チートな男装令嬢は婚約破棄されても気にしない

いちみやりょう

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16 魔力検査

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「何だったんだろうね」
「ルートがリンローズとか言う令嬢に惚れられたのが、負けたみたいで嫌なのかもね」
「惚れられてはないけど」
「ま、何にしても僕はあの人苦手だな」
「まぁ、私も苦手かな。突っかかって来なければ良いんだけどね」

昼食を終えて午後からの授業は座学だった。
自国のことに加えて、ドラスティール帝国のことも学んだ。
魔力防衛の基礎の授業の教官はベルガリュードだった。
別室に1人1人呼び出され魔力量の検査を行うと言い渡されルーナスト達は大人しく順番待ちをしていた。
先に魔力検査を終えたらしい訓練生は落ち込んだ様子で帰ってきた者や、晴れやかな表情の者、反応は人それぞれだった。ショーンは想定よりも魔力量が増えていたと喜んでいたし、ロイは少なかったと落ち込んでいた。
ついにルーナストの番が回ってきて、ルーナストは教室を出た。
廊下に出された案内の通りに進み空き教室に入ると、窓際にある大きな机の前にベルガリュードが1人座って待っていた。

「ここに手をかざしてくれ」
「……はい」

(どうせ、試験の時に魔力が多少あることはバレているし)

けれど、バレないに越したことはないと思いながら言われた通り、ベルガリュードの目の前まで進み机の上にある、魔法陣や文字がびっしりと書き込まれた40センチほどの紙の上に手をかざした。途端、魔力を込めてもいないのにボワッと紙から光が溢れる。

(え……)


「これは……すごいな」

ルーナストがどうすればいいのか戸惑っている間に、ベルガリュードは感心した様子でしげしげと光る紙を見つめている。

「あの……閣下」
「なぜ平民のお前がこれほどの魔力を持っているのだろう」
「なぜ……といわれましても」

ルーナストを見るその目は、ルーナストの何もかもを見透かされているようで居心地が悪い。

「お前は自分が魔力を持っていることも、魔力の使い方も知っているだろう?」

それは問いかけと言うよりも確信を持っているような響きだった。

(何かを、疑われている?)

「はい」
「ではなぜ隠す。隠せば何か裏があるかと疑われる。魔力測定をすれば簡単にバレることだ……。つまり」
「つまり?」
「君は平民じゃないのではないかと、私は疑っている」
「っ!!」

まっすぐルーナストを見る目は、嘘は通じないと言うことを物語っている。

「なぜ……、身分を偽る? 君は本当は誰なんだろう」
「そ、れは……」

(なぜって、それは女性の入隊が認められていないからだ。今ここで身分を明かしてしまえば私はここを追い出されてしまう)

ただ、女性で生まれたというだけで強くなるチャンスが1つ失われる。
せっかくお茶会で会ったスティールに背中を押してもらってここまで来たのに、とルーナストは憤りを覚えた。

「私は……確かに平民ではありません。けれど、国に対して害をなそうなどと思っているわけではありません。なぜ偽りの身分なのかはお答えできません。ただ私は、軍に入り国を守るために戦い、強くなりたい。それだけなんです」

ベルガリュードは無言だった。
ルーナストも無言でただまっすぐベルガリュードの目を見つめ返した。
しばらくして、ベルガリュードがフッと目を逸らし、ふうと息を吐いた。

(だめだ。きっと、追い出されてしまうだろう。悔しいな……。もっとうまくできたはずなのに、最初からこんなで)

楽観的に考える癖はあだとなったのだ。
ルーナストはうなだれた。
ベルガリュードは机を回ってルーナストの目の前に来た。

「……はぁ、そう落ち込んだ顔をするな」

そう言って、ルーナストの頭にふわりと手を乗せた。

「閣下……?」
「私も部下を疑うようなことはしたくない。魔力があることを隠したいなら私もそのように動こう。ただ、怪しい行動をすればすぐに除隊させる。いいな?」

それがここに居ても良いという意味だと数秒のちに気がついたルーナストは心が高揚した。

「っ! はい! ありがとうございます!!」
「では、遅くなってしまったが次の者を呼んでこい」
「はい! 失礼いたします!」

ルーナストは空き教室から出て元の教室に戻った。
心配そうな目を向けるショーンにグッと親指を立てるとショーンはホッとした顔をした。

(見逃してもらったからには、その恩に報いたい)

ベルガリュードの判断は、軍のトップとして正しいのか分からないが、ベルガリュードの判断が間違っていたのだと言われることのないように、ベルガリュードがその判断を後悔することのないように、しっかりと修行をして強くなることを決意した。
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