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委員長の父

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「俺のことまだ好き?」
「う……ぁ、ぇっと」

暴力に訴えるのはあまり好きじゃない。
だが、人を一人さらっておいて、おまけに人を脅すような真似をしている癖に、1発殴られたぐらいでここまで怯えるのはどうなんだ。

委員長のズボンのシミがどんどん広がっていくのを見て少し笑いが漏れた。
それに気がついたのか委員長はみるみる顔を赤くした。

「こ、これは違くて。ぼ、僕は、ぁ」
「雑魚が。お前の親がもし本当に反社会組織だったとして、それをお前が人を脅す理由にするのはどうなんだ。あ?」
「い、言うぞ! このことを父さんに言いつけたら! 君だって! 君のご家族だってただじゃ済まなくなるんだぞ!!」

プルプルと震えながらそれでも俺を睨みつけてそう噛み付いてくるこいつはもはや何を言っても分かんねぇんだろう。

「そうか……言えよ。ほら、今すぐ電話しろ」
「い、今……」
「おう。言うんだろう? ほら早くパパに電話しろって」

そう言うと委員長は震える手でスマホを取り出して操作し始めた。
どこかへ電話をしようとするところを見ると、親が反社だというのは本当なのかもしれない。
だが、俺にはそんなことはどうでも良かった。

息子のアホな行動に付き合って堅気のガキを攫うのに協力したというならば、そんな雑魚な組織は潰れた方がいい。

「お……親父」

怯えたように電話を始めた委員長を静かに待った。

「うん……ああ、だけど! うん。分かった。こっちに人を寄越してよ。僕に逆らう奴がいるんだ……えっ、わ、分かった」

電話から耳を話して俺を見る委員長に“ん?”とジェスチャーする。

「あ、父さんが変われって」
「俺と?」

うなずく委員長からスマホを受け取って耳につけると中年の男の声が聞こえた。

「君が、息子に逆らう生徒か」
「はぁ。まぁそうっすね」
「そこにいるのが市原組の息子と知っての行動か?」
「市原組ってのは知らねぇが、例え実家がなんであれ、こいつに従う気はねぇよ。お前らが会長を拐うのに協力したのか? 今すぐ返せ」
「ふ……はは。そうか! 威勢がいいなぁ若造。お前のようなガキひとりで何ができる」
「さあな」
「実を言うとここにその西園寺くんがいるんだよ」
「お前らの家か?」
「ああ。だが君があんまり舐めた口を聞くならこの西園寺くんがどうなっても知らないな」
「はっ。それはこっちも同じだぞ。おっさん。てめぇの息子無事に帰して欲しいなら大人しくそいつを返すべきだな」
「ふ、ふふははは!!! では取り返しに来い。1人で来てもガキが太刀打ちできる人数ではないがな」

プツリと切断された電話を委員長に投げて返した。

「おい。委員長」
「な、何だ」
「案内しろ。お前の実家に」

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