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「これ……」
ベルガリュードが用意したらしい服は、ドレスなどではなく一般的な高位貴族男性が身に付けるような質の良い男物の服と寝巻きだった。ルーナストはなんだかそれが嬉しくて、とりあえず寝巻きの方に身を包みベットに横になった。
翌朝目が覚めたルーナストは、ベルガリュードが用意したもう一つの方の服に身を包んだ。
トントントン
「はい」
「私だ。入るぞ」
「ドラスティール様!? どうぞ!」
扉を開け入ってきたベルガリュードは、ルーナストをソファに座らせ、自分も向かいに座った。
「服をありがとうございました」
「ああ。気にするな……ところで、カツラはつけたままか?」
「え」
突然の言葉に思考が停止して、思わずベルガリュードを見つめると、ベルガリュードはフッと笑った。
「昨日のお前はカツラが取れてしまっていたから分かってしまった。正直私はブラクルト辺境伯令嬢がルートの功績を横取りしているんじゃないかと勘ぐっていたが、事態は私の想像の斜め上を行っているようだな」
今日正直に話す予定ではあったが、もうバレてしまっているようで、ルーナストは驚いた。
「今まで、騙していてすみませんでした」
「……そうだな。なぜそんなことをした?」
静かな声は、決して怒っているようには聞こえなかった。
「はい。言い訳にしかなりませんが、カンドルニアの王国軍は男性であれば誰でも入隊試験を受けることができますが、女性の私は受けられず、王国軍の訓練を受けてみたかった私のわがままで入隊試験を受けました。国を騙す行為であると、後から事の重大さに気がつき反省しております。この婚約の解消ももちろんですが、国を謀った罪を償う覚悟はできております」
「そうか」
「はい。ですが、このようなことを願える立場ではないことは理解していますが、これは私の独断で動いたことです。ブラクルト辺境伯家は見逃してもらえないでしょうか」
「そうだな……」
ベルガリュードはそう言って黙り込んでしまった。
ルーナストはその間、緊張する気持ちを押さえながら待った。
「私は正直、今回の婚約に乗り気ではなかった。だが、お前には昨日媚薬から救ってもらった恩もある。まぁ、私は幼い頃からある程度毒に慣らされているので、飲んでも問題はなかったのだが。それでもあの段階ではもっと他の薬の可能性もあったし、その場合私にも効果のある毒である可能性もあった。つまり、救われたと言っても過言ではないだろう」
(毒の耐性……。なんだ、閣下にそんなのがあったなら)
「過言でしょう。私はしなくても良いでしゃばりをしてしまったということですね」
なんだか自分の早とちりの行動が恥ずかしくなり、ルーナストは顔を伏せた。
「いや、私はルート……いや、ルーナスト嬢に救われた。なので、お前の、いや、貴女の」
「ルートで良いですし、ルートに対する話し方で大丈夫です」
話ずらそうなベルガリュードにそう言うと、ベルガリュードはホッとしたように体の力を抜いた。
「ああ……。つまり、私はお前の秘密を共有しよう」
「え?」
「共犯者になると言っている」
「そ、そんな。そこまでしていただかなくても」
「私がそうしたいからするだけだ。ルートのように軍に入り、国のために戦いたい女性もいるだろう。ドラスティール帝国軍は完全実力主義だ。女性の入隊も認めている。カンドルニア王国もいずれはそうなっていくだろう。だが、お前はそれを待つよりも帝国軍に入隊することを勧める」
「それはとても嬉しいです。ですがいくら女性の入隊を認めていると言っても帝国軍には帝国に籍があるものでないと入隊できませんよね」
「そうだな。だからお前は入隊できるだろう。私の妻になるのだから、ルートの国籍は帝国になる」
「妻……、だって」
「共犯者になると言っただろ。だからこのまま私と結婚してくれるか?」
「なんで……、だって閣下には何も利点はないのに」
「部下を救うことに、利点や不利点などない。私はお前を罪には問いたくないし、その莫大な魔力量は帝国軍にも利をもたらすだろう。理由なんてそれで十分だ」
ルーナストはベルガリュードのその寛大な措置に感謝した。何でも許していては威厳を失う事もある。けれどやはりベルガリュードには忠誠を誓いたくなるような威厳があった。
「あ……りがとう、ございます。よろしくお願いいたします」
「ああ」
(やっぱり、閣下は私をいつも救ってくれる)
けれど、ベルガリュードはルーナストをあくまで部下として大切にしてくれている。
恋愛対象として見られることはなさそうで、ズキリと胸が痛んだ。
(でも、こんなに救ってもらったんだから、もしも閣下が結婚を望む相手ができた時には全力で応援しよう)
ルーナストはそう硬く決意した。
ベルガリュードが用意したらしい服は、ドレスなどではなく一般的な高位貴族男性が身に付けるような質の良い男物の服と寝巻きだった。ルーナストはなんだかそれが嬉しくて、とりあえず寝巻きの方に身を包みベットに横になった。
翌朝目が覚めたルーナストは、ベルガリュードが用意したもう一つの方の服に身を包んだ。
トントントン
「はい」
「私だ。入るぞ」
「ドラスティール様!? どうぞ!」
扉を開け入ってきたベルガリュードは、ルーナストをソファに座らせ、自分も向かいに座った。
「服をありがとうございました」
「ああ。気にするな……ところで、カツラはつけたままか?」
「え」
突然の言葉に思考が停止して、思わずベルガリュードを見つめると、ベルガリュードはフッと笑った。
「昨日のお前はカツラが取れてしまっていたから分かってしまった。正直私はブラクルト辺境伯令嬢がルートの功績を横取りしているんじゃないかと勘ぐっていたが、事態は私の想像の斜め上を行っているようだな」
今日正直に話す予定ではあったが、もうバレてしまっているようで、ルーナストは驚いた。
「今まで、騙していてすみませんでした」
「……そうだな。なぜそんなことをした?」
静かな声は、決して怒っているようには聞こえなかった。
「はい。言い訳にしかなりませんが、カンドルニアの王国軍は男性であれば誰でも入隊試験を受けることができますが、女性の私は受けられず、王国軍の訓練を受けてみたかった私のわがままで入隊試験を受けました。国を騙す行為であると、後から事の重大さに気がつき反省しております。この婚約の解消ももちろんですが、国を謀った罪を償う覚悟はできております」
「そうか」
「はい。ですが、このようなことを願える立場ではないことは理解していますが、これは私の独断で動いたことです。ブラクルト辺境伯家は見逃してもらえないでしょうか」
「そうだな……」
ベルガリュードはそう言って黙り込んでしまった。
ルーナストはその間、緊張する気持ちを押さえながら待った。
「私は正直、今回の婚約に乗り気ではなかった。だが、お前には昨日媚薬から救ってもらった恩もある。まぁ、私は幼い頃からある程度毒に慣らされているので、飲んでも問題はなかったのだが。それでもあの段階ではもっと他の薬の可能性もあったし、その場合私にも効果のある毒である可能性もあった。つまり、救われたと言っても過言ではないだろう」
(毒の耐性……。なんだ、閣下にそんなのがあったなら)
「過言でしょう。私はしなくても良いでしゃばりをしてしまったということですね」
なんだか自分の早とちりの行動が恥ずかしくなり、ルーナストは顔を伏せた。
「いや、私はルート……いや、ルーナスト嬢に救われた。なので、お前の、いや、貴女の」
「ルートで良いですし、ルートに対する話し方で大丈夫です」
話ずらそうなベルガリュードにそう言うと、ベルガリュードはホッとしたように体の力を抜いた。
「ああ……。つまり、私はお前の秘密を共有しよう」
「え?」
「共犯者になると言っている」
「そ、そんな。そこまでしていただかなくても」
「私がそうしたいからするだけだ。ルートのように軍に入り、国のために戦いたい女性もいるだろう。ドラスティール帝国軍は完全実力主義だ。女性の入隊も認めている。カンドルニア王国もいずれはそうなっていくだろう。だが、お前はそれを待つよりも帝国軍に入隊することを勧める」
「それはとても嬉しいです。ですがいくら女性の入隊を認めていると言っても帝国軍には帝国に籍があるものでないと入隊できませんよね」
「そうだな。だからお前は入隊できるだろう。私の妻になるのだから、ルートの国籍は帝国になる」
「妻……、だって」
「共犯者になると言っただろ。だからこのまま私と結婚してくれるか?」
「なんで……、だって閣下には何も利点はないのに」
「部下を救うことに、利点や不利点などない。私はお前を罪には問いたくないし、その莫大な魔力量は帝国軍にも利をもたらすだろう。理由なんてそれで十分だ」
ルーナストはベルガリュードのその寛大な措置に感謝した。何でも許していては威厳を失う事もある。けれどやはりベルガリュードには忠誠を誓いたくなるような威厳があった。
「あ……りがとう、ございます。よろしくお願いいたします」
「ああ」
(やっぱり、閣下は私をいつも救ってくれる)
けれど、ベルガリュードはルーナストをあくまで部下として大切にしてくれている。
恋愛対象として見られることはなさそうで、ズキリと胸が痛んだ。
(でも、こんなに救ってもらったんだから、もしも閣下が結婚を望む相手ができた時には全力で応援しよう)
ルーナストはそう硬く決意した。
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