(完結)好きな人には好きな人がいる

いちみやりょう

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律葉視点 律葉の恋9

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「君、夜中まで起きて書類整理してるって本当?」
「え?」
「本当、心象よくするためとは言っても、どこまでズルイんだか」

一緒に書類整理をしていない2人。鈴木くんと佐藤くんが難癖をつけてきた。

「確かに、夜眠れなくて書類整理しているけど、どうしてそんなことを知ってるの?」
「夜中トイレに起きた時に君だけいないから気がついたんだよ」

確かにその理由なら納得できた。

「そうなんだ。でも、それって生徒会の人は知らないし、僕が夜中にどんな暇つぶしをしてようが心象よくならないと思うけど」
「っ」

言葉に詰まった鈴木くんに、僕は続けた。

「それに、誰にも迷惑かけてないし。この書類だって、期間内に全部終わったら、きっと5人全員褒められるよ」
「褒められるとか、そんなのどうだって良いでしょ。僕たちの中から1人だけ選ばれて、書記になるために争ってんの。全員褒められたら意味ないって分からないの?」
「だって、他にどうアピールすれば良いか分からないし。とりあえず書記に選ばれるかは置いておいて、目の前の書類は片付けたくない?」
「はぁ? 分かった。そんなに片付けたいなら、どうぞ勝手に片付けてよ。僕は他の方法を取るから」
「え、他の方法って?」
「うるさい! 教えるわけないじゃん!」

そう怒鳴りつけた鈴木くんは、本当にそれ以後書類整理をしなくなった。
同調した佐藤くんも、一緒になってサボっている。
この2人のどちらかが万が一書記に選ばれてしまったら、仕事なんて何も進まなそうだと僕はため息をついた。

とりあえず人数分のコーヒーを入れて、彼らの前にも置くと、以外にも2人とも口をつけた。

「……にっがぁ、何これ? 新手の嫌がらせ!?」

鈴木くんは裏返った声でそう叫んだ。

「え? そんなに苦い? おかしいな。いつも通りのはずだけど。前に飲んでくれてた人は、普通に美味しいって飲んでたよ?」

現に会長は毎回美味しいと言ってくれていた。
けれど鈴木くんは目をひん剥いて苦い苦いと叫んでいる。

「そいつがおかしいんじゃないの!? ってかちゃっかり自分のだけミルク入れてるじゃん!」
「え、だって僕は苦いの飲めないし」
「はぁ!?」
「ごめん。ミルク入れるからそんなに怒んないでよ。ね? ほら、飲み終わったらこの書類お願いね」
「ちゃっかり頼むな!!!」

叫んだ鈴木くんは、けれどミルクを入れた後のコーヒーを飲み終わらないうちから、渋々というような顔で書類を整理し始めてくれた。

「佐藤くんはこっちを進めてくれる?」
「……分かった」

佐藤くんも渋々頷いて、それからは物凄いスピードで書類が片付いて行った。
鈴木くんも佐藤くんも生徒会に立候補するくらいだから、なんだかんだ根は真面目なんだろう。
僕は最初はやったことがある作業が多くて4人よりも出来ることが多かったけど、合宿が終わる頃にはそれも全員同じくらいになっていた。
この5人の中で誰が選ばれてもおかしくないと思った。
むしろ、会長のそばに居たいという理由で立候補した自分は、この5人の中で一番選ばれるべきではないのかもしれない。

会長は初日の夜中に会った後から、約束通り僕のことも平等に扱ってくれていたし、残りの4人ともなんだかんだ打ち解けることができたと思う。だから、この合宿期間は結構楽しかった。

「この量を終わらせたの? 5人で?」

金田先輩は綺麗に片付けられた書類を見て、感嘆の声を漏らした。

「はい」
「……すごいね。みんな優秀だ」

そう褒めてもらえて、みんな嬉しそうに頬を染めていた。
もちろん、なんだかんだ言っていた鈴木くんも佐藤くんも。

「では、君たちがそれぞれ自分以外の人の名前を書いて、この箱に入れてね。それで、この箱の中に入っている名前が一番多かった人が書記だよ」
「え……」

先ほどまで嬉しそうにしていた皆んな、戸惑った顔をした。
僕もそうだった。
皆んな自分がなりたくて今ここに居るのだから、他の人の名前なんて書きたくない。

「明日の朝までに入れてね。昼になったら開封して発表するから」

金田先輩はそう言い残し、部屋を出て行った。
もう書類仕事は1つも残っていないから、僕たちはただ、この中の誰かの名前を書いてあの箱に入れれば、もうすることはなくなる。

1人、また1人、書いて箱に入れて部屋を出て行った。
もちろん行き先は隣の布団が敷いてある部屋だろう。
しばらくして作業部屋には僕1人になった。

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