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噂
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「お前らいつそんな仲良くなったんだよ?」
藤井と仲良く話していると、他のクラスメイトが話しかけて来た。
チャラそうな見た目の男子生徒で、藤井と仲が良さそうだ。
「昨日、放課後廊下歩いてたら市原とぶつかったんだよ。その縁で仲良くなったんだよ。なー?」
藤井がそう答え、俺もそれにうなずいた。
「へぇ。つか放課後ってお前最近何してるんだよ? 誘っても遊びにこねぇしさぁ」
「なんでも良いだろ。俺も忙しいんだよ」
「なんだよ、つれねぇなぁ。あ、そういえば聞いたか?」
彼は声を潜め、内緒話をするように藤井に顔を近づけた。
「何を?」
「お前の大好きなあの子の話だよ。あの子、風紀委員長と付き合い始めたんだってさ!」
「律葉が?」
藤井はぴくりと体を震わせて、低い声でそう言った。
なぜかかなり怒りを含んだ声だ。
けれど俺はそれどころじゃなかった。その情報は俺にかなりの衝撃を与えた。
風紀委員長って、辰巳先輩のことだ。
藤井の大好きなあの子……律葉……なの?
でも。ということは……。先輩、律葉とうまくいったんだ。
ドッドッドと心臓が大きな音を立てている。
大好きな先輩が、恋を成就させた。
それも俺の親友と。
好きな人の幸せは願わないといけない。だから、それは喜ばしいニュースだ。
だって、そうなれば良いって思って、実際そう行動した。
けれどズキズキと見えない何かが心臓を突き刺して、息も辛かった。
「……ふざけるな……」
「え……?」
横からは、低く怒りをあらわにした声が聞こえた。
「……藤井……?」
「あ? ……あぁ、なんでもない」
藤井は一瞬ギロリと俺を睨んだけれど、すぐに取り繕うように笑顔に戻った。
「どうした? 大丈夫? えっと、さっき律葉が大好きって」
先ほど藤井の友人が言っていた言葉を思い出し、尋ねた。
「あー……あはは。実は律葉にちょっと片思いしてただけだ。それだけだよ。もちろん俺は律葉の幸せを願うよ」
藤井は無理に笑っているようで、微かに震える声がかわいそうに思えた。
けれど、藤井はいつから律葉に片思いしていたんだろう。
俺はほとんどいつも律葉と行動していた。それなのに、藤井の存在すら知らなかった。
日の目を見ない恋をしているのは、俺も藤井も同じだった。
「藤井は良い奴なんだな。俺なんか、好きな人の幸せを願おうって思っても、実際は全然できないや……」
先輩と律葉が付き合っているという噂は、瞬く間に全校生徒に知れ渡っていた。
俺はなんだか2人と話すのが気まずくて、放課後自習室には行くのをやめた。
律葉は、好きな人がいるから先輩と2人きりになりたくないと言っていたけど、それも今じゃ関係ないし。
2人からの連絡が来るのが怖くて、スマホも電源をオフにして、義母さんたちには寮の入り口に設置された公衆電話から電話をするようになった。
その代わりに、藤井と過ごすことが多くなった。
律葉は、俺に話しかけたそうにしていたけど、藤井がいると話しかけてこなかった。
こんな風に気まずくなりたいわけじゃない。
だけど、自分でもどうしてこんなに避けてしまうのか分からない。
2人が付き合うことを、俺自身も望んでいた……。望んでいると思っていた。
けれど実際は、そんなことをかけらも望んでいなかったのかもしれない。
そうだとしたら俺は今までどの面下げて友達面をして、律葉と接して来たんだろう。
どうして自分はこうなんだ、と自分の何もかもが嫌になる。
けれど律葉は友達が多いから、俺1人周りから居なくなったところで、しばらくすれば慣れるだろう。
そうだ。今まで律葉のような可愛らしい人気者が俺と一緒に居たこと自体がおかしかったんだ。
律葉は俺みたいなクズやろうなんかと近くにいない方が良い。
律葉は最初は乗り気じゃないみたいだったけど、先輩はとても素敵な人だ。
きっと律葉もそれに気がついたんだ。素敵な先輩と付き合い始めたんだから、きっと律葉はこれから先も先輩をどんどん好きになって、幸せになれるはずだ。
先輩も、大好きな律葉と付き合えて、今はきっと幸せでだらしない顔をしているはずだ。
そんな姿を見たら、俺はみっともなく泣いてしまうかもしれない。
先輩の足にすがりついて、情けを求めてしまうかもしれない。
そう思ったら、2人を避けていることは、逆に得策だろうと思えて来た。
藤井と仲良く話していると、他のクラスメイトが話しかけて来た。
チャラそうな見た目の男子生徒で、藤井と仲が良さそうだ。
「昨日、放課後廊下歩いてたら市原とぶつかったんだよ。その縁で仲良くなったんだよ。なー?」
藤井がそう答え、俺もそれにうなずいた。
「へぇ。つか放課後ってお前最近何してるんだよ? 誘っても遊びにこねぇしさぁ」
「なんでも良いだろ。俺も忙しいんだよ」
「なんだよ、つれねぇなぁ。あ、そういえば聞いたか?」
彼は声を潜め、内緒話をするように藤井に顔を近づけた。
「何を?」
「お前の大好きなあの子の話だよ。あの子、風紀委員長と付き合い始めたんだってさ!」
「律葉が?」
藤井はぴくりと体を震わせて、低い声でそう言った。
なぜかかなり怒りを含んだ声だ。
けれど俺はそれどころじゃなかった。その情報は俺にかなりの衝撃を与えた。
風紀委員長って、辰巳先輩のことだ。
藤井の大好きなあの子……律葉……なの?
でも。ということは……。先輩、律葉とうまくいったんだ。
ドッドッドと心臓が大きな音を立てている。
大好きな先輩が、恋を成就させた。
それも俺の親友と。
好きな人の幸せは願わないといけない。だから、それは喜ばしいニュースだ。
だって、そうなれば良いって思って、実際そう行動した。
けれどズキズキと見えない何かが心臓を突き刺して、息も辛かった。
「……ふざけるな……」
「え……?」
横からは、低く怒りをあらわにした声が聞こえた。
「……藤井……?」
「あ? ……あぁ、なんでもない」
藤井は一瞬ギロリと俺を睨んだけれど、すぐに取り繕うように笑顔に戻った。
「どうした? 大丈夫? えっと、さっき律葉が大好きって」
先ほど藤井の友人が言っていた言葉を思い出し、尋ねた。
「あー……あはは。実は律葉にちょっと片思いしてただけだ。それだけだよ。もちろん俺は律葉の幸せを願うよ」
藤井は無理に笑っているようで、微かに震える声がかわいそうに思えた。
けれど、藤井はいつから律葉に片思いしていたんだろう。
俺はほとんどいつも律葉と行動していた。それなのに、藤井の存在すら知らなかった。
日の目を見ない恋をしているのは、俺も藤井も同じだった。
「藤井は良い奴なんだな。俺なんか、好きな人の幸せを願おうって思っても、実際は全然できないや……」
先輩と律葉が付き合っているという噂は、瞬く間に全校生徒に知れ渡っていた。
俺はなんだか2人と話すのが気まずくて、放課後自習室には行くのをやめた。
律葉は、好きな人がいるから先輩と2人きりになりたくないと言っていたけど、それも今じゃ関係ないし。
2人からの連絡が来るのが怖くて、スマホも電源をオフにして、義母さんたちには寮の入り口に設置された公衆電話から電話をするようになった。
その代わりに、藤井と過ごすことが多くなった。
律葉は、俺に話しかけたそうにしていたけど、藤井がいると話しかけてこなかった。
こんな風に気まずくなりたいわけじゃない。
だけど、自分でもどうしてこんなに避けてしまうのか分からない。
2人が付き合うことを、俺自身も望んでいた……。望んでいると思っていた。
けれど実際は、そんなことをかけらも望んでいなかったのかもしれない。
そうだとしたら俺は今までどの面下げて友達面をして、律葉と接して来たんだろう。
どうして自分はこうなんだ、と自分の何もかもが嫌になる。
けれど律葉は友達が多いから、俺1人周りから居なくなったところで、しばらくすれば慣れるだろう。
そうだ。今まで律葉のような可愛らしい人気者が俺と一緒に居たこと自体がおかしかったんだ。
律葉は俺みたいなクズやろうなんかと近くにいない方が良い。
律葉は最初は乗り気じゃないみたいだったけど、先輩はとても素敵な人だ。
きっと律葉もそれに気がついたんだ。素敵な先輩と付き合い始めたんだから、きっと律葉はこれから先も先輩をどんどん好きになって、幸せになれるはずだ。
先輩も、大好きな律葉と付き合えて、今はきっと幸せでだらしない顔をしているはずだ。
そんな姿を見たら、俺はみっともなく泣いてしまうかもしれない。
先輩の足にすがりついて、情けを求めてしまうかもしれない。
そう思ったら、2人を避けていることは、逆に得策だろうと思えて来た。
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