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俺と忠次が登校するために寮の玄関を開けると、琢磨と優生が立ってモジモジしていた。
俺はその光景にすごく既視感を感じて何だったかなと考えた。
そしてすぐに思い至った。
転入生と会計の2人が俺に謝罪と報告に来た時と同じなんだ。
そうか。ならこいつらもやっと。

「付き合うことになったか?」

俺がそう聞くと2人は顔を真っ赤にしてコクリとうなずいた。

「あのっ。俺、女しかダメだって思ってたんすけど、琢磨さんはなんかほっとけねぇって言うか。それに他の男と話してるのとか見たらイライラするって言うかそんなで、でも俺、それで好きだなんて気がついてなかったんっす。でも昨日榊さんとキスしそうになった琢磨さんを見てやっと気がついて」

優生がそう言った。

「まぁ、そうだろうな」
「そうだろうなって……。榊さんやっぱ気付いてたんすか!」
「ああ。ありゃ俺じゃなくても誰でも気がつくだろう。相当独占欲強かったしな……。琢磨、お前もちゃんと優生を好きなんだよな」
「うっ。うん……。今はちゃんと優生が好きだよ」
「そうか。おめでとう」
「ありがとう、リン」
「おめでとうございます、琢磨くん、優生くん」

横から忠次もお祝いを言った。

「ありがとう、副会長」
「今の副会長は琢磨くんでしょう?」
「そうだった! えっと、結城さん」
「はい」

忠次は名前を呼ばれて笑顔で返事をしていて少し面白くなく感じてその考えをすぐに振り払った。

ニコリと笑った琢磨はキラキラしていて、恋してますと全身が物語っていて眩しく感じた。

「俺、ずっと琢磨さんと居たいと思ってるっす。大好きだから!」
「優生……。僕も優生とずっと一緒に居たいと思ってるよ」

付き合い出したと言うことで以前にも増して目の前でいちゃいちゃと始めたのでその場で放置して俺は忠次と一緒に学校へ向かった。
学校への道を一緒に歩いていると忠次が少し機嫌が悪いような気がした。

「忠次、なんか怒ってる?」
「ええ」
「えっ! えっと。俺、なんかしちゃったのか?」
「……凛太郎が琢磨くんとキスしそうになったって言ってましたけど詳しく聞かせてもらえますか」

そう言って忠次は俺に詰め寄った。
忠次の怒ってる理由が分かって安心した。
時々こうやって嫉妬してくれるところが可愛くて好きでたまらない。
だが、忠次を不安にさせたいわけではないので俺は昨日のことを包み隠さずに話した。

「そうだったんですか」

忠次は話を聞き終わってから安心したように呟いた。

「おう、不安にさせてごめん。昨日言っとけばよかったな」
「いえ、そう言うことならもういいんです。私の方こそすみません」
「俺は忠次が俺のことで嫉妬するのとかすごく嬉しいと思ってる。それに今日はその理由をすぐに伝えてくれて嬉しい。できるだけそんな不安にさせないように気をつけるな」
「凛太郎、ありがとうございます……好きです」
「ん、俺も」

ふひひと笑い合って校舎前で別れそれぞれの教室に向かった。

俺はこのところニヤニヤが抑えられない。
忠次と一緒にいられて幸せだと言うのもあるが、この間嬉しい情報を聞いたからだ。
お袋は父さんから結婚を前提に交際を申し込まれたらしい。
この間テレビ電話で教えてくれた。
むしろ結婚式は来年のこの時期にしようなどと言う話まで進んでいるらしい。

お袋はよっぽど嬉しかったらしく、父さんがどのように交際を申し込んでくれたのかを何回も事細かく教えてくれて、俺と忠次をいたたまれない気持ちにさせた。
おまけに、半同棲を始めたので父さんもお袋と同じ部屋に居てテレビ電話の画面に映った顔が真っ赤なのが可愛そうで見てられなく、申し訳ないが毎回忠次と顔を見合わせて爆笑してしまう。

忠次の親父さんは俺に対していまだに認めないぞというスタンスを取ってはいるが、寮の忠次の部屋に送られてくる荷物の中にはしっかりと俺宛の物も入っている。
忠次から俺の情報が行っているのか、毎回俺の好物ばかりだ。
なので最近は忠次の親父さんのことはツンデレなのだろうと思うことにしている。

父さんとお袋は結婚式には忠次も忠次の両親も忠次のお兄さんも招待したいと言ってくれて俺はとても嬉しかった。
おまけに忠次も忠次の両親も忠次のお兄さんもそれを話したらちゃんとノリノリで来る気満々だったのも嬉しかった。

父さんの無理難題で入った高校だったけど、忠次に会えて琢磨や優生や会長にも会えて、思い返せばとても充実した日々を送れるようになった。

俺や忠次を心配してくれる人も応援してくれる人もいる。
俺は前まで気づこうともしなかった人の暖かさに気がつくことができた。

大切な人を守るだけの力がなくてただ泣くだけだった俺は居なくなって、一緒に戦ってくれる恋人ができた。


だから俺は忠次とこれからもずっと……一生共に歩んでいきたい。


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