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22 縁談
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「父上、母上何があったのですか?」
応接室に降りると両親はソワソワした様子で待っていた。
「ああっ、ルーナスト!! お帰りなさい!」
「おかえりルーナスト!」
ルートではなくルーナストと呼ばれるのは久々で少しくすぐったい。
慌てた様子の両親だったが、嬉しそうな顔に見えたのでルーナストはすっかり安心した。
「ルーナスト、あなたに縁談が来たの」
「え!? 縁談ですか」
「そうよ! しかもあの、帝国の第二皇子殿下よ」
「え!!?」
(それって、閣下のことだ)
何が何だかわからずに呆然とするルーナストを余所に、両親は小躍りを始めそうだ。
それもそのはず、ルーナストもそうだが、両親もドラスティールの鬼神の大ファンなのだ。
「で、でも私は」
「皇帝陛下がルーナストを是非第二皇子にと!!」
「な……なぜ」
(正体はバレてはない……はずだし、面識もないのに)
「分からないけれど、きっとお茶会の時か何かに見初めてもらえたのね!」
「お茶会って……、1回しか参加したことないのですが」
「だが、皇帝陛下が是非息子にと申してくれているのだ!! きっと幸せになれるぞ!」
「で、ですが、カンドルニアの国王陛下と王妃陛下だって、私を是非にと仰ってくださっての婚約破棄でしたし」
「ルーナスト! あの大馬鹿者のモルガン第三王子ではなく、ドラスティールの鬼神のベルガリュード殿下だぞ! ルーナストを泣かせたりなんかしない」
「いや、どっちにしろ泣きはしませんが、そんなすぐに了承はできません」
ルーナストがそう告げると、2人は青い顔をした。
「な……、どうしましょう。もう了承の手紙を送ってしまったわ」
「な、なぜ!?」
「だって……、ルーナストはショーンと一緒にずっとドラスティールの鬼神に憧れていたから……ごめんなさい」
「そんな」
「もう、了承の手紙を送ってしまったからには後戻りはできない……。すまない、ルーナスト。お前の気持ちをちゃんと聞いておけばよかった」
さっきまでのハイテンションはどこへやら、しょんぼりしてしまった両親に、ルーナストは仕方ないと息を吐いた。
無鉄砲なところは両親の欠点でもあるが、2人のそういうところがルーナストは好きだと思うこともあるのだ。
「分かりました。日程は……?」
「それが1月後に輿入れだそうだ」
「え!? 輿入れってそんな早いものでしたっけ」
「何やら事情もあるらしくて」
「……分かりました。とにかく、1月後準備を整えて帝国へ向かいます」
「すまない……」
「ごめんなさい、ルーナスト」
「父上、母上、2人が私のことを考えてくださっての事ですよね。私も声を荒げてしまってすみません。第二皇子殿下は私の憧れの人です。きっと幸せになります」
「「ルーナストっ……う……う」」
2人を残し、ルーナストはまた瞬間移動で訓練所に戻った。
訓練所ではルーナストがいないことなど誰も気付いておらず、ショーンに実家での事のあらましを全て話した。
「け……結婚!?」
「しっ、声が大きいよ」
「で、でも、ぁ、あの閣下と!?」
「……うん」
「よかったね!? わぁ!! すごい!! すごいよ!! おめでとう!! ルート!!」
「あ……ありがとう」
興奮するショーンに引き気味にお礼を言ってから、ショーンの近くにいつもいるロイの姿がないことに気がついた。
「ショーン、ロイはどうしたの?」
「ああ、何だか用事があるって部屋にこもってるよ。呼んでも返事もしないし出てこないけど、大丈夫だからって言ってた」
「そうなんだ。何してるんだろう」
「まぁ、1人になりたい時もあるよね。ここに来てからずっと集団行動だし」
「それもそっか」
「それよりも、結婚についてもっと詳しくきかせてよ!」
「詳しくは私も分からないんだ。でも、ちょっと不安」
「え!? 不安? なんで?」
ルーナストは、不安に思っていることを全てショーンに話した。
ベルガリュードにブラクルトの女神が自分であることがバレたこと。訓練所にいること自体も、みんなを騙していることだと気がつき反省したこと。だから、全てをベルガリュードに話してここから出て行こうと思っていたこと。その矢先にこの結婚の話が上がったこと。ショーンは静かに聞いてくれた。
「みんなを騙して、閣下を騙して、それでノコノコ結婚しになんて行けないよ」
「……そっか」
それから1週間ほどで疲れた様子のベルガリュードが訓練所に帰ってきた。
目の下には隈ができ、ピリピリしている様子が伝わってくる。
ロイもそれに合わせてやっと部屋から出てきて、なぜかベルガリュードのように疲れ切っていた。
応接室に降りると両親はソワソワした様子で待っていた。
「ああっ、ルーナスト!! お帰りなさい!」
「おかえりルーナスト!」
ルートではなくルーナストと呼ばれるのは久々で少しくすぐったい。
慌てた様子の両親だったが、嬉しそうな顔に見えたのでルーナストはすっかり安心した。
「ルーナスト、あなたに縁談が来たの」
「え!? 縁談ですか」
「そうよ! しかもあの、帝国の第二皇子殿下よ」
「え!!?」
(それって、閣下のことだ)
何が何だかわからずに呆然とするルーナストを余所に、両親は小躍りを始めそうだ。
それもそのはず、ルーナストもそうだが、両親もドラスティールの鬼神の大ファンなのだ。
「で、でも私は」
「皇帝陛下がルーナストを是非第二皇子にと!!」
「な……なぜ」
(正体はバレてはない……はずだし、面識もないのに)
「分からないけれど、きっとお茶会の時か何かに見初めてもらえたのね!」
「お茶会って……、1回しか参加したことないのですが」
「だが、皇帝陛下が是非息子にと申してくれているのだ!! きっと幸せになれるぞ!」
「で、ですが、カンドルニアの国王陛下と王妃陛下だって、私を是非にと仰ってくださっての婚約破棄でしたし」
「ルーナスト! あの大馬鹿者のモルガン第三王子ではなく、ドラスティールの鬼神のベルガリュード殿下だぞ! ルーナストを泣かせたりなんかしない」
「いや、どっちにしろ泣きはしませんが、そんなすぐに了承はできません」
ルーナストがそう告げると、2人は青い顔をした。
「な……、どうしましょう。もう了承の手紙を送ってしまったわ」
「な、なぜ!?」
「だって……、ルーナストはショーンと一緒にずっとドラスティールの鬼神に憧れていたから……ごめんなさい」
「そんな」
「もう、了承の手紙を送ってしまったからには後戻りはできない……。すまない、ルーナスト。お前の気持ちをちゃんと聞いておけばよかった」
さっきまでのハイテンションはどこへやら、しょんぼりしてしまった両親に、ルーナストは仕方ないと息を吐いた。
無鉄砲なところは両親の欠点でもあるが、2人のそういうところがルーナストは好きだと思うこともあるのだ。
「分かりました。日程は……?」
「それが1月後に輿入れだそうだ」
「え!? 輿入れってそんな早いものでしたっけ」
「何やら事情もあるらしくて」
「……分かりました。とにかく、1月後準備を整えて帝国へ向かいます」
「すまない……」
「ごめんなさい、ルーナスト」
「父上、母上、2人が私のことを考えてくださっての事ですよね。私も声を荒げてしまってすみません。第二皇子殿下は私の憧れの人です。きっと幸せになります」
「「ルーナストっ……う……う」」
2人を残し、ルーナストはまた瞬間移動で訓練所に戻った。
訓練所ではルーナストがいないことなど誰も気付いておらず、ショーンに実家での事のあらましを全て話した。
「け……結婚!?」
「しっ、声が大きいよ」
「で、でも、ぁ、あの閣下と!?」
「……うん」
「よかったね!? わぁ!! すごい!! すごいよ!! おめでとう!! ルート!!」
「あ……ありがとう」
興奮するショーンに引き気味にお礼を言ってから、ショーンの近くにいつもいるロイの姿がないことに気がついた。
「ショーン、ロイはどうしたの?」
「ああ、何だか用事があるって部屋にこもってるよ。呼んでも返事もしないし出てこないけど、大丈夫だからって言ってた」
「そうなんだ。何してるんだろう」
「まぁ、1人になりたい時もあるよね。ここに来てからずっと集団行動だし」
「それもそっか」
「それよりも、結婚についてもっと詳しくきかせてよ!」
「詳しくは私も分からないんだ。でも、ちょっと不安」
「え!? 不安? なんで?」
ルーナストは、不安に思っていることを全てショーンに話した。
ベルガリュードにブラクルトの女神が自分であることがバレたこと。訓練所にいること自体も、みんなを騙していることだと気がつき反省したこと。だから、全てをベルガリュードに話してここから出て行こうと思っていたこと。その矢先にこの結婚の話が上がったこと。ショーンは静かに聞いてくれた。
「みんなを騙して、閣下を騙して、それでノコノコ結婚しになんて行けないよ」
「……そっか」
それから1週間ほどで疲れた様子のベルガリュードが訓練所に帰ってきた。
目の下には隈ができ、ピリピリしている様子が伝わってくる。
ロイもそれに合わせてやっと部屋から出てきて、なぜかベルガリュードのように疲れ切っていた。
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