最後の魔導師

蓮生

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第2章 旅立ち

別れの時⑩

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執務室を出ると、向かいの部屋もガチャリと開く。

向かいはリースの執務室。

ああ、いくつになっても素敵だなあ。
男の身でいつまで愛してもらえるか分からないけど、この人のために中性的な美貌は維持していきたい。

王妃が髭面の普通のオッサンとかになるわけにはいかないのだ。


「お疲れさま。」

「ありがとう、そちらもお疲れさま。」

リースは、植林や農作物の品種改良、治水事業に今は力を入れている。
火山の噴火で無惨になった山肌は、今ではきれいになった。


「そう言えば今日は3時にモモがお茶しにくるんだっけ。」

「そうだよ。今ではアンドリュー先生の奥さん。子竜が人間に化けられるようになったから見せたいんだって。」

先祖返りした先生も、人の社会でずっと暮らしていくかは分からない。
少なくとも、次の発情期にはモモは回復役として帰らないといけない。

けれど、魔力の高いドラゴンが人間の街に回復魔法の勉強に来る道筋は立てたし、もしかしたら帰らなくてもいいかもしれない。

将来は分からないけど、私たちがいる間は、モモはこちらにいる気がする。


「今日の昼餉は何かなあ。」

「成吉思汗にしましたよ。」


わあい。




前世では、いっぱい意地悪されて、レイプもされたし………。最後は黒岩さんに殺されたようなものだけど。

3人生まれ変わって、幸せになれて嬉しい。

ハーウェイ………。
リース。

前世のときから守ってくれてありがとう。

最初に悪い夢をみたあたりから、少しずつ思い出してた。
たぶん、先にハーウェイは思い出してたよね。

前世チートしてたもん。

だけど、レイプされた上に最後は殺されたなんて、私に思い出してほしくないって振る舞いだったから、今でも覚えていないふりをするんだ。


みんな大好き。

過去は振り返らない。

未来を生きていくんだから。
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