(完結)好きな人には好きな人がいる

いちみやりょう

文字の大きさ
58 / 61

道視点:景品の辞退について

しおりを挟む
「景品の辞退は、もうできないよ」
「え……なんでですか」

会長が言った言葉は理解できなかった。

「入寮者はもう決定していて、それに関する書類は提出されているからね」
「でも俺、ズルしてまでこの寮に入りたかったわけじゃない」

俺の言葉に、律葉も思うところがあったのか横から「そうだそうだ」と援護してくれた。
その律葉の行動に、会長は顔を引きつらせて、所在なさげに頬を掻いている。

「ズルって?」
「だって、俺より頑張ってボールを集めた人たちも、この寮が良かったかもしれないのに」

さっきも言ったことをもう一度繰り返すと、会長はしばらく考えるそぶりを見せてから「あはは」と声を上げて笑い出した。
先輩は横で困った顔をしているだけだし、律葉は会長の笑いに困惑している様子だ。

「つまり、道くんはこの寮が絶対にみんなが欲しがるような一等良い景品だと思っているわけだね?」
「実際そうでしょう」

胡乱に思いながらそう応えると、会長は首を竦めた。

「そんなことはないよ。もっと良い景品があったでしょう? 旅行券とか、遊園地の宿泊券付きのペアチケットだとか。まぁ、1位から3位を取った子達は、違うものを選んだけど。実際、第二希望まで含めて寮を選んだのは10位以内の1年生で律葉と道くんだけだったよ」
「うそ……」

あの景品の中だったら絶対に1DKの寮が一番人気だと思っていたのに、そんなことなかったということなのか。

「一番人気は遊園地のペアチケットだったよ。6位の子が貰った」
「そう、なんですね。あの、俺……勘違いして。すみません」
「ははは。良いんだよ。さ、じゃあ景品は受け取ってくれるね? あとは辰巳とゆっくり話し合うと良い。道くんが辰巳と隣の部屋を辞退するなんて言ったから放心して戻ってきてないしね」
「……はい」

横を見上げると、確かに先輩はショックそうな顔でただずんでいた。

「先輩、行こう?」
「……ああ」

まだ荷物を運んでいないので、今日は先輩の部屋に帰って食事を摂る。
だから、俺は先輩の手を引いて先輩の部屋まで帰った。

「先輩、ごめん。会長と一緒に何か手を回しただなんて思って……、グルなんて言っちゃって」
「いや……、俺の日頃の行いが悪いから、そんなこと気にするな」
「でも」
「正直、しつこくしすぎて嫌われたかと思った。だが、そうじゃないなら良い。引っ越しが楽しみだな?」
「……うん」

先輩はそう言って許してくれたけど、だからって俺が先輩を傷つけるような言葉を言ってしまったことがなくなったなんて思えるほど、人の心を知らないわけじゃない。

「あの、さ。お詫びって訳じゃないけど。その。俺にしてほしいことある?」
「だから、気にするなって。道は居てくれるだけで俺を癒してくれている」
「違う。俺がしたいの」

先輩はジッと俺を見つめた。
俺もそれに応えるようにジッと見つめ返すと、先輩が小さく息を吐いたのが分かった。

「分かった……じゃあ、普段しないようなセックスをしても良いか」
「え……」


想定外のお願いに即答できずにいる俺をよそに、先輩はもうその気になっているのか、目をぎらつかせていた。

「道が俺が望むことをしたいと、そう言ったんだ。良いんだよな?」
「え……、えっと。うん……もちろん」

困惑しながらも頷くと、先輩はそれはそれは嬉しそうに「そうか」と目を緩めた。

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

俺がモテない理由

秋元智也
BL
平凡な大学生活を送っていた桜井陸。 彼には仲のいい幼馴染の友人がいた。 友人の名は森田誠治という。 周りからもチヤホヤされるほどに顔も良く性格もいい。 困っている人がいると放かってはおけない世話焼きな 性格なのだった。 そんな二人が、いきなり異世界へと来た理由。 それは魔王を倒して欲しいという身勝手な王様の願い だった。 気づいたら異世界に落とされ、帰りかたもわからない という。 勇者となった友人、森田誠治と一緒に旅を続けやっと 終わりを迎えたのだった。 そして長い旅の末、魔王を倒した勇者一行。 途中で仲間になった聖女のレイネ。 戦士のモンド・リオールと共に、ゆっくりとした生活 を続けていたのだった。 そこへ、皇帝からの打診があった。 勇者と皇女の結婚の話だった。 どこに行ってもモテまくる友人に呆れるように陸は離 れようとしたのだったが……。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

両片思いの幼馴染

kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。 くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。 めちゃくちゃハッピーエンドです。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

処理中です...