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律葉視点 律葉の恋15
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「まずは、ごめん。俺は、律葉くんを幸せにできる自信がなくて、一度逃げてしまった。だから、迷惑だなんて言ってしまったけど、本当は、大好きなんだよ」
「自信って……。僕、会長の側に居られるだけで、幸せなのに」
会長が僕を抱きしめる腕がぐっと強くなった。
「うん。嬉しい。俺も、律葉くんが側に居てくれるなら幸せだよ……だからね、どうして自信がなかったのか、聞いて欲しい」
肩越しにささやかれて、僕は返事の代わりに会長の頭にそっと自分の頭をくっつけた。
「俺ね。大した家柄じゃないんだけど、実家は一族で会社を経営しているんだ。当主は代々アルファで、俺は次男だけどアルファだったから時期当主だともてはやされて、一応は大切に育てられた」
「そうなんですね」
大切に育てられたのなら、それは良いことだ。
そう思って頷いた。
けれど、会長は小さく息を吐いて「違うんだ」と呟いた。
「律葉くんには本当に知られたくないんだけど、俺の実家はアルファ至上主義で。俺の父親や親戚はオメガを物みたいに扱うし、ベータを格下だと馬鹿にしている人たちだったから。俺も、父親に連れられてオメガを人身売買しているような店に出入りしたこともある」
会長は本当に言いたくないように、まるで殺人を犯した罪を告白するように静かにそう言った。
「会長……。でも、会長はその人たちにひどいことをしなかったでしょ?」
「確かに俺は直接彼らに手を出したりしていない。助けたいとは思う。だけど俺は、結果的にその人たちを今だに見てみぬふりしている。俺は、あの父親と同類かもしれないのが怖くてたまらないんだ」
「会長……。僕はそうは思いません。助けたいと思って、すぐに結果を出せなくたって、会長が会長のお父さんと同類なわけない。少なくとも僕は、会長がその人たちを助けたいって思ってくれてるのを知って嬉しい」
「律葉くん」
僕は、会長の腕の中でモゾモゾと動いて、会長と向かい合う形で座りなおした。
「だって、差別されている当事者だけの声じゃ、世の中を変えるのは難しいよ。オメガだけじゃ、声をあげるのだって怖いし、ひどい目にあったオメガは闘う気力どころか生きる気力なんて残ってない人もいる。だけど会長みたいに思ってくれるアルファが居れば、きっと世の中は変わると思うんです。だから僕、嬉しいです……。きっとそんな会長だから、僕は会長が好きなんです」
「……俺のこと、好きなままで居てくれるの?」
「むしろ、もっと好きになりました。どんどん会長のこと好きになって怖いぐらいです」
会長が悪いことをしたわけじゃないのに、思い悩んでいる心優しいこの人が好きだ。
会長はホッと胸を撫で下ろしたように息を吐いた。
「よかった……。俺も、律葉くんのことをどんどん好きになって、怖いくらいだよ」
会長が僕のことを好きだなんて、本当に夢みたいだ。
朝目覚めた時、自分の部屋にいて、今起こった幸せなことが全部夢だったらどうしよう。
「会長、今日は一緒のベットでくっついて寝ても良いですか?」
「ああ……。というより、布団を用意していないから律葉くんは最初から俺と一緒に寝る予定だよ」
「え」
「でも、安心して。今日は一緒に寝るだけだから」
今日はというところが意味深に感じて、僕は顔に熱が集まるのを感じた。
「ふふ。顔真っ赤っか。律葉くんは可愛いなぁ」
「会長……」
「龍一郎って呼んで。律葉」
初めて呼び捨てで呼ばれて、ドキっと心臓がはねた。
「り……、龍一郎、さん」
「さんはいらないよ、律葉」
「……龍一郎」
「ふふ。なーに?」
とびっきり甘い声に、優しい笑顔で、ドキドキと心臓が煩い。
「僕……、ただ一緒に寝るだけじゃ……やだ」
「っ!?」
目を見開いて僕を見る龍一郎は、その表情の通り、めちゃくちゃびっくりしているんだろう。
引かれたかな。でも、せっかく思いが通じ合った日に、同じ部屋にいて、ただ寝るだけなんて嫌だと思った。
「自信って……。僕、会長の側に居られるだけで、幸せなのに」
会長が僕を抱きしめる腕がぐっと強くなった。
「うん。嬉しい。俺も、律葉くんが側に居てくれるなら幸せだよ……だからね、どうして自信がなかったのか、聞いて欲しい」
肩越しにささやかれて、僕は返事の代わりに会長の頭にそっと自分の頭をくっつけた。
「俺ね。大した家柄じゃないんだけど、実家は一族で会社を経営しているんだ。当主は代々アルファで、俺は次男だけどアルファだったから時期当主だともてはやされて、一応は大切に育てられた」
「そうなんですね」
大切に育てられたのなら、それは良いことだ。
そう思って頷いた。
けれど、会長は小さく息を吐いて「違うんだ」と呟いた。
「律葉くんには本当に知られたくないんだけど、俺の実家はアルファ至上主義で。俺の父親や親戚はオメガを物みたいに扱うし、ベータを格下だと馬鹿にしている人たちだったから。俺も、父親に連れられてオメガを人身売買しているような店に出入りしたこともある」
会長は本当に言いたくないように、まるで殺人を犯した罪を告白するように静かにそう言った。
「会長……。でも、会長はその人たちにひどいことをしなかったでしょ?」
「確かに俺は直接彼らに手を出したりしていない。助けたいとは思う。だけど俺は、結果的にその人たちを今だに見てみぬふりしている。俺は、あの父親と同類かもしれないのが怖くてたまらないんだ」
「会長……。僕はそうは思いません。助けたいと思って、すぐに結果を出せなくたって、会長が会長のお父さんと同類なわけない。少なくとも僕は、会長がその人たちを助けたいって思ってくれてるのを知って嬉しい」
「律葉くん」
僕は、会長の腕の中でモゾモゾと動いて、会長と向かい合う形で座りなおした。
「だって、差別されている当事者だけの声じゃ、世の中を変えるのは難しいよ。オメガだけじゃ、声をあげるのだって怖いし、ひどい目にあったオメガは闘う気力どころか生きる気力なんて残ってない人もいる。だけど会長みたいに思ってくれるアルファが居れば、きっと世の中は変わると思うんです。だから僕、嬉しいです……。きっとそんな会長だから、僕は会長が好きなんです」
「……俺のこと、好きなままで居てくれるの?」
「むしろ、もっと好きになりました。どんどん会長のこと好きになって怖いぐらいです」
会長が悪いことをしたわけじゃないのに、思い悩んでいる心優しいこの人が好きだ。
会長はホッと胸を撫で下ろしたように息を吐いた。
「よかった……。俺も、律葉くんのことをどんどん好きになって、怖いくらいだよ」
会長が僕のことを好きだなんて、本当に夢みたいだ。
朝目覚めた時、自分の部屋にいて、今起こった幸せなことが全部夢だったらどうしよう。
「会長、今日は一緒のベットでくっついて寝ても良いですか?」
「ああ……。というより、布団を用意していないから律葉くんは最初から俺と一緒に寝る予定だよ」
「え」
「でも、安心して。今日は一緒に寝るだけだから」
今日はというところが意味深に感じて、僕は顔に熱が集まるのを感じた。
「ふふ。顔真っ赤っか。律葉くんは可愛いなぁ」
「会長……」
「龍一郎って呼んで。律葉」
初めて呼び捨てで呼ばれて、ドキっと心臓がはねた。
「り……、龍一郎、さん」
「さんはいらないよ、律葉」
「……龍一郎」
「ふふ。なーに?」
とびっきり甘い声に、優しい笑顔で、ドキドキと心臓が煩い。
「僕……、ただ一緒に寝るだけじゃ……やだ」
「っ!?」
目を見開いて僕を見る龍一郎は、その表情の通り、めちゃくちゃびっくりしているんだろう。
引かれたかな。でも、せっかく思いが通じ合った日に、同じ部屋にいて、ただ寝るだけなんて嫌だと思った。
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