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人型の災厄
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意外にも日々は穏やかに、しかしところどころでレジナルドの鳥肌を誘発しながら過ぎた。
母語を喋るが意志の疎通は不可能な相手と昼食を共にするのは疲れるが、この日課をやめようと言った時にジェイムズがどんな手に出るのか想像できず、恐ろしくて無下に断れない。ジェイムズにしても昼日中の公園で無体なことはできるはずもないだろうから、猛獣を手懐ける慎重さで昼の日課は続いていた。
ただ、レジナルドが注意深く選び抜いた差し障りのない話題を、その苦労を踏みにじり背筋に悪寒を走らせるほど甘い台詞でジェイムズが返してくるのには閉口した。しかしウィズリーで培った監督生体質は今も健在なようで、じきにハイハイと流せるようになってしまった自分に苦笑してしまう。
「男相手に薔薇の花束というのも間抜けな気がするが」
涼しいというには無理がある気候になったのに、レジナルドは薄い外套を羽織っているというのに、三つ揃いのスーツ姿でお手製のサンドウィッチを摘みながら涼しい顔でジェイムズが言う。
「監督生の花の顔にはとても似合うと思う。君に薔薇百本を捧げる栄誉を、私に授けてくれるか」
母語を喋るが意志の疎通は不可能な相手と昼食を共にするのは疲れるが、この日課をやめようと言った時にジェイムズがどんな手に出るのか想像できず、恐ろしくて無下に断れない。ジェイムズにしても昼日中の公園で無体なことはできるはずもないだろうから、猛獣を手懐ける慎重さで昼の日課は続いていた。
ただ、レジナルドが注意深く選び抜いた差し障りのない話題を、その苦労を踏みにじり背筋に悪寒を走らせるほど甘い台詞でジェイムズが返してくるのには閉口した。しかしウィズリーで培った監督生体質は今も健在なようで、じきにハイハイと流せるようになってしまった自分に苦笑してしまう。
「男相手に薔薇の花束というのも間抜けな気がするが」
涼しいというには無理がある気候になったのに、レジナルドは薄い外套を羽織っているというのに、三つ揃いのスーツ姿でお手製のサンドウィッチを摘みながら涼しい顔でジェイムズが言う。
「監督生の花の顔にはとても似合うと思う。君に薔薇百本を捧げる栄誉を、私に授けてくれるか」
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