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道視点:景品
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レクリエーションの結果は1年生の中で5位だった。10位までの1年生に、景品の第3希望までが記入できる紙が渡され、それ以降の順位はそこから余った景品などを配られるシステムだそうだ。ちなみに、律葉は4位だったらしい。
その場で希望用紙を提出して、何をもらえるのかは後日決定し、追って連絡が来るらしい。
「にしても、先輩いいなぁ」
「何がだ?」
先輩の部屋で、先輩が作ってくれた肉じゃがを頬張りながら羨んだ俺に、先輩は目を瞬いて首を傾げた。
「部屋もらえるって」
「ああ。道もこっちに住めばいい」
「それは無理だし。だって風紀委員長に、俺だけ特別扱いされてるって思われちゃうし」
先輩は、先日絵画コンクールで優勝した。そのことを讃えるために、学校側が2DKの寮を用意したらしい。レクリエーションで景品にされていた1DKの寮と同じ建物内だ。
俺からは先輩の絵の優勝が決まった日に、俺の下手くそな料理と手作りケーキでお祝いした。
「まぁ、道も同じ建物に住むかもしれないだろう? レクリエーションでは5位だったんだし」
「けど、レクリエーションの寮の景品で1年生の枠は2つしかないし難しそうだよ」
そんなことを言っていたのに、俺の部屋に届いた景品報告の手紙には「特別棟302号室当選」と書かれていた。
飛び上がって喜び、先輩と同じフロアだったらいいなぁと思いながらも、部屋の内見をすることになった。
放課後は、先輩は風紀の仕事で帰りが遅くなるため、俺は1人で景品報告の手紙に書いてあった通りの時間に間に合うように、特別棟に向かった。
「あれ? 律葉?」
「え、道?」
特別棟の前には律葉と会長が立っていた。
「よし、律葉くんも来たね。じゃあ、案内を始めようか」
「え、え? 龍一郎。僕、もう1人が道だなんて何も聞いてないんだけど!」
「サプライズにしようかなぁと思ってね」
会長に詰め寄る律葉に、会長は気にした様子もなく朗らかに笑って、それから俺たちを先導するように歩き始めた。
「実はね。1位の子は生徒会の好きなメンバーとデートできる券を希望して、広報の中井くんを指名したし、2位の子は最近流行っているらしい家庭用ゲーム機を希望して、3位の子は立ち入り禁止の図書室へ自由に出入りできる権利を求めてきてね。必然的に4位だった律葉の第二希望に書かれていた寮と、5位だった道くんの第一希望の寮がたまたま当たったということなんだよ」
「へ~。すごい」
偶然が重なって、律葉と近い部屋になるかもしれない。
律葉は生徒会の好きなメンバーとデートできる券で、会長が他の子とデートしないように頑張ったようだけど、結局デート相手に指名されたのは広報の中井という生徒らしいし、手放しに喜べる状況なんじゃないだろうか。
「ちなみに律葉は何号室?」
「303号室だって」
「えっ。俺、302号室だって書かれてたよ! 隣だ!」
「本当っ? 道と隣なの? やったぁ」
律葉も喜んでくれて、俺はもっと嬉しくなった。
今までの寮にはなかったエレベーターに乗ってチンという音と共に扉が開く。
「ここが道くんと律葉の部屋のある階だよ」
「お~」
そこはふかふかの赤い絨毯の廊下で、高級感を感じた。
エレベーターを降りてすぐの部屋は301号室で、302号室、303号室、304号室まであった。3階のこのフロアには全部で4つの部屋があるらしい。
好きに見てきて良いと言われて、自分に割り当てられた部屋に入ると、すぐに四畳半くらいのフローリング、左側の壁にキッチンが見えた。その奥にそのまま続くようにフローリングの部屋がもう1つあって、ユニットバスは玄関を入って右手にあった。
とりあえずキッチンやユニットバスを見てから、奥に見えている寝室に入ると、部屋の左右に扉が2つ。
「収納も結構あるんだ」
ポツリと呟いて、右側の開けてみれば、収納スペースとしては十分すぎるほどの空間がある。左側の扉を開けたときに俺は度肝を抜いた。
「な……は?」
そこはそのまま隣の部屋だったのだ。
俺に割り当てられた302号室よりも、かなり大きめの部屋だけど、なんの荷物も入っていない空き部屋だ。
「なんでこんなところに扉? にしても、誰か入るなら鍵閉めておきたいな」
開けていた扉を閉めて、鍵を探したけど鍵穴も、鍵のつまみも見つからず途方に暮れ、とりあえずこのおかしな作りの部屋を会長に相談しようと部屋の外に出た。
その場で希望用紙を提出して、何をもらえるのかは後日決定し、追って連絡が来るらしい。
「にしても、先輩いいなぁ」
「何がだ?」
先輩の部屋で、先輩が作ってくれた肉じゃがを頬張りながら羨んだ俺に、先輩は目を瞬いて首を傾げた。
「部屋もらえるって」
「ああ。道もこっちに住めばいい」
「それは無理だし。だって風紀委員長に、俺だけ特別扱いされてるって思われちゃうし」
先輩は、先日絵画コンクールで優勝した。そのことを讃えるために、学校側が2DKの寮を用意したらしい。レクリエーションで景品にされていた1DKの寮と同じ建物内だ。
俺からは先輩の絵の優勝が決まった日に、俺の下手くそな料理と手作りケーキでお祝いした。
「まぁ、道も同じ建物に住むかもしれないだろう? レクリエーションでは5位だったんだし」
「けど、レクリエーションの寮の景品で1年生の枠は2つしかないし難しそうだよ」
そんなことを言っていたのに、俺の部屋に届いた景品報告の手紙には「特別棟302号室当選」と書かれていた。
飛び上がって喜び、先輩と同じフロアだったらいいなぁと思いながらも、部屋の内見をすることになった。
放課後は、先輩は風紀の仕事で帰りが遅くなるため、俺は1人で景品報告の手紙に書いてあった通りの時間に間に合うように、特別棟に向かった。
「あれ? 律葉?」
「え、道?」
特別棟の前には律葉と会長が立っていた。
「よし、律葉くんも来たね。じゃあ、案内を始めようか」
「え、え? 龍一郎。僕、もう1人が道だなんて何も聞いてないんだけど!」
「サプライズにしようかなぁと思ってね」
会長に詰め寄る律葉に、会長は気にした様子もなく朗らかに笑って、それから俺たちを先導するように歩き始めた。
「実はね。1位の子は生徒会の好きなメンバーとデートできる券を希望して、広報の中井くんを指名したし、2位の子は最近流行っているらしい家庭用ゲーム機を希望して、3位の子は立ち入り禁止の図書室へ自由に出入りできる権利を求めてきてね。必然的に4位だった律葉の第二希望に書かれていた寮と、5位だった道くんの第一希望の寮がたまたま当たったということなんだよ」
「へ~。すごい」
偶然が重なって、律葉と近い部屋になるかもしれない。
律葉は生徒会の好きなメンバーとデートできる券で、会長が他の子とデートしないように頑張ったようだけど、結局デート相手に指名されたのは広報の中井という生徒らしいし、手放しに喜べる状況なんじゃないだろうか。
「ちなみに律葉は何号室?」
「303号室だって」
「えっ。俺、302号室だって書かれてたよ! 隣だ!」
「本当っ? 道と隣なの? やったぁ」
律葉も喜んでくれて、俺はもっと嬉しくなった。
今までの寮にはなかったエレベーターに乗ってチンという音と共に扉が開く。
「ここが道くんと律葉の部屋のある階だよ」
「お~」
そこはふかふかの赤い絨毯の廊下で、高級感を感じた。
エレベーターを降りてすぐの部屋は301号室で、302号室、303号室、304号室まであった。3階のこのフロアには全部で4つの部屋があるらしい。
好きに見てきて良いと言われて、自分に割り当てられた部屋に入ると、すぐに四畳半くらいのフローリング、左側の壁にキッチンが見えた。その奥にそのまま続くようにフローリングの部屋がもう1つあって、ユニットバスは玄関を入って右手にあった。
とりあえずキッチンやユニットバスを見てから、奥に見えている寝室に入ると、部屋の左右に扉が2つ。
「収納も結構あるんだ」
ポツリと呟いて、右側の開けてみれば、収納スペースとしては十分すぎるほどの空間がある。左側の扉を開けたときに俺は度肝を抜いた。
「な……は?」
そこはそのまま隣の部屋だったのだ。
俺に割り当てられた302号室よりも、かなり大きめの部屋だけど、なんの荷物も入っていない空き部屋だ。
「なんでこんなところに扉? にしても、誰か入るなら鍵閉めておきたいな」
開けていた扉を閉めて、鍵を探したけど鍵穴も、鍵のつまみも見つからず途方に暮れ、とりあえずこのおかしな作りの部屋を会長に相談しようと部屋の外に出た。
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