9 / 61
藤井
しおりを挟む
スマホからリズミカルな呼び出し音が聞こえ、すぐに義母が出てくれた。
「もしもし? 何かあった?」
『何にもないけど、ちゃんと元気かなぁと思って』
「あはは。元気だよ。ありがとう。義母さんは? 2人とも元気?」
『そりゃあもう、私たちはいっつも元気溌剌ってもんよ』
「ふふ。だよね」
スマホ越しに聞こえる声はいつも快活で、元気のない声なんて聞いたことがない。
けれど、しばらく近況を話し合って、それから義母さんは何か言いたそうに口籠った。
『……あの、さ。道。最近、ちゃんと眠れてる?』
「もちろん! ……もう大丈夫だよ、俺は。でも、心配してくれてありがとうね」
義母が心配する声に、俺は即答した。
本当の親ではないのに、俺のことをとても心配してくれる、良い人たちに俺は引き取ってもらえた。けれど、だからこそ心優しい彼女たちに無駄に心配はかけたくなかった。
『本当に、ちゃんと眠れているの? 最近は病院に来てくれてないって先生がおっしゃってたけど』
「大丈夫だよ。本当、心配症なんだから」
『ねぇ、道。辛いことがあったら、すぐに電話してきなさいね。私たちがそんなのすっとばしてあげるんだから。居場所がないって思わないでね。私たちは、いつだって道の帰りを待ってるんだよ』
「……うん。ありがとう義母さん」
その優しさにぐっと喉が鳴りそうになった。
義母さんの言葉はいつも俺を優しく包んでくれる。
義母さんから電話があった日は、不思議といつもより悪夢がマシになるし、いつもいつも助けられてばっかりだ。
義母さんは、名前ははるみさん。そして俺にはもう一人凛子さんと言う義母さんがいる。彼女たちはベータ同時で結婚していて一緒に俺を養育してくれている。
2人して心配性だから、心配させないようにするのも大変だった。
尚も心配する義母さんに、タジタジになりながら返事をして電話を切って息を吐いた。
話し込んでいる間に外は昨日と同じですっかり夕焼け色になっていた。
夕焼けに染まった校舎の中に1人なのはなんだか不気味で俺は急いで踵を返し寮へ向かった。
ドンッ
「わぁっ」
「わっ。あー。ごめん、大丈夫?」
角を曲がれば下駄箱というあたりで何かにぶつかり尻餅をついた俺を、どうやらぶつかった相手らしい男子生徒が心配そうに手を差し伸べてくれた。
「こちらこそごめん。ありがとう」
「いえいえ」
そう言った男子生徒の顔はなんとなく見覚えがあるような気がした。
「はぁ、でも人でよかったぁ。夕方の校舎に1人って、怖くない?」
俺がそう聞くと、そいつは「え?」と困惑した顔をした。
「ほんのちょっと怖かったから急いでたんだ。ぶつかったのが人間でよかった。って、人間だよね?」
「あっはは。人間だよ。つーか、同じクラスだし。失礼なやつだな」
そいつはおかしそうに笑った。
「そ、そうなの? ごめん。俺は市原道」
「あはは。だから知ってるってば。俺は藤井雄大だよ。ちゃんと覚えてね」
「もちろん。もう二度と忘れないよ。そうだ、寮まで一緒に帰らない?」
「怖いんだろ? しょうがないな」
藤井はそう言って頷いてくれた。
帰る道すがら会話は途切れることはなく、こんなに気の合う人がクラスにいたのかと、俺は嬉しくなった。
その日は無事に寮について、藤井とは部屋の前で別れた。
けれど次の日、寮から出たところでまた藤井に会った。
「よ。おはよう。一緒に行こうと思って待ってたんだ」
「まじ? 昨日言ってくれたら時間合わせたのに! なんか待たせてごめんね」
昨日の帰り道がとても楽しかったので、藤井の申し出が嬉しかった。
「今朝思い立ったからさ。ほら、行こうぜ」
「うん」
その日は1日そんな感じで藤井と一緒で、逆に律葉は他の人に囲まれて楽しそうにしていたので、話す機会がなかった。
「もしもし? 何かあった?」
『何にもないけど、ちゃんと元気かなぁと思って』
「あはは。元気だよ。ありがとう。義母さんは? 2人とも元気?」
『そりゃあもう、私たちはいっつも元気溌剌ってもんよ』
「ふふ。だよね」
スマホ越しに聞こえる声はいつも快活で、元気のない声なんて聞いたことがない。
けれど、しばらく近況を話し合って、それから義母さんは何か言いたそうに口籠った。
『……あの、さ。道。最近、ちゃんと眠れてる?』
「もちろん! ……もう大丈夫だよ、俺は。でも、心配してくれてありがとうね」
義母が心配する声に、俺は即答した。
本当の親ではないのに、俺のことをとても心配してくれる、良い人たちに俺は引き取ってもらえた。けれど、だからこそ心優しい彼女たちに無駄に心配はかけたくなかった。
『本当に、ちゃんと眠れているの? 最近は病院に来てくれてないって先生がおっしゃってたけど』
「大丈夫だよ。本当、心配症なんだから」
『ねぇ、道。辛いことがあったら、すぐに電話してきなさいね。私たちがそんなのすっとばしてあげるんだから。居場所がないって思わないでね。私たちは、いつだって道の帰りを待ってるんだよ』
「……うん。ありがとう義母さん」
その優しさにぐっと喉が鳴りそうになった。
義母さんの言葉はいつも俺を優しく包んでくれる。
義母さんから電話があった日は、不思議といつもより悪夢がマシになるし、いつもいつも助けられてばっかりだ。
義母さんは、名前ははるみさん。そして俺にはもう一人凛子さんと言う義母さんがいる。彼女たちはベータ同時で結婚していて一緒に俺を養育してくれている。
2人して心配性だから、心配させないようにするのも大変だった。
尚も心配する義母さんに、タジタジになりながら返事をして電話を切って息を吐いた。
話し込んでいる間に外は昨日と同じですっかり夕焼け色になっていた。
夕焼けに染まった校舎の中に1人なのはなんだか不気味で俺は急いで踵を返し寮へ向かった。
ドンッ
「わぁっ」
「わっ。あー。ごめん、大丈夫?」
角を曲がれば下駄箱というあたりで何かにぶつかり尻餅をついた俺を、どうやらぶつかった相手らしい男子生徒が心配そうに手を差し伸べてくれた。
「こちらこそごめん。ありがとう」
「いえいえ」
そう言った男子生徒の顔はなんとなく見覚えがあるような気がした。
「はぁ、でも人でよかったぁ。夕方の校舎に1人って、怖くない?」
俺がそう聞くと、そいつは「え?」と困惑した顔をした。
「ほんのちょっと怖かったから急いでたんだ。ぶつかったのが人間でよかった。って、人間だよね?」
「あっはは。人間だよ。つーか、同じクラスだし。失礼なやつだな」
そいつはおかしそうに笑った。
「そ、そうなの? ごめん。俺は市原道」
「あはは。だから知ってるってば。俺は藤井雄大だよ。ちゃんと覚えてね」
「もちろん。もう二度と忘れないよ。そうだ、寮まで一緒に帰らない?」
「怖いんだろ? しょうがないな」
藤井はそう言って頷いてくれた。
帰る道すがら会話は途切れることはなく、こんなに気の合う人がクラスにいたのかと、俺は嬉しくなった。
その日は無事に寮について、藤井とは部屋の前で別れた。
けれど次の日、寮から出たところでまた藤井に会った。
「よ。おはよう。一緒に行こうと思って待ってたんだ」
「まじ? 昨日言ってくれたら時間合わせたのに! なんか待たせてごめんね」
昨日の帰り道がとても楽しかったので、藤井の申し出が嬉しかった。
「今朝思い立ったからさ。ほら、行こうぜ」
「うん」
その日は1日そんな感じで藤井と一緒で、逆に律葉は他の人に囲まれて楽しそうにしていたので、話す機会がなかった。
99
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
家族にも見捨てられ、学校で孤独を感じていた静。
毎日が辛くて生きる意味を失いかけた彼の前に現れたのは、眩しい太陽のような青年天輝玲。
玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
しかしある日、玲の口から聞いたある言葉で、信頼から憎悪へと変わった。
それから十年。
玲と再会を果たした静は復讐を果たそうとする。
【BL】声にできない恋
のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ>
オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。
俺がモテない理由
秋元智也
BL
平凡な大学生活を送っていた桜井陸。
彼には仲のいい幼馴染の友人がいた。
友人の名は森田誠治という。
周りからもチヤホヤされるほどに顔も良く性格もいい。
困っている人がいると放かってはおけない世話焼きな
性格なのだった。
そんな二人が、いきなり異世界へと来た理由。
それは魔王を倒して欲しいという身勝手な王様の願い
だった。
気づいたら異世界に落とされ、帰りかたもわからない
という。
勇者となった友人、森田誠治と一緒に旅を続けやっと
終わりを迎えたのだった。
そして長い旅の末、魔王を倒した勇者一行。
途中で仲間になった聖女のレイネ。
戦士のモンド・リオールと共に、ゆっくりとした生活
を続けていたのだった。
そこへ、皇帝からの打診があった。
勇者と皇女の結婚の話だった。
どこに行ってもモテまくる友人に呆れるように陸は離
れようとしたのだったが……。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる