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目が覚めて2
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「みち……、道。寝てしまったのか?」
「ん……ぁ、せんぱい、おかえりなさい」
先輩の声で目を覚ますと、部屋の外はすっかりと暗くなっていた。
今のいままで眠っていて光に目が慣れていない俺のためか、先輩はベットヘットに取り付けてある小さなランプだけをつけてくれていた。
「弁当も食べていないし、昨日は相当疲れさせてしまったな。だが、少しくらい食べないと」
「うん」
そう言われてもお腹が空いていない。
今はあんまり食べたくないなぁと思っていると、先輩は俺をそっと起き上がらせてくれて背中にクッションを挟んでくれた。
そして先輩はそのままクーラーボックスの中から弁当箱を取り出して、電子レンジで温めてからベットの縁に座り、蓋を開ける。
ふわりといい匂いが漂った。
「あーん」
「……ぁ」
先輩がスプーンで掬って差し出したオムライスを、俺は素直に口を開けて受け入れた。
タコさんウィンナーやカニさんウィンナーが好きだと言ったからだろうか。オムライスの中にはウィンナーが入っていて美味しい。
お腹は空いていないと思っていたけど、口の中に1口入ると、どんどんお腹が空いてきた。
「うまいか?」
「うん。美味しい。先輩ありがとう」
「ああ」と目を細めて笑った先輩の方が、なんだか嬉しそうだと感じた。
「あ、義母さんに電話しないと……。メッセージの返信来てるかな」
「電話するなら部屋を出ておいた方が良いか?」
「えっ、まさかそんな。大丈夫です」
両手を顔の前で振ってからスマホを確認すると、義母さんからは俺が無事で安心したこと、けれど、しなければならないことがたくさん出来たため、今日は電話出来ないことがメッセージで来ていた。少し寂しく思いながらも、義母さんたちは2人ともパワフルで、取引先や営業先、仕入れ先など自分の足で現地まで向かって、自分の目で見て確認しないと気が済まないような社長なので了承のメッセージを送ってスマホを閉じた。彼女たちはこちらから電話してもたまに飛行機に乗っていたと言って繋がらないことがあるくらいだから、きっと今回もそんなところだろう。
「道?」
「あ、今日は電話出来ないみたいです。なんか忙しいみたいで」
「そうか。なら俺とイチャイチャできるな」
「そ……そうですね」
「道……愛してる。好きだ」
「ぅ、お、俺も。先輩が大好きです」
キスの雨をふらされて、その気持ち良さに抗えず自分の中心が兆し始める。抱いて欲しい。でも、こんな体力ない時にまた抱いてもらったら明日も休まなきゃいけなくなるかも。けれど、今までほとんど休んだことはないし、そもそも1週間もしないうちに退学するので、単位など気にする必要もない。ただ、面白くなり始めた勉強をやめなければならないことは辛いと思った。
「道。休んでいる間の勉強は俺が教える」
まるで俺の考えていたことが聞こえたかの様に先輩はそう言った。
「先輩……」
「もちろん、無理はさせたくないが、道の将来のためにも勉強しておいた方が良い」
「う、うん。ありがとう」
「道、何か悩みがあるならすぐに言ってくれ。頼りないかもしれないが、道が困っていたらどんな手を使っても助けるから」
「え? へへ。頼りなくなんかないよ。先輩はいつもかっこいいし、なんでも出来るから尊敬してる」
「……前から思ってたが、道の中の俺は一体どうなってるんだ。俺はそんなにかっこいい人間じゃない」
眉を寄せ困った様に笑う先輩が面白かった。
「先輩は世界で一番かっこいいよ」
「っ、道、お前。俺を甘やかしてばっかりだな」
「えぇっ!? 先輩が俺を甘やかしてばっかりだよ。もう1人じゃ生きていけなそうなくらい」
そう言うと先輩は一瞬目を見開いて、それから目を細めて蕩けるような顔で「そうか」と笑った。
「じゃあ、一生俺と居るしかないな?」
「え、っと。もしそうだったら嬉しい」
「そうしよう」
先輩が一生俺といるつもりなのが嬉しくて、けれどそれに頷けないのが辛かった。
そんな俺を先輩はそっと大切なもののように抱きしめて眠りについて、結局その日はしなかったけど、先輩のぬくもりだけで俺は幸せ一杯だった。
「ん……ぁ、せんぱい、おかえりなさい」
先輩の声で目を覚ますと、部屋の外はすっかりと暗くなっていた。
今のいままで眠っていて光に目が慣れていない俺のためか、先輩はベットヘットに取り付けてある小さなランプだけをつけてくれていた。
「弁当も食べていないし、昨日は相当疲れさせてしまったな。だが、少しくらい食べないと」
「うん」
そう言われてもお腹が空いていない。
今はあんまり食べたくないなぁと思っていると、先輩は俺をそっと起き上がらせてくれて背中にクッションを挟んでくれた。
そして先輩はそのままクーラーボックスの中から弁当箱を取り出して、電子レンジで温めてからベットの縁に座り、蓋を開ける。
ふわりといい匂いが漂った。
「あーん」
「……ぁ」
先輩がスプーンで掬って差し出したオムライスを、俺は素直に口を開けて受け入れた。
タコさんウィンナーやカニさんウィンナーが好きだと言ったからだろうか。オムライスの中にはウィンナーが入っていて美味しい。
お腹は空いていないと思っていたけど、口の中に1口入ると、どんどんお腹が空いてきた。
「うまいか?」
「うん。美味しい。先輩ありがとう」
「ああ」と目を細めて笑った先輩の方が、なんだか嬉しそうだと感じた。
「あ、義母さんに電話しないと……。メッセージの返信来てるかな」
「電話するなら部屋を出ておいた方が良いか?」
「えっ、まさかそんな。大丈夫です」
両手を顔の前で振ってからスマホを確認すると、義母さんからは俺が無事で安心したこと、けれど、しなければならないことがたくさん出来たため、今日は電話出来ないことがメッセージで来ていた。少し寂しく思いながらも、義母さんたちは2人ともパワフルで、取引先や営業先、仕入れ先など自分の足で現地まで向かって、自分の目で見て確認しないと気が済まないような社長なので了承のメッセージを送ってスマホを閉じた。彼女たちはこちらから電話してもたまに飛行機に乗っていたと言って繋がらないことがあるくらいだから、きっと今回もそんなところだろう。
「道?」
「あ、今日は電話出来ないみたいです。なんか忙しいみたいで」
「そうか。なら俺とイチャイチャできるな」
「そ……そうですね」
「道……愛してる。好きだ」
「ぅ、お、俺も。先輩が大好きです」
キスの雨をふらされて、その気持ち良さに抗えず自分の中心が兆し始める。抱いて欲しい。でも、こんな体力ない時にまた抱いてもらったら明日も休まなきゃいけなくなるかも。けれど、今までほとんど休んだことはないし、そもそも1週間もしないうちに退学するので、単位など気にする必要もない。ただ、面白くなり始めた勉強をやめなければならないことは辛いと思った。
「道。休んでいる間の勉強は俺が教える」
まるで俺の考えていたことが聞こえたかの様に先輩はそう言った。
「先輩……」
「もちろん、無理はさせたくないが、道の将来のためにも勉強しておいた方が良い」
「う、うん。ありがとう」
「道、何か悩みがあるならすぐに言ってくれ。頼りないかもしれないが、道が困っていたらどんな手を使っても助けるから」
「え? へへ。頼りなくなんかないよ。先輩はいつもかっこいいし、なんでも出来るから尊敬してる」
「……前から思ってたが、道の中の俺は一体どうなってるんだ。俺はそんなにかっこいい人間じゃない」
眉を寄せ困った様に笑う先輩が面白かった。
「先輩は世界で一番かっこいいよ」
「っ、道、お前。俺を甘やかしてばっかりだな」
「えぇっ!? 先輩が俺を甘やかしてばっかりだよ。もう1人じゃ生きていけなそうなくらい」
そう言うと先輩は一瞬目を見開いて、それから目を細めて蕩けるような顔で「そうか」と笑った。
「じゃあ、一生俺と居るしかないな?」
「え、っと。もしそうだったら嬉しい」
「そうしよう」
先輩が一生俺といるつもりなのが嬉しくて、けれどそれに頷けないのが辛かった。
そんな俺を先輩はそっと大切なもののように抱きしめて眠りについて、結局その日はしなかったけど、先輩のぬくもりだけで俺は幸せ一杯だった。
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