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11 飲みに
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ショックを受けたまま黙々と配達をして、十分な報酬がゲットできた桜介は飲める場所を探した。
桜介は蓮と会いたくないのはもちろん和也とも会いたくない気分だった。
けれど1人で飲む時も、誰かと飲む時も大体は和也が店長を務めるTENTで飲んでいた桜介は他に飲める場所を知らなかった。
桜介はスマホを取り出し、近くの飲み屋を検索していく。
その中にいくつも出てくるのは、ゲイバーやオカマバーやミックスバーだ。
ーーそっか。この辺りってそうだった
今までは体の関係も、好きな人も蓮がいたから探す必要性も感じなかった桜介は、半ばヤケになってその中の一つを目指して歩き出した。
近づくに連れて道ゆく人もだんだんと変わってきた。
目的の店に着くと、桜介は怖気ずく前に勢いでドアを開けた。
「いらっしゃい」
少し低めの落ち着いた声が出迎えてくれる。
ーー女装……してないんだ
こういった場所に不慣れな桜介は、いささか失礼なことを考えながらこんにちはと返した。
カウンターの中でこちらを見る男性は、スタイリッシュに黒シャツを着こなしていて、桜介は少しだけ気後れをした。
「好きなとこ座ってください」
「はい、ありがとうございます」
一番奥に1人、静かに飲んでいる紳士な見た目のおじさん以外に人はいなかったため、桜介はおじさんとは反対側の端っこの席に腰掛けた。
「何にしますか」
「……あの、すみません。こういう店って不慣れで。何を頼むのが一般的なんですか?」
店員は一瞬驚いた顔をしてそれから面白そうに桜介をみた。
「なんでも。ビールとか日本酒とかそういうのでもなんでも好きなものを頼んでいいんですよ」
「じゃ、じゃあ。ビールで」
「かしこまりました」
にこりと微笑んでオーダーを聞いてくれた店員は、一度屈んでカウンターの下に消え、それから桜介に小皿を出してくれた。
「お通しのサーモンとアボカドのタルタルです」
「わあ美味しそう。ありがとうございます」
口に入れると、よく冷やしてあってタルタルも程よい味で玉ねぎのシャキシャキ感も美味しく、桜介は一瞬で好きになった。
それからすぐに出てきたビールを飲んだ桜介は、蓮の新しい彼女への嫉妬でドロドロした感情がほんの少しだけ解消されている感覚になった。
客も店員も騒がしい店に行って寂しさを紛らわそうとしていた桜介は、静かに過ごす楽しさを思いがけず知ることができて、むしろ今日はいい日だったのだと考え始めていた。
桜介の後から入ってくる客も皆、大体は一人客で、たまに二人客がきても静かな時が流れ続けるこの店を桜介は気に入った。
お酒にそこまで強くはない桜介は、ビールを3杯飲んだあたりでやめにして会計を済ませた。
店を出て歩く間もふわふわと心地よい酔いが回っていて、桜介は泥酔するまで飲まなかった自分に大人になったなと褒めながら口の端を上げた。
「ねぇねぇ、君俺と遊ぼうよ」
「ん?」
桜介が肩を叩かれ振り向くとそこには今時の若者というような服装の男性が立っていた。
「1人なんでしょ? とりあえず一緒に飲もうよ!」
「いや、もう飲んできた帰りだから。ごめんね」
桜介は、静かな自分の時を邪魔されて不快に思いながらやんわりと断った。
「お願いお願い! 君可愛いし、俺めっちゃタイプなんだよ!」
「そんなの知らないし、俺は君みたいなのタイプじゃない」
肩に腕を回しながら誘ってくる男にうんざりしながら桜介は駅前を目指して歩いた。
「いい加減離せよ。歩きづらいだろ」
「まぁまぁ。ねぇどこ行くの? 家? 俺も行っていい?」
「いいわけないだろ」
桜介が腕を振り解こうにも力の差的になかなかうまくいかず、桜介はかなり疲弊した。
桜介は蓮と会いたくないのはもちろん和也とも会いたくない気分だった。
けれど1人で飲む時も、誰かと飲む時も大体は和也が店長を務めるTENTで飲んでいた桜介は他に飲める場所を知らなかった。
桜介はスマホを取り出し、近くの飲み屋を検索していく。
その中にいくつも出てくるのは、ゲイバーやオカマバーやミックスバーだ。
ーーそっか。この辺りってそうだった
今までは体の関係も、好きな人も蓮がいたから探す必要性も感じなかった桜介は、半ばヤケになってその中の一つを目指して歩き出した。
近づくに連れて道ゆく人もだんだんと変わってきた。
目的の店に着くと、桜介は怖気ずく前に勢いでドアを開けた。
「いらっしゃい」
少し低めの落ち着いた声が出迎えてくれる。
ーー女装……してないんだ
こういった場所に不慣れな桜介は、いささか失礼なことを考えながらこんにちはと返した。
カウンターの中でこちらを見る男性は、スタイリッシュに黒シャツを着こなしていて、桜介は少しだけ気後れをした。
「好きなとこ座ってください」
「はい、ありがとうございます」
一番奥に1人、静かに飲んでいる紳士な見た目のおじさん以外に人はいなかったため、桜介はおじさんとは反対側の端っこの席に腰掛けた。
「何にしますか」
「……あの、すみません。こういう店って不慣れで。何を頼むのが一般的なんですか?」
店員は一瞬驚いた顔をしてそれから面白そうに桜介をみた。
「なんでも。ビールとか日本酒とかそういうのでもなんでも好きなものを頼んでいいんですよ」
「じゃ、じゃあ。ビールで」
「かしこまりました」
にこりと微笑んでオーダーを聞いてくれた店員は、一度屈んでカウンターの下に消え、それから桜介に小皿を出してくれた。
「お通しのサーモンとアボカドのタルタルです」
「わあ美味しそう。ありがとうございます」
口に入れると、よく冷やしてあってタルタルも程よい味で玉ねぎのシャキシャキ感も美味しく、桜介は一瞬で好きになった。
それからすぐに出てきたビールを飲んだ桜介は、蓮の新しい彼女への嫉妬でドロドロした感情がほんの少しだけ解消されている感覚になった。
客も店員も騒がしい店に行って寂しさを紛らわそうとしていた桜介は、静かに過ごす楽しさを思いがけず知ることができて、むしろ今日はいい日だったのだと考え始めていた。
桜介の後から入ってくる客も皆、大体は一人客で、たまに二人客がきても静かな時が流れ続けるこの店を桜介は気に入った。
お酒にそこまで強くはない桜介は、ビールを3杯飲んだあたりでやめにして会計を済ませた。
店を出て歩く間もふわふわと心地よい酔いが回っていて、桜介は泥酔するまで飲まなかった自分に大人になったなと褒めながら口の端を上げた。
「ねぇねぇ、君俺と遊ぼうよ」
「ん?」
桜介が肩を叩かれ振り向くとそこには今時の若者というような服装の男性が立っていた。
「1人なんでしょ? とりあえず一緒に飲もうよ!」
「いや、もう飲んできた帰りだから。ごめんね」
桜介は、静かな自分の時を邪魔されて不快に思いながらやんわりと断った。
「お願いお願い! 君可愛いし、俺めっちゃタイプなんだよ!」
「そんなの知らないし、俺は君みたいなのタイプじゃない」
肩に腕を回しながら誘ってくる男にうんざりしながら桜介は駅前を目指して歩いた。
「いい加減離せよ。歩きづらいだろ」
「まぁまぁ。ねぇどこ行くの? 家? 俺も行っていい?」
「いいわけないだろ」
桜介が腕を振り解こうにも力の差的になかなかうまくいかず、桜介はかなり疲弊した。
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