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しおりを挟むフリル・アラモードは現在XX才のアラフォーである。
いつまでも嫁に行かない私に、両親はもはや諦めムードであった。
だが、そんな私にもいよいよやって来た!
あの眩しく輝く『結婚』の二文字。
バーで知り合ったその人はまさかの男爵、私より年上だろうとも
これで私も男爵夫人として社交界にデビューだと浮かれていたら、
「私には子供がいるんだ」
と急にカミングアウトされ、驚きはしましたが相手はそれなりの年齢ですから
そんな事もあるだろうと自分を納得させて、それでもかまわないと婚約した
のに……
「若い子が好きなんだ」
糞みたいな理由で婚約破棄されました。
浮かれ上がっていた私に両親ですら声えをかけてはこず、私は荒れました。
夜な夜な酒場を渡り歩き、目覚めたらゴミ捨て場でした。
(私のような女にはここがお似合いよね)
そう不貞腐れていた私の元に何故か彼がやって来たのです。
「やっと見つけた! 探しましたよ、フリルさん。どうしてこんな所に。
ほら、早く立って。行きますよ」
男爵の息子のコルト君が私を抱き起してくれました。
「何よ! 何しに来たのよ! 私なんてどうなってもいいのよ! 」
八つ当たりと分かっていても私は言わずにはいれませんでした。
「私はね、貴方の父親に捨てられたのよ! だからここに居るの!
もう、放っておいて! 」
「嫌です、僕は貴女を放ってなんておけません! 」
コルト君ははっきりとそう言うと私の手を引いて歩き出した。
このよくわからない状況に私は彼の行く方へとふらふらと歩いていく。
*****
「僕、あの家を出たんです」
お風呂から上がった私に、コーヒーを渡して向かいの席に座った彼は言った。
「父さんがフリルさんを連れて来た時、僕は長くは続かないと思っていました。
大体いつもそうなんです、あの人の連れて来る女性は。
でもフリルさんは違った。貴女となら僕は家族になれると思ったんです。
だから父さんがフリルさんと婚約した時、僕は嬉しかった。
でも父さんはまた別の人をつれてきて、フリルさんとは婚約破棄したなんて
言うから……僕はもう限界だった。あの人とは家族ではいられませんでした」
そういうコルト君は少し寂しそうだ。
「でも、フリルさん。貴女となら家族になれます! 僕と結婚してください! 」
「えええええ!? 」
私はコーヒーを零しそうになる。
「フリルさんにとったら、僕なんてガキにしか見えないかもしれないけど……
きっと、いや、絶対幸せにしますから! 僕じゃあダメですか? 」
「ダメとかじゃないけど、ほら私、こんなおばさだよ? 」
「おばさんだなんて、そんな。フリルさんは綺麗です! 」
(やだ、綺麗とか言われちゃった、どうしよう?
ねぇ、これどうすればいいの? )
「やっぱり年上の人がいいですか? 」
「年上とかそういうのはどうでもいいだけど」
「そうなんですか! 父さんが連れ来る人はみんな年上好きだったので、
フリルさんもそうなのかと思っていたので安心しました。
もう一度言います、フリルさん僕と結婚して下さい! 」
(そういう事ね。だからガキとか言ってたのか、可愛いな)
「本当に、こんなおばさんでいいの? 」
私の問いにコルト君は真っすぐな視線で答える。
私も彼の誠意に答えなくてはいけない。
「よろしくお願いします」
(ヤバい、私、今、すごくキュンキュンしてる)
「やったー! 」
コルト君はそう言うと私を強く抱きしめ、そして熱いベーゼを交わす。
(私今、最高にしあわせでーーーーす!!!!!)
*****
あれから男爵は若い女に絞り取るだけ絞り取られ、行方不明になってしまったと
風の噂で聞いた。
そして私達はというと、私のお腹には新しい命がやどった。
「それじゃあ、行ってきます」
彼は私の大きくなったお腹を撫でると、いつもの様にベーゼをしてから仕事へ
「行ってらっしゃい」
彼を見送りながら私は今、幸せを実感している。
応援ありがとうございます!
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