(完結)好きな人には好きな人がいる

いちみやりょう

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辰巳サイド 道の父と兄

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この1週間。辰巳は、自分の両親や道の両親に頭を下げ、だいぶかっこ悪い助け方だと思いながら、けれど、道をどうしても助けたくて奔走した。

国の上層部に合わせアルファ優位の考え方に沿って解決する方法は、道をはじめとするオメガを馬鹿にしているようで、出来れば取りたくなかった。そんな方法を取ってしまえば結局、道を苦しめた人間と同じ穴のムジナになると思ったからだ。けれど、1週間という短い期間で解決するためには取れる方法が限られた。

1週間という期限は、道の父親付きの運転手から入手した情報だ。
探偵に調べさせ、その男から様々な情報を入手できたことは、道を助けるのに大きく役立った。

「道……」

寮に戻り、無事だった道を見て我慢できなくなり事に及んだあと、眠ってしまった道をきれいにしてベットに寝かせてから、やっとホッと息をついた。

「ふふ……せんぱい……スカート履くの、好きだったんですかぁ」
「……なんだよそれ。どんな寝言だ」

ニヨニヨと笑いながら、寝言を言っている道は、警戒心のかけらもなく幸せそうで、辰巳も嬉しい。

ヒートの時の道の寝言でも少しだけ聞いたが、調べて分かった道の過去は、父親と兄のせいで本当に悲惨なものだった。

辰巳も、辰巳の両親も道を過去辛い目に合わせた父親と兄が許せなかった。

道の父親は今、警察に捕まっていると、道にはそれだけしか言っていなかったが、本当は少し違う。道の父親と兄は極秘裏に仁辰会病院に運ばれ、男として二度と使えなくされたのだ。
今回のことは道の父親だけの犯行だったが、調べるうちに道の兄も別口で道を狙っていることが分かり、その日のうちに2人ともに手術を施した。
息子や弟を襲うくらい性欲を抑えることの出来ない彼らだ。ただそこを取り払ってしまうだけではあまりにも不憫だと、辰巳の父親は、彼らの竿の部分を内側に埋め込み、まるで女性器の様に変えてやった。これで罪のない人の貞操を奪ってしまう心配がなくなり、彼ら自身も安心したことだろうと、辰巳の父親は電話越しに笑っていた。
女性器のようになったとは言っても、彼らは心は男性だ。性犯罪者の集められる男性刑務所に入れられることが決まっているそうだ。

父親にお礼を伝え電話を切ったあと、辰巳は道の横に入り込んだ。
少しうめいた道が、辰巳に擦り寄ってきて辰巳の胸にぴったりと頬をくっつけ、またスヤスヤと寝息を立て始めた。

「はぁ。可愛い……おやすみ。道」

道の額にそっと口付け、道の頭を抱き込んで眠りについた。
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