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台風
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「律葉、当選おめでとう。めちゃくちゃ頑張ってたもんね。すごいね」
「へへ、ありがとう。道」
律葉は嬉しそうに笑った。
今月行われた選考会に律葉は無事立候補することができ、そして見事当選を果たしたのだ。
勉強にしろ何にしろ律葉はとても頑張っていたので律葉の努力が実って俺もかなり嬉しい。
外は、律葉の当選をお祝いするかの様に快晴で……と言いたいところだったが、生憎と季節柄台風が近づいており、窓に打ち付ける大粒の雨がうるさいと感じるほどの大嵐だ。
「にしてもすごい雨だね。気が滅入っちゃうよ」
窓の外を憂鬱そうな、不安そうな表情で見つめる律葉に俺もうなずいた。
「本当。街に行くバスもこの雨で減便して、俺たちずっと寮ばっかだしね」
外はたまに雷で光るくらいだったのに、いつの間にかかなり近いところまで来たのかピカッと光った次の瞬間にはドーンと大きい音が鳴った。
いきなりだったので誰しもがビクリと肩を震わせたけど律葉の怯え方はそれ以上で、俺が窓から律葉に目を戻したときには固まったまま動けなくなっていた。
「律葉?」
「っ、ごめん……高校生にもなって恥ずかしいんだけど、雷が怖くてさ」
「怖いものに年齢なんて関係ないよ。俺だっていまだに幽霊怖いし」
律葉の絞り出した声はか細くて、不安げだ。
「あ、じゃあさ。今日は俺の部屋に泊まりに来る? 誰かと一緒にいたら怖さも半減するかもしれないし」
「え、いいの?」
「もちろん。何だったら、台風とか嵐の度に全然来てよ!」
「ありがとう」
安心したようにふにゃりと笑う律葉は、本当に可愛らしい。
俺もこんな顔で甘えることができたら、少しは先輩からも好いてもらえるのかもしれないけど、と思った。
けれどその日、老朽化が進んだ俺たちの寮は大雨の影響で1階部分が浸水し律葉を俺の部屋に泊めることができなくなった。
幸い、1年生が住むA棟は一番古いため浸水したが、2、3年生が住んでいるB棟以降は高台にある学校にも近く比較的新しいため、浸水を免れた。
校内放送で全校生徒が集められた体育館でその話を聞いて、俺も律葉も項垂れた。
1年生は寮の工事を行う期間、2、3年生の部屋に1人ずつ居候することになるらしい。
「ごめん、律葉……」
「道のせいじゃないじゃん。心配しなくても僕は大丈夫だよ。だって、しばらく2、3年生の部屋に居候させてもらうってことは1人じゃないってことだから」
「それもそうだけど。でも、律葉は学校一可愛いし、心配だよ……。あ、そうだ!」
「なに?」
「律葉は、辰巳先輩の部屋に泊めてもらえば良いんだ!」
「え、何言ってんの……? 正気?」
呆れた様な顔をする律葉に、俺は大真面目にうなずいた。
「先輩だったら律葉のこと襲わないし。あ、違うよ。今は別に先輩と律葉が付き合えば良いなんて1ミリも思ってないよ。先輩、俺のこと大切にしてくれてるし」
「だったら」
「だからこそだよ。先輩ほど安全だって分かってる2、3年生なんていないんだから」
そもそも、ここ最近の先輩は、ことあるごとに俺を抱きしめてくれるし、本当に甘やかされてるし大切にされていると感じている。いまだにお試しであることは置いておいて、「今は律葉だけしか見てないよ」と言ってくれるし。
けれどその時俺の後ろに影がさした。
「ダメに決まってるだろう?」
「っ、先輩っ」
耳元で囁かれ後ろから抱きしめられ、驚きでビクリ体が跳ねたのを、俺が逃げると勘違いしたのか、ギュッと腕の力を強くされた。
「律葉を俺の部屋に寄こして、それで自分はどの男の部屋に泊まるつもりなんだ?」
「ぁ……」
それは考えていなかったと、思考が停止した。
「……安心しろ。律葉が泊まる部屋はもう決まってる。律葉が安全かは知らないが、まぁ、そいつの部屋なら律葉本人も満更でもないだろうからな」
「え、そうなの?」
律葉は惚けた顔をして、それからその人物に思い至ったのかボンっと顔を赤くした。
その様子からしてきっと前に律葉が言っていた好きな人の部屋なんだろう。
「道は俺の部屋に決まっている」
「え、そ、そうなの……?」
「不満か?」
そう尋ねる先輩の方こそ不満そうだ。
「不満なわけない。嬉しいけど、先輩、俺を甘やかしすぎるから、先輩の部屋に住んじゃったらもっとダメ人間になっちゃいそうで」
「道は可愛いことばかり言うなぁ。まぁ、ダメ人間ならいくらでもなればいい。そんな可愛い道なら俺が責任持って世話してやるから」
先輩は何がそんなに楽しいんだかニコニコだった。
そんなこんなで俺は、しばらくの間先輩の部屋に居候することになった。
「へへ、ありがとう。道」
律葉は嬉しそうに笑った。
今月行われた選考会に律葉は無事立候補することができ、そして見事当選を果たしたのだ。
勉強にしろ何にしろ律葉はとても頑張っていたので律葉の努力が実って俺もかなり嬉しい。
外は、律葉の当選をお祝いするかの様に快晴で……と言いたいところだったが、生憎と季節柄台風が近づいており、窓に打ち付ける大粒の雨がうるさいと感じるほどの大嵐だ。
「にしてもすごい雨だね。気が滅入っちゃうよ」
窓の外を憂鬱そうな、不安そうな表情で見つめる律葉に俺もうなずいた。
「本当。街に行くバスもこの雨で減便して、俺たちずっと寮ばっかだしね」
外はたまに雷で光るくらいだったのに、いつの間にかかなり近いところまで来たのかピカッと光った次の瞬間にはドーンと大きい音が鳴った。
いきなりだったので誰しもがビクリと肩を震わせたけど律葉の怯え方はそれ以上で、俺が窓から律葉に目を戻したときには固まったまま動けなくなっていた。
「律葉?」
「っ、ごめん……高校生にもなって恥ずかしいんだけど、雷が怖くてさ」
「怖いものに年齢なんて関係ないよ。俺だっていまだに幽霊怖いし」
律葉の絞り出した声はか細くて、不安げだ。
「あ、じゃあさ。今日は俺の部屋に泊まりに来る? 誰かと一緒にいたら怖さも半減するかもしれないし」
「え、いいの?」
「もちろん。何だったら、台風とか嵐の度に全然来てよ!」
「ありがとう」
安心したようにふにゃりと笑う律葉は、本当に可愛らしい。
俺もこんな顔で甘えることができたら、少しは先輩からも好いてもらえるのかもしれないけど、と思った。
けれどその日、老朽化が進んだ俺たちの寮は大雨の影響で1階部分が浸水し律葉を俺の部屋に泊めることができなくなった。
幸い、1年生が住むA棟は一番古いため浸水したが、2、3年生が住んでいるB棟以降は高台にある学校にも近く比較的新しいため、浸水を免れた。
校内放送で全校生徒が集められた体育館でその話を聞いて、俺も律葉も項垂れた。
1年生は寮の工事を行う期間、2、3年生の部屋に1人ずつ居候することになるらしい。
「ごめん、律葉……」
「道のせいじゃないじゃん。心配しなくても僕は大丈夫だよ。だって、しばらく2、3年生の部屋に居候させてもらうってことは1人じゃないってことだから」
「それもそうだけど。でも、律葉は学校一可愛いし、心配だよ……。あ、そうだ!」
「なに?」
「律葉は、辰巳先輩の部屋に泊めてもらえば良いんだ!」
「え、何言ってんの……? 正気?」
呆れた様な顔をする律葉に、俺は大真面目にうなずいた。
「先輩だったら律葉のこと襲わないし。あ、違うよ。今は別に先輩と律葉が付き合えば良いなんて1ミリも思ってないよ。先輩、俺のこと大切にしてくれてるし」
「だったら」
「だからこそだよ。先輩ほど安全だって分かってる2、3年生なんていないんだから」
そもそも、ここ最近の先輩は、ことあるごとに俺を抱きしめてくれるし、本当に甘やかされてるし大切にされていると感じている。いまだにお試しであることは置いておいて、「今は律葉だけしか見てないよ」と言ってくれるし。
けれどその時俺の後ろに影がさした。
「ダメに決まってるだろう?」
「っ、先輩っ」
耳元で囁かれ後ろから抱きしめられ、驚きでビクリ体が跳ねたのを、俺が逃げると勘違いしたのか、ギュッと腕の力を強くされた。
「律葉を俺の部屋に寄こして、それで自分はどの男の部屋に泊まるつもりなんだ?」
「ぁ……」
それは考えていなかったと、思考が停止した。
「……安心しろ。律葉が泊まる部屋はもう決まってる。律葉が安全かは知らないが、まぁ、そいつの部屋なら律葉本人も満更でもないだろうからな」
「え、そうなの?」
律葉は惚けた顔をして、それからその人物に思い至ったのかボンっと顔を赤くした。
その様子からしてきっと前に律葉が言っていた好きな人の部屋なんだろう。
「道は俺の部屋に決まっている」
「え、そ、そうなの……?」
「不満か?」
そう尋ねる先輩の方こそ不満そうだ。
「不満なわけない。嬉しいけど、先輩、俺を甘やかしすぎるから、先輩の部屋に住んじゃったらもっとダメ人間になっちゃいそうで」
「道は可愛いことばかり言うなぁ。まぁ、ダメ人間ならいくらでもなればいい。そんな可愛い道なら俺が責任持って世話してやるから」
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そんなこんなで俺は、しばらくの間先輩の部屋に居候することになった。
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