(完結)好きな人には好きな人がいる

いちみやりょう

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律葉視点 律葉の恋7

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生徒会書記への立候補者は、僕を含めて5名いた。
ここで書記に入っておけば、2年に上がった際に年生徒会に選抜されやすくもなるし、就職などにも便利なのだと言う。僕の様に会長の側に居たいからなんて不純な動機のやつは一人もいないだろう。
今日は立候補者たちが生徒会室に集められて顔合わせをする日だ。

「君たちが立候補者なんだね。知っているとは思うけど、一応自己紹介をすると生徒会の会長を努めさせていただいています。冬馬龍一郎です」

ニコリと笑って僕たちを見た。
まるで僕とも初対面みたいな反応だけど、僕はその程度で諦めるつもりはない。
僕も会長と同様ににっこり笑って“始めまして”と挨拶と自己紹介をした。

5人全員の自己紹介が終わると、会計だと名乗った可愛い系の見た目の金田先輩が話し出した。
目がくりっとしていて肌だってきめ細かい。声から言って、会長に告白をしていた生徒だった。

「君たちは立候補をした1年生の中から、素行や成績、他生徒や先生方の心象などを基準に選出された生徒たちだよ。ここに居る5人は僕から見てもとても素晴らしいと思う。けどね、この5人の中から1人だけを選ぶだけの決定だがないんだ」

「そんな」
「じゃあ、俺たちはどうすれば……?」

金田先輩の言葉に、他の4人はうろたえて口々にそう言った。

「うん。だからね、この5人で合宿をしてもらおうと思ってるんだよ。ちょうどしなきゃいけない事務仕事がとっても溜まっているし、君たちがやりたいって言ってる書記の仕事はそういう仕事が多いからさ」

金田先輩はにっこりと話を続けた。

「あ、ここまで来れた子だもん。そんな子は居ないと思うんだけどね。風紀が乱れる様な何かが起こらない様に注意してね」
「え……」

金田先輩はそう言った時、思いっきり僕を見た。この中で僕だけがそう言うことをすると思われていると言うことだろうか。それってもしかして僕が、オメガだから……?
不安に思っていると、金田先輩はサッと視線をそらしてパチンと手を叩いた。

「じゃ、もちろん監督者として僕たち生徒会も合宿に参加するけど、君たちとは別の部屋に居るから、喧嘩とかしないようにね~」

ピラピラと手を振る金田先輩の後ろで、会長は表向きにこやかに、その実、興味なさそうに仕事を続けていた。

数日後、合宿に参加する僕たちは、部屋の中にある書類の量に絶句した。

「これって、もしかして俺ら、体よく雑用やらされるだけなんじゃ……?」

ポツリと誰かがそう言った。

「で、でも。どうせここで頑張らなきゃ生徒会には入れないんだから。やるしかないよ」
「でも、これって、どうすれば? こんなんやったことないし」

生徒会のメンバーが誰も居ない部屋で、途方に暮れる彼らに僕は肩を落とした。
そりゃこんなの、何も知らない人間にやらせようとする仕事じゃないし、簡単に終わる量でもない。

「これは、手分けしてするしかないよ。君はこっちの書類を読んで種類ごとに分けていってくれる?」
「な、なんで僕が」

僕がお願いしたメガネの真面目そうな生徒、確かこの間の自己紹介では山根と名乗っていた彼が嫌そうにそう言った。

「お願い。山根くんの助けが必要なんだよ。だって、こんな量だもん、みんなでやらなきゃ」

そう言うと、山根くんはギュッと唇をひき結んだ。

「ぐっ、わ、分かった」
「え、本当! ありがとう」
「俺は? 何すれば良い?」

隣からチワワ系男子に人気がありそうなワイルド系の男子がそう言ってきた。確か名前は中井だと言っていたと思う。

「え? いいの? じゃあ、中井くんはこっちの書類の計算をしていってもらえる?」
「おっし。まかせろ」

中井くんはそう言って仕事に取りかかってくれた。

「つーか、何仕切ってんの?」
「だよねぇ、ちょっと可愛いからってさ」
「え……」

可愛いから仕切ると言うのは今このタイミングで全く関係ないことなんじゃないだろうか。と思ったけど、この2人が言っていることがそういうことではないということは分かっているので、僕はなんて返すのが正解なのか分からず言葉に詰まった。

「えっと、仕切ったつもりはないんだけど、ごめん。みんなで終わらせた方が早いと思って」

そう言うと、彼らはキッと僕を睨みつけた。

「そうやって言ってるけど、これってこの中から1人しか選ばれないってことなのにさ、みんなで終わらせてなんの意味があるの?」
「意味って。だって、例えばこの量の書類を1人で終わらせるなんて言っても無理だし、それなら各々できることを頑張って、みんなで終わらせた方が何もしないよりは意味あるんじゃないの?」
「良い子ちゃんぶって、どうせ君だけ選ばれるつもりなんでしょ。そうはいかないよ。僕たちは僕たちで書類を整理するから、こっちに構わないでね」

フンと効果音がしそうなほどに顔を背けられて、それ以降は何を言っても無視された。

「ほっておけ」

中井くんがそう言った。

「でも」
「正直、俺はこういった仕事は不慣れで何をすれば良いか分からないし、俺はもし選ばれた時のために教えてくれる方がありがたい。あいつらはあいつらでやると言っているんだから、それにかまっている暇はないだろう」
「まぁ、僕もそう思うかな。だから、あの人たちは放っておいて一緒に早く終わらせよう」
「う、うん」

山根くんと中井くんはこのまま僕と一緒に作業を進めてくれる様なので、1人にならずに済んで少しホッとした。
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