29 / 49
29 任務
しおりを挟む
「さて、私が軍の中でどの位置にいるか知っているだろうか」
「はい、元帥閣下は帝国軍のトップです」
「そうだな。本当なら帝国軍にも入隊試験はあるが、王国軍の入隊式では私直々にルートの戦いを見た。だから私は、私の権限でルートを帝国軍所属にし、私の隊に入れようと思う」
「閣下の隊、ですか。ですが、ポッと出の私が入って反感を買うことにはなりませんか」
「帝国軍は実力主義と言っただろう。それに、ルートが見知った仲のものもいる」
「見知った仲……?」
ベルガリュードはルーナストの疑問に、笑みを浮かべた。
「ロイ……出てこい」
「はっ」
ベルガリュードの声かけに、どこからともなく現れたのは、ロイだった。
けれどいつもと違い、ひげはしっかり剃られ、髪も綺麗に整えられていた。
「ロイ……?」
「ああ。俺の本当の名はロイアード・ジル・リオールという。今まで通りロイと呼んでくれていい」
「ロイは私の右腕として働いている。こう見えて公爵家の当主だ」
「ロイが……」
ロイの風貌や立ち振る舞いからまさか貴族だなどと疑いもしなかったルーナストは、目が飛び出そうなほど驚いた。その上、今は高位貴族然とした雰囲気を纏っている。
ルーナストは、トーナメントの時にロイが手を抜いていた理由が分かって納得した。
「ロイはでかくて目立つ見た目ではあるが、偵察が得意だ。この任務をルートにもやってもらおうと思っている」
(そんな大役ができるだろうか)
ルーナストは不安に思った。
(いや、出来るかどうかじゃなく、とにかくやろう)
覚悟を決めてうなずいて答えた。
「承知しました」
それからルーナストは、任務の内容を伝えられた。
カンドルニア王国の国家転覆を狙った組織が、王国軍の新兵に紛れ込んでいないか監視する任務だ。今まで通り男装したまま潜入し、何か怪しい動きがないか探る。
国家転覆を狙う組織については帝国軍が独自に入手した情報で、王国軍の誰が裏切るのかも分からない状態ということを知った。
そういう状況なので、帝国軍と合同で訓練をすることに対して、カンドルニア王国の王族すら帝国側の目的を知らない。
「そんな重要なことを私に教えてよかったのですか。もしかしたら私がその組織の一員かもしれないのに」
「それはないな。お前とショーンはトーナメント一位になっていたから、特に監視を強くしていた。だが、お前ときたらバカみたいに体を鍛えるばかりだし、ショーンもルートほどではないが、それに近かった。なぁロイ」
ベルガリュードの問いかけにロイはうなずいた。
「はい。俺はショーンを監視していることが多かったですが、ショーンはだいたいルートに誘われたトレーニングを断り、1人か、もしくは俺と2人でコソ練をするのが日課でした」
「コソ練……?」
「隠れてトレーニングをして、ある日突然ルートに勝つつもりだったみたいです」
「付き合い悪いと思ったらそういう事だったのかぁ」
ルーナストは納得してスッキリした。
そんなこんなでルーナストはその日の夜に婚約式を済ませ輿入れ2日目にして、カンドルニア王国に帰った。ロイに魔力がないというのは平民だと思わせるための嘘で実はそれなりの魔力量を持っていたらしく、ベルガリュード、ロイ、ルーナストの3人は、王国軍の訓練所へ瞬間移動した。
ショーンはルーナストが無事に帰ってきたことで本当に喜んでくれた。
ショーンの疑いも、ルーナストと同様晴れているらしいので、今回の出来事について全て説明し、ショーンも協力者になった。
「はい、元帥閣下は帝国軍のトップです」
「そうだな。本当なら帝国軍にも入隊試験はあるが、王国軍の入隊式では私直々にルートの戦いを見た。だから私は、私の権限でルートを帝国軍所属にし、私の隊に入れようと思う」
「閣下の隊、ですか。ですが、ポッと出の私が入って反感を買うことにはなりませんか」
「帝国軍は実力主義と言っただろう。それに、ルートが見知った仲のものもいる」
「見知った仲……?」
ベルガリュードはルーナストの疑問に、笑みを浮かべた。
「ロイ……出てこい」
「はっ」
ベルガリュードの声かけに、どこからともなく現れたのは、ロイだった。
けれどいつもと違い、ひげはしっかり剃られ、髪も綺麗に整えられていた。
「ロイ……?」
「ああ。俺の本当の名はロイアード・ジル・リオールという。今まで通りロイと呼んでくれていい」
「ロイは私の右腕として働いている。こう見えて公爵家の当主だ」
「ロイが……」
ロイの風貌や立ち振る舞いからまさか貴族だなどと疑いもしなかったルーナストは、目が飛び出そうなほど驚いた。その上、今は高位貴族然とした雰囲気を纏っている。
ルーナストは、トーナメントの時にロイが手を抜いていた理由が分かって納得した。
「ロイはでかくて目立つ見た目ではあるが、偵察が得意だ。この任務をルートにもやってもらおうと思っている」
(そんな大役ができるだろうか)
ルーナストは不安に思った。
(いや、出来るかどうかじゃなく、とにかくやろう)
覚悟を決めてうなずいて答えた。
「承知しました」
それからルーナストは、任務の内容を伝えられた。
カンドルニア王国の国家転覆を狙った組織が、王国軍の新兵に紛れ込んでいないか監視する任務だ。今まで通り男装したまま潜入し、何か怪しい動きがないか探る。
国家転覆を狙う組織については帝国軍が独自に入手した情報で、王国軍の誰が裏切るのかも分からない状態ということを知った。
そういう状況なので、帝国軍と合同で訓練をすることに対して、カンドルニア王国の王族すら帝国側の目的を知らない。
「そんな重要なことを私に教えてよかったのですか。もしかしたら私がその組織の一員かもしれないのに」
「それはないな。お前とショーンはトーナメント一位になっていたから、特に監視を強くしていた。だが、お前ときたらバカみたいに体を鍛えるばかりだし、ショーンもルートほどではないが、それに近かった。なぁロイ」
ベルガリュードの問いかけにロイはうなずいた。
「はい。俺はショーンを監視していることが多かったですが、ショーンはだいたいルートに誘われたトレーニングを断り、1人か、もしくは俺と2人でコソ練をするのが日課でした」
「コソ練……?」
「隠れてトレーニングをして、ある日突然ルートに勝つつもりだったみたいです」
「付き合い悪いと思ったらそういう事だったのかぁ」
ルーナストは納得してスッキリした。
そんなこんなでルーナストはその日の夜に婚約式を済ませ輿入れ2日目にして、カンドルニア王国に帰った。ロイに魔力がないというのは平民だと思わせるための嘘で実はそれなりの魔力量を持っていたらしく、ベルガリュード、ロイ、ルーナストの3人は、王国軍の訓練所へ瞬間移動した。
ショーンはルーナストが無事に帰ってきたことで本当に喜んでくれた。
ショーンの疑いも、ルーナストと同様晴れているらしいので、今回の出来事について全て説明し、ショーンも協力者になった。
0
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる