奴、楽しそうだな」

「溜まっていたフラストレーションが発散できて嬉しいのでしょう」

二人の目の前でザハークは迫りくるマグマゴーレムを相手に恐れることなく、寧ろ嬉々とした表情で体の所々に水の魔力を纏い、肉弾戦を楽しんでいた。

「はっはっは!! 意外と堅いじゃないか!!!」

ただ体が熱いだけではなく、防御力がダンジョンの中で戦ってきたモンスターと比べて上がっている。

身体強化を使うマグマゴーレムに対し、強化系のスキルを使わずにかなり本気で挑むザハーク。
スピードはザハークが上なので攻撃をモロに受けることはないが、ザハークはバトル大好き脳。

その為、マグマゴーレムが放つパンチや蹴りに合わせ、自身も攻撃を放つ。
そして数体のマグマゴーレムの魔力が切れかかってきたと解れば、最後は魔石を貫手で抜き出して戦闘を終わらせる。

気分が高揚し、テンションが上がっていても大事なことは忘れていなかった。

「お疲れ様、ザハーク」

「ふっふっふ……ソウスケさん、これから遭遇するモンスターは全て俺が相手しても良いぞ!!!」

「そんなに楽しかったか。でも、俺もそれなりに体を動かしたから全部は任せられないな。何よりも、俺がターリアさんの武器を造るんだから、俺が素材となるモンスターを倒さないとな」

「む…………そうだな、それは確かにそうだ」

ザハークも鍛冶を趣味とする者として、ザハークの気持ちは解る。

「二人に戦いを全て任せていると体が鈍るので、私も戦わせてもらいます」

結局いつも通り三人が交互に戦う流れとなるが、今回は比較的ザハークが戦う機会が多い。
しかしザハークはマグマ帯の暑さなどものともせず、マグマゴーレムの他にもレッドゴーレムやフレイムリザードを次々に撃破していく。

「……来そうだな」

ザハークが火や溶岩タイプのモンスターとの戦闘を楽しんでいる時、ソウスケは近くにマグマの海があれば立体感知の範囲を広げていた。

そしてついにお目当てのモンスターが水上に飛び出した。

「はっ!!!!」

ジャストタイミングを狙って放たれた水の槍は見事マグマサーペントの頭を貫いた。

「よっと」

そして水の槍には返しが付いているので、そのまま引っ張ることでマグマサーペントの死体がマグマの海に飲まれることなく回収に成功。

「流石ですね、ソウスケさん」

「おう、ありがと。こうしないと中々マグマサーペントを倒せないからな」

ソウスケは決してカナヅチではない。
だが、流石にマグマの中の海を泳げるようなマジックアイテムは持っておらず、水の魔力や魔力操作を駆使してもマグマの海を無事泳げる気がしない。

(偶々近くにマグマサーペントが現れたから上手くいったけど、マグマの海目掛けて水槍を放って捕らえるのは無理だよな……いや、頑張ればいけるか?)

ソウスケの予想だ、マグマの海にウォーターランスをぶち込んでも引き上げる前に蒸発してしまう。
だが、決して可能性がゼロという訳ではない。

「なぁ、ミレアナ。頑張ればマグマの海の中からでもマグマサーペントを狩れるかな」

「そうですね………不可能ではないと思いますが、普通に先程の様にマグマサーペントが海面に上がってきた瞬間を狙って攻撃し、狩る方が効率が良いかと」

「あぁ~~~~~~…………うん、確かにその通りだな」

わざわざ頑張ってマグマの海を攻略する必要などない。
それを知ったソウスケは再びザハークが戦闘を行っている間、マグマの海を立体感知で調べ………海面に上がって来るマグマサーペントを次々に狩った。

そしてミレアナも同じ方法で探知して、ジャストタイミングでマグマサーペントを狩る。

「……二人とも、俺より倒してるんじゃないか?」

「今回は偶々だな」

ザハークが楽しくCランクのモンスターと戦っている間、二人の方がマグマサーペントを狩ってしまうなんて状況が起きてしまうが、気にせず二人は暇な時間を活かしてサーペント狩りに勤しんだ。
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