上 下
58 / 89

54修繕魔法による人体への応用

しおりを挟む
父ヘンリーは、とりあえずヘンリー子爵家の家敷の別棟にある騎士宿舎に、アルザスを連れて行った。ここには20人ほどの騎士が、常に常駐している。彼らの役目は屋敷の警備と町の警備、および有事の際の出撃であった。むろん騎士宿舎でなくて町に家族とともに家に住んだり、貸部屋に住んでいる騎士もいる。それらは本人の希望次第であった。
ミュラー家は辺境領に近く、そのため騎士も多めに雇っていた。ヘンリーはむろん此度の戦でも騎士たちは出撃し、その中には手や足を亡くした重症のものがいた。
ヘンリーはその重傷者をアドラスに見せることにした。まだ8歳なので1日にどれくらい治癒させれるかわからないが、むろん無理させるつもりはなかった。

「これは子爵さ…腕はどうなさったんですか!!?」
ミュラー家お抱えの医師と、医師の手伝いをしている従者は、右腕はこのようにあるぞとプラプラさせて見せた子爵に唖然となった。
「アドラスが修繕魔法で治してくれたのだ」

「えへへへへ」
照れたように笑う子爵の一人息子アドラス坊ちゃま。
だが修繕魔法で腕が生えるなんて初めて聞いた医師たちはわが耳を疑った。

「本当なんだ、」

「いやしかしその」

「論より証拠、アドラス出来るな」

「できます、でも1日に何人直せるかわかりません、人への応用は意外と魔力を食うようです。」

「そうか、ではあとどれくらいできそうだ?」

「うーん、よくわからないけどあと1人か2人でしょうか。」

「それでも今まで聖女しかできなかったことを考えればすごいことだ。重傷者のいる部屋に案内せよ」
「はい」

アドラスは騎士宿舎の病室にはいったのは初めてだった。
鉄さびのようなにおいがプーンとする、血の匂いだと瞬時にきずいた。
ベットが6つ、それぞれに騎士たちが包帯で患部をぐるぐる巻かれて横たわっていた。
「この中で手や足を無くしたものは3人でございます」
騎士達はあれって顔をしてヘンリーを見た。たしか領主様右腕の肘から下を敵兵に切り飛ばされたはずでは?

「皆さん、今から手や足を亡くした方を順番に僕が回ります。ただし僕はまだ8歳の子供なので1日に何人もいやせません、その場合は明日ということになりますので必要いじょうにがっかりしないでください。」

「アドラス様は聖魔法が使えるのですか?」
それには答えずアドラスは論より証拠と、南側の窓際に右ひざから下を失くした騎士のベッドに進み、近くの椅子に腰を下ろし精神統一をした。
「はー」と息を吐くと騎士の包帯を解いていく。
騎士は大丈夫かって顔をしているがアドラスはにっこり笑って見せ、心の中で修繕魔法発動と唱えると、父の時と同じキラキラした光が騎士の右足に集まり、金色に輝くと足が徐々に再生を始めたのだ、お抱え医師も騎士も周りの患者たちも、言葉を失くしてその様子を見つめた。やがて足が形作られ足が完全再生するとわぁっと、治療した騎士から喜びにあふれた歓声が起こった。
「足を動かしてみてください」
騎士は言われたとおりひざを曲げたり足の指を動かしたりした。

「大丈夫ですか?」

「はい!!うごきます!!ありがとうございますアドラス様」

アドラスは次に隣のベッドに寝ている右腕の手首上から切り飛ばされた騎士に、またも修繕魔法を発動しなおしたがここまでが限界だったらしい、意識がふっと失いかけ、慌てて父親のヘンリーは息子を背後から支え、お姫様抱っこした。

「どうやらここらが限界らしいな、明日は休ませた方がいいか、様子を見るとしよう」

「そうですね、その方がいいと思います」
お抱え医師はヘンリーの言葉に同意した。
ヘンリーは自分とアドラスを見るほかの病室のものたちに、
「ほかに手足を失くしたものは、またアドラスに見させるからその時を待ちなさい」

「はい、子爵様!!」
こうしてアドラスの初めての診療は終わったのである。
後で騎士達の間でアドラスのことが話題沸騰になったのは当然であった。




しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...