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この血が途絶えたとしても構わない
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「用意してもらった部屋でこういうことするのはちょっと気が引けるな……」
「ユリーって意外と真面目ですね。よその国に招待されて、その国の美女と一晩遊ぶくらいどこの王様もやってると思うけど」
「ウィリスたちはそんなことしないだろ」
「……アッシュ様もウィリス様も、本当に変わった王子様ですね」
歌うように笑ったウルは、オレの首へ両腕を回すと、子猫のようにじゃれながら柔らかな寝台へと倒れ込んだ。
馴れた手付きで舞台を夜に変える手際の良さには、つい嫉妬してしまいそうになる。
けれどそれも、不安げに揺れるウルの瞳を見下ろせば、自然と溶けて消えていった。
「ホントに、ユリーは俺に抱かれてくれるんですか?」
「あぁ」
オレが押し倒すような形で、寝台に寝転ぶウルを見下ろす。
どうにも落ち着かないのは、オレがウルに食われる側だと自分自身でわかっているからだ。
ドキドキと騒ぐ心臓の音を聞かれたくない。だけど、今よりももっと近付きたい。
相反する思いを胸にウルの頬に手を触れれば、嬉しそうにウルは目を細めて、オレの手に頬を擦り寄せた。
「俺ね、ユリーがこの先、女の子抱けないような体になっちゃえば良いって思ってるんですよ。それでも」
星空の落ちた寝台の中、不似合いな声ばかりを上げているウルの唇を強引に塞ぐ。
驚いた様子でオレを見つめたウルの瞳が揺れている。その目がオレだけを映せば良いと思っているオレと、ウルの願いは多分同じだ。
「オレには一生、ウルだけでいいよ」
「……ユリーって今まで女の子抱いたことある?」
「ないけど」
「お城に来る前も? こんなにカッコいいんだから、故郷でもモテてたんじゃないですか?」
「そんなことねーよ。……それに、抱きたいって思った子もいないし。だから、オレはウルだけで十分」
片手でウルの頬に触れれば、ウルは困ったような顔で笑っていた。どうしようもない人だ、とそんな声が聞こえた気がする。
オレがこの城に来たのは、そうすれば母ちゃんに楽をさせてやれるからだった。
そのためにやるべきことはこなすつもりだったけれど、正直国の未来まで背負っていくつもりはない。
後継者なんてものは、あいつらが勝手に用意すれば良い。
ここは、母ちゃんだって生きている国だ。
平和な統治のための協力は惜しまないけれど、好きでもない女を抱いて子供を産ませるなんて真似したくはなかった。
もしもウルが女だったならまた違った考えになるかもしれないけれど、目の前にいるウルは男で、オレを抱きたいと言ってくれた。
だったら、オレもそれがいい。
隠しきれない程に惹かれていく相手から、オレを求められたんだ。そこに、惜しむ理由なんてひとつもない。
「ユリーも知ってると思うけど、俺はユリーだけじゃないです」
「うん」
「男相手にしたことも女相手にしたこともあるし、抱いたことも抱かれたこともある」
「知ってる。でも、ウルが自分から抱きたいって思ったのはオレだけなんだろ?」
頬に触れたオレの手に自分の手を重ね、ウルは一度だけはっきりと頷いた。
「ユリーだけです。俺が、自分からそばにいたいって願ったのは、後にも先にも貴方一人です」
その言葉で、十分だった。
頷いたオレの肩にウルの腕が伸ばされ、気付いた時には視界は引っくり返り、黒髪を揺らしながらウルがオレを見下ろしていた。
「ユリーって意外と真面目ですね。よその国に招待されて、その国の美女と一晩遊ぶくらいどこの王様もやってると思うけど」
「ウィリスたちはそんなことしないだろ」
「……アッシュ様もウィリス様も、本当に変わった王子様ですね」
歌うように笑ったウルは、オレの首へ両腕を回すと、子猫のようにじゃれながら柔らかな寝台へと倒れ込んだ。
馴れた手付きで舞台を夜に変える手際の良さには、つい嫉妬してしまいそうになる。
けれどそれも、不安げに揺れるウルの瞳を見下ろせば、自然と溶けて消えていった。
「ホントに、ユリーは俺に抱かれてくれるんですか?」
「あぁ」
オレが押し倒すような形で、寝台に寝転ぶウルを見下ろす。
どうにも落ち着かないのは、オレがウルに食われる側だと自分自身でわかっているからだ。
ドキドキと騒ぐ心臓の音を聞かれたくない。だけど、今よりももっと近付きたい。
相反する思いを胸にウルの頬に手を触れれば、嬉しそうにウルは目を細めて、オレの手に頬を擦り寄せた。
「俺ね、ユリーがこの先、女の子抱けないような体になっちゃえば良いって思ってるんですよ。それでも」
星空の落ちた寝台の中、不似合いな声ばかりを上げているウルの唇を強引に塞ぐ。
驚いた様子でオレを見つめたウルの瞳が揺れている。その目がオレだけを映せば良いと思っているオレと、ウルの願いは多分同じだ。
「オレには一生、ウルだけでいいよ」
「……ユリーって今まで女の子抱いたことある?」
「ないけど」
「お城に来る前も? こんなにカッコいいんだから、故郷でもモテてたんじゃないですか?」
「そんなことねーよ。……それに、抱きたいって思った子もいないし。だから、オレはウルだけで十分」
片手でウルの頬に触れれば、ウルは困ったような顔で笑っていた。どうしようもない人だ、とそんな声が聞こえた気がする。
オレがこの城に来たのは、そうすれば母ちゃんに楽をさせてやれるからだった。
そのためにやるべきことはこなすつもりだったけれど、正直国の未来まで背負っていくつもりはない。
後継者なんてものは、あいつらが勝手に用意すれば良い。
ここは、母ちゃんだって生きている国だ。
平和な統治のための協力は惜しまないけれど、好きでもない女を抱いて子供を産ませるなんて真似したくはなかった。
もしもウルが女だったならまた違った考えになるかもしれないけれど、目の前にいるウルは男で、オレを抱きたいと言ってくれた。
だったら、オレもそれがいい。
隠しきれない程に惹かれていく相手から、オレを求められたんだ。そこに、惜しむ理由なんてひとつもない。
「ユリーも知ってると思うけど、俺はユリーだけじゃないです」
「うん」
「男相手にしたことも女相手にしたこともあるし、抱いたことも抱かれたこともある」
「知ってる。でも、ウルが自分から抱きたいって思ったのはオレだけなんだろ?」
頬に触れたオレの手に自分の手を重ね、ウルは一度だけはっきりと頷いた。
「ユリーだけです。俺が、自分からそばにいたいって願ったのは、後にも先にも貴方一人です」
その言葉で、十分だった。
頷いたオレの肩にウルの腕が伸ばされ、気付いた時には視界は引っくり返り、黒髪を揺らしながらウルがオレを見下ろしていた。
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