攻撃と確率にステ振りしていたら最強になりました

りっくり

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第四十三話 ボスのドレイン撃破と水の間

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 スルトが地面に向かって拳を打ちつけると僕たちの下から炎が立ち上る。
 他のプレイヤーなら普通は攻撃を避けるところなのだが、僕とトモは【炎無効】のスキルを持っているので、その場から一歩も動かなかった。

「トモ! どうやってこのボス倒す?」
「やっぱり殴って倒そうぜ!」
「いや、いや。食べよう! 全身から火が出てるからジューシーだって!」
「そうか? 焦げた味がしそうなんだけど……」

 炎攻撃が全く効かない僕とトモは炎の中、平然とそんな話をしていた。

「どの倒し方にせよ、足を切ってからだ!」
「そうだな!」

 僕の提案にトモも賛同してくれたので、僕はスルトの足を切るために接近を開始する。
 
「ウォォォォォォォォ!」

 スルトは雄叫びを上げながら拳を振り下ろしてくる。拳の攻撃はダメージを受けてしまうと思われるので、僕は星斗天雷刃で拳を流す。そして足に一撃を与える。

「いてーっ!」

 スルトの足に攻撃を当てた瞬間、硬かったので手が痺れてしまう。足を切ることも一筋縄ではいかないようだ。
 スルトは僕が攻撃した方の足を上に上げ、踏みつけてくる。
 僕はダッシュで後退し、緊急回避を行う。スルトの足が地面につくと予想していた通りに複数の場所で噴火が起こる。噴火に当たってもダメージはないので、避けないのだが……。

「ダメージは通るんだけどスルトの足、固すぎる」
「何回も同じところに攻撃を当るしかないな」
「やっぱりそうだよなぁ! トモも僕が攻撃したところを集中的に狙ってくれよ!」
「任せろ! そういうのは得意だ!」

 トモと作戦会議をすると僕は再びスルトに接近し、同じ場所に攻撃する。  

「ウォーターアローウ!」

 僕が攻撃した場所にトモも水の矢を撃ち込む。そんな方法で攻撃を続けているとやっと足を切ることが出来た。足を切るだけで十分もかかってしまった。

「よっしゃぁぁぁ!」

 僕とトモは同時に歓声を上げる。足を切られたスルトは巨体を支えきれずにうつ伏せに倒れる。

「ではでは、一口」

 僕はスルトにかじりつく。

「やっぱりジューシーで美味しい! トモ、騙されたと思って食べてみて!」
「ヒビトがそこまで言うなら、一口だけ」

 トモもスルトにかじりつく。

「本当だ! 美味しい!」

 僕とトモはスルトを跡形もなく平らげた。

【レベルが60になりました‼︎ 灼熱を獲得しました‼︎】

「トモ、スキルゲットした?」
「おう! 灼熱だって」
「僕も灼熱を手に入れた」
「ヒビト! どんなスキルか、一緒に見ようぜ!」
「いいよ」

 トモがリンクメニューの操作を始めたので、僕は覗き込む。

【灼熱、半径三メートル以内にいるモンスターやプレイヤーを焼き尽くす。一日一回だけ使用可能。 獲得条件、スルトをドレイン撃破すること】

「トモ、ドレインって何?」
「このゲーム内でのドレインは吸収すると言う意味だ! 本来の意味は違うけど」
「それは知ってる! 次の階に進もう!」
「おう!」

 そんな話をすると僕とトモは階段を登っていく。
 次の階層のメイン通路のサイドには川が流れており、滝の流れる音が聞こえてくる。水の奏でるせせらぎに心が洗われて癒される。

「癒されるわ~!」
「リフレッシュできる音だな!」

 僕とトモは心地いい感動で心が満腹になっていた。

「何からやろうか?」
「もちろん! 第三回採掘対決でしょ!」
「やっぱりそうきたか……!」
「当たり前だ! 前回はぼろ負けしたから、今回は勝つ!」
「分かった! やるからには僕も負けない!」

 僕とトモはまた採掘対決を行ことになった。条件は一緒なのでいい勝負になりそうだ。【水無効】のスキルも手に入れたいので、死なない程度に水属性のモンスターの攻撃を受けようと思っている。
 僕が採掘しているとメイン通路のサイドに流れている川から足がはえた魚が二匹飛び出して来た。

「魚から足がはえてるじゃん! おもしろ!」

 僕は顔に気色を浮かべる。足が生えた魚は口から水の玉を撃ってくる。僕は【水無効】のスキルを手に入れるために避けることはせず、わざと攻撃を受ける。

「これくらいのダメージなら、ヒーリングプレスレットと歌唱のスキルで対処できるな!」
 
 僕は足が生えた魚の攻撃を無視して、採掘を続ける。

「あれ? さっきよりもダメージ量が増えた気がする……」

 HPの減りが最初に攻撃を受けた時よりも増えていたのだ。HPの下には水の雫のようなアイコンが付いている。

 防御力が減少したのだろうか……。回復は追いついているので、あまり気にしなくて良いのだが……。

 第三回採掘対決は十五分間、行われた。採掘対決はこれで三回目なのだが、ログハウスの修理に使えそうな素材は手に入っていない。リリにいいように利用されている気がする。

「ヒビト! どれくらい取れた?」
「これくらいだな!」

 僕はトモに第三回採掘対決の成果を見せる。

「なるほど、なるほど。俺の方が少しだけ多いな!」
「ちっ! 負けたか……」
「よっしゃぁ! これでヒビトに追いついたぞ!」
 
 トモは少しはしゃいだ口調で言う。現在の採掘対決の勝敗はお互いに一勝一敗一分けである。
 あと何回やれるか分からないが、僕とトモのどちらが勝つのか少しだけ楽しみだ。

「トモ! 水無効スキル手に入れた?」
「もちろんだ!」

 どうやら僕とトモは同じことを考えていたらしい。簡単にダンジョンを攻略するためにはこの方法が一番いい。
 しばらく歩いていると前の階層で見たことがあるお手玉をしている水属性のモンスターがいた。

「こいつ! この階層にもいるのかよ!」
「すべての階層にいるんじゃないか?」
「そんな気がしてきた。このダンジョンを作った人はどういう意図でこういう配置にしたと思う?」
「絶対に趣味だと思う!」
「趣味ならユーモアがある人だな! この先も面白いことがあるかも!」
「だな! ちょっくらスキルゲットしてくるわ!」
「おう! いってらっしゃい!」

 トモはそう言うとお手玉をしているモンスターのもとに向かっていく。またしてもトモは技を全て真似して戻ってきた。

「スキル手に入った?」
「もちろん! お手玉(水玉)だって!」
「お手玉(炎玉)の水バージョンか?」
「その通り!」
「このまま、全属性コンプリートしないとな!」
「そのつもりだ!」
 
 トモは決意を固めているようだ。僕とトモは奥に進んでいく。歩き出してから五分、僕は右足に何か違和感を覚える。

「トモ! ヤバイ!」
「何が?」
「何かボタンを押したかもしれない……」
「おい、おい、おい!」
「何か起きたら、ごめん!」

 ボタンを踏んでから一秒後、僕とトモの真下から水が吹き出してきた。

「うわぁぁぁぁぉぁぁ!」

 僕とトモは悲鳴を上げる。そして水に押されて、何処かに飛ばされてしまった。
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