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特別編10
第7話『エール』
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10分ほど教室で談笑した後、俺、美優先輩、風花、花柳先輩、加藤、橋本さんは一緒に1年3組の教室を後にした。
昇降口のある1階までは階段で下り、1階に着いたときにこの後部活がある加藤と橋本さんとは別れた。その際、明日から水泳の関東大会がある風花に、
「風花、明日からの関東大会頑張ってね!」
「頑張れよ、姫宮」
とエールを送っていた。そのことに風花は嬉しそうな様子で「ありがとう!」とお礼を言っていた。
4人になり、俺達は校舎を後にしてあけぼの荘に向かって歩いていく。
今も雨がシトシトと降っており、蒸し暑い。お昼時なのもあり、登校してきたよりも蒸し暑くて。ただ、今日で1学期も終わったし、何よりも美優先輩と相合い傘をしているのでこの天候が特に嫌だとは思わない。
「由弦達が作ってくれる冷やし中華楽しみですっ!」
風花は持ち前の明るい笑顔でそう言った。
この後、うちで風花と花柳先輩と4人でお昼を食べる。メニューは風花のリクエストで冷やし中華だ。
水泳の関東大会は明日の午前中からレースがある。そのため、風花の所属する陽出学院高校の水泳部は今日の午後に山梨県に向かい、会場近くのホテルに宿泊するのだそうだ。午後2時に校門前に集合し、リムジンバスに乗って行くとのこと。
今日はお昼前に学校が終わるので、お昼は風花と花柳先輩と一緒にうちで食べて、集合時間になったら水泳部のみんなを見送ることになっている。事前に風花に何を食べたいのかリクエストを訊き、「冷やし中華がいい」とリクエストされた。材料は昨日のうちに揃えてある。
また、月曜日の夜に帰ってくるので、そのときの夕食も風花のリクエストした料理を作ることになっている。ちなみに、リクエストされた料理はハンバーグだ。
「帰ったら、由弦君と瑠衣ちゃんと作るからね」
「そうですね、美優先輩」
「後輩のためだもの」
「みなさんありがとうございますっ」
風花はニコニコ顔でそう言ってくれる。風花が元気良く関東大会の会場に行くためにも、先輩方と一緒に美味しい冷やし中華を作らないとな。
「そういえば、風花ちゃんみたいに、一旦家に帰って、また学校に行く水泳部の部員って多いの?」
「家が近いとそうしている部員が多いですね。通知表や夏休みの課題も配られましたし。ただ、家が遠めの部員は集合時間に間に合わないので、登校したときに遠征の荷物も持ってきて、家には帰らずに学校の食事でお昼食べて、集合時間までは校内でゆっくりしているそうです」
「そうなんだね」
下校時刻から集合時間までは2時間半。陽出学院高校は最寄り駅の伯分寺駅から徒歩7,8分なので、遠くから電車で通学する生徒もいる。中には、遠征用の荷物を取りに家に帰ったら間に合わない部員もいるか。
あと、下校してすぐには行かないんだな。お昼時だからお昼ご飯を食べたり、顧問の先生が下校後に会議など外せない仕事があったりするのだろうか。
陽出学院高校からあけぼの荘までは5分ほどなので、あけぼの荘に到着するまではあっという間だった。
俺と美優先輩は花柳先輩と一緒に101号室に帰宅する。また、風花は着替えたり、荷物を置いてきたりするために自宅である102号室に行った。
「じゃあ、さっそく作ろうか」
「そうね」
「作りましょう」
俺と美優先輩と花柳先輩は寝室にある勉強机に荷物を置き、キッチンに行ってさっそく冷やし中華作りに取りかかり始める。ちなみに、俺は麺担当で、美優先輩と花柳先輩は麺の上に乗せる具材担当だ。
「3人でキッチンに立っていると、料理部の特別活動って感じがしますね。七夕にそうめんパーティーの準備をしたときにも思いましたが」
「ふふっ。そうだね、由弦君」
「部活動と同じで、今は制服の上にエプロンをしているものね」
「部活って感じがするよね。風花ちゃんのために美味しい冷やし中華を作りましょう」
『おー!』
美優先輩の言葉に、俺と花柳先輩が元気良く返事をする。それが面白かったのか、美優先輩は「ふふっ」と楽しそうに笑った。
俺が料理部の特別活動のようだと言ったのもあり、1学期中の料理部での思い出話をしながら冷やし中華を作っていった。結構楽しい時間になった。
「はい、完成!」
俺が茹でた麺の上に、美優先輩と花柳先輩が用意した玉子、焼豚、キュウリ、もやし、カニカマを乗せ、酢醤油味のタレをかけて完成した。彩り豊かでとても美味しそうだ。
俺と美優先輩が配膳をして、花柳先輩が風花を呼びに行った。
配膳が終わった頃、風花と花柳先輩がやってきた。風花はハーフパンツに半袖のTシャツを着ている。
「風花。いらっしゃい」
「いらっしゃい、風花ちゃん。動きやすそうな服装だね」
「ええ。陸上トレーニングのときの練習着なんです。今日は移動だけなので、この服装で行こうと思います」
「そうなんだね。可愛いね、風花ちゃん」
「似合っているよ、風花」
「ありがとうございますっ。……わぁっ、美味しそうな冷やし中華です!」
配膳した食卓の前まで行き、風花は笑顔で冷やし中華を見ている。その目は輝いていて。美味しそうな冷やし中華を見て食欲をそそられたのか、風花のお腹が「ぐうっ」と鳴って。そのことで俺達4人は笑いに包まれた。
俺達4人は食卓の椅子に座る。ちなみに、俺と美優先輩、風花と花柳先輩がそれぞれ隣同士に座り、俺の正面に風花が座っている。
「じゃあ、食べようか。いただきまーす」
『いただきます!』
美優先輩の号令で、俺達はお昼ご飯を食べ始める。
麺と具材を酢醤油のタレとよく絡ませた後、冷やし中華を一口食べる。
「……うん、美味しい」
さっぱりとした酢醤油のタレと中華麺、焼豚や玉子などの具材とよく合っている。俺が担当した中華麺のちょうどいい感じに茹でられたな。麺も茹でた後に冷水で締めたし、具材もさっきまで冷蔵庫まで入れてあったから冷たくて。もちろん、タレも。だから、全てが冷たくてたまらない。
「美味しい」
「美味しくできたね。麺の茹で加減もいいよ」
「美味しいわ。風花ちゃん、どうかしら?」
「さっぱりしていて美味しいですよ! 麺もコシがありますし、玉子や焼豚とかの具材とも合っていますし」
風花はニッコリとした笑顔でそう言ってくれた。そのことにとても嬉しくなる。
「良かったよ、風花」
「風花ちゃんがそう言ってくれて嬉しいよ」
「そうね、美優。ちなみに、美優とあたしが具材担当で、桐生君が麺担当よ」
「そうだったんですね。具材は食べやすいですし、麺はコシがあって。さすがは料理部3人ですね!」
風花は持ち前の明るい笑顔でそう言ってくれて。美優先輩と花柳先輩と一緒に褒めてくれたのが嬉しくて、気付けば頬が緩んでいくのが分かった。先輩方も嬉しそうな笑顔になっていた。
1学期の学校生活のこととか、水泳のこととかを話しながら、冷やし中華を食べていった。風花はとても美味しそうに食べていて。モリモリ食べるので、見ていると気持ちがいい。
「ごちそうさまでした! 美味しかったです! ありがとうございました!」
風花が最初に食べ終わり、そうお礼を言ってくれた。冷やし中華を作って良かったなと思わせてくれる。これからも、大会の直前にはこうして風花がリクエストした食事を作りたいと思う。
お昼ご飯を食べ終わった後は、集合時間の近くになるまでは、風花の選んだ4人とも好きな日常系アニメを観ながら食休みをした。
午後1時45分。
集合時間も近くなってきたので、俺達4人は水泳部の集合場所である陽出学院高校の正門前に行くことに。天気予報の通り、朝から降り続いていた雨が止んでいた。
ちなみに、俺が風花の荷物が入ったキャリーケースを運び、美優先輩と花柳先輩がバックパックをかわりばんこで背負っている。こうして風花の荷物を運んでいると、先月の都大会で水泳部を見送りに行ったときのことを思い出す。あのときは日帰りだったのでエナメルバッグだったけど、今回は3泊4日なのでキャリーケースだ。ただ、キャスターが付いているので今回の方が運ぶのは楽かな。
「みなさんが荷物を運んでくれるので楽です。ありがとうございます」
「いえいえ。試合は明日だけど、少しでも楽でいてほしいからな」
「由弦君の言う通りだね」
「そうね、美優」
都大会のときと同じく、俺達が志願して風花の荷物を集合場所で運ぶことになったのだ。これで風花の役に少しでも立てたら嬉しい。
「ねえ、風花ちゃん。都大会では2日目に御両親が会場まで応援しに来てくれたけど、関東大会はどうなっているのかな?」
「今回は予定が合って、両親と中学生の妹が3日全て会場で応援しに来てくれることになっています。大学生の兄は大学の期末試験が近いので、試験勉強や課題をしながら、自宅からネット配信を見て応援してくれるそうです」
風花は嬉しそうに話す。今回は3日全て御両親と妹さんが応援してくれるのか。
あと、風花のお兄さんが通う大学はこれから期末試験なのか。そういえば、雫姉さんも去年、俺が中学の夏休みに入った直後の時期は勉強とか課題とかを真剣にやっていたな。7月の下旬頃に期末試験をやる大学が多いのかな。
ちなみに、俺達は動画サイトの生配信を見て水泳部を応援する予定だ。
「両親と妹は山梨の食事とか温泉も楽しむつもりらしいです。観光もちょっとすると。旅行のきっかけになれて良かったと思ってます」
「ふふっ、そうなんだ」
俺が小学生の頃に、家族旅行で山梨県へ行ったことがあるけど、観光名所があったり、美味しいグルメやスイーツを楽しめたりするからな。
「両親と妹と会えるのが楽しみですっ」
風花はニッコリとした笑顔でそう言った。きっと、御両親と妹さんに会えることも、風花が関東大会で頑張れる力になることだろう。
あけぼの荘を出発してから数分ほど。
陽出学院高校の正門とその近くに停車しているリムジンバスが見えた。正門近くにいる生徒達の姿も。都大会を応援しに行ったので、彼らが水泳部の生徒達であることはすぐに分かった。
「あっ、風花ちゃん!」
「桐生君達と一緒に来たんだね!」
などと、数人の女子生徒が笑顔でそう言い、こちらに手を振ってきた。そんな彼女達に風花は笑顔で「来たよー!」と元気に挨拶した。
風花は顧問の女性教師に出席を報告。
また、今は花柳先輩が背負っているバックバッグは風花に渡して、俺が運んできたキャリーケースはリムジンバスのトランクに入れた。
「桐生君達いたわ」
「予想通りいたね、一佳ちゃん」
荷物入れにキャリーケースに入れた直後、霧嶋先生と大宮先生のそんな声が聞こえた。声がした方に顔を向くと、正門の近くに霧嶋先生と大宮先生がいた。俺達4人は先生達に「こんにちは」と挨拶する。
「都大会のとき、桐生君と白鳥さんが水泳部の子達を見送った話を聞いていたから。桐生君達がいるんじゃないかと思っていたの」
「なるほどです。今回も風花ちゃん達水泳部を見送りに来ました」
「風花の荷物を運びたかったのもあります」
「今回はお昼だったのであたしも。成実先生と一佳先生はどうしてここに?」
「水泳部が2時頃に学校を出発するって聞いていたからね」
「休憩も兼ねて、成実さんと一緒に見送りに来たの」
「そうだったんですか。一佳先生、成実先生、ありがとうございます!」
風花は嬉しそうな様子で霧嶋先生と大宮先生にお礼を言う。
都大会のときは俺と美優先輩が見送った話をしていたから、関東大会のときには見送ろうと決めていたのかもしれない。
「頑張ってね、姫宮さん。明日と明後日は桐生君達と一緒に、月曜日は学校の職員室から配信を見て応援するわ」
「頑張ってね、風花ちゃん。東京から応援してるよ」
「ありがとうございますっ! インターハイ出場を目指して頑張りますっ! 都大会の後も調子がいいですし、出場する3種目全てでインターハイ出場を決めたいです!」
風花はとても明るい笑顔で俺達のことを見ながらそう言った。都大会の後も調子がいいのか。それなら、有言実行で、出場する種目全てでインターハイ出場を決められるかもしれないな。
それからも、荷物を持った水泳部の部員が続々とやってくる。
今日で1学期が終わったからだろうか。それとも、明日の関東大会でレースができるからだろうか。明るかったり、意気込んだりしている部員が多い。いい雰囲気だな。
やがて、水泳部の部員が全員集まった。
都大会では会場で応援したのもあり、顧問の女性教師や部長から俺、美優先輩、花柳先輩、霧嶋先生、大宮先生に一言ずつ激励の言葉をお願いされた。
「2年の白鳥です。明日からの関東大会を頑張ってください。配信を見る形ですが、東京から応援しますね」
「2年の花柳です。あたしも配信で応援します。頑張ってください!」
「霧嶋です。都大会を勝ち抜いたみなさんなら、自分の持てる力を発揮して、関東大会でもきっといい結果に出せると思っています。頑張ってください」
「大宮です。インターハイを目指して頑張ってください。東京から応援しますね」
「1年の桐生です。関東大会は山梨での開催ですので、東京から配信を見る形で応援します。出場するみなさんがいい結果を出して、インターハイ出場を決められることを祈っています。頑張ってください」
俺達5人がエールを送ると、水泳部のみなさんは「ありがとうございます!」と元気良くお礼を言ってくれた。風花は特に大きな声で言ってくれた。頑張ってほしい。
「いってきます!」
風花は笑顔で俺達に手を振ってリムジンバスの中に入る。
その後も、水泳部のみなさんと顧問の女性教師はリムジンバスに乗り、程なくしてリムジンバスが出発し始める。
風花を含めバスに乗っている水泳部のみんなは俺達に向かって手を振ってくれる。そんな彼らに俺達5人は大きく手を振り、リムジンバスが見えなくなるまで降り続ける。みんな、頑張ってください。
「桐生君、白鳥さん、花柳さん、また明日」
「一佳ちゃんと一緒に瑠衣ちゃんのお宅に伺うわ」
そう言い、俺達に手を振って、霧嶋先生と大宮先生は校舎へと歩いていった。
関東大会の応援は花柳先輩の家でする予定だ。5人で大きな声で応援するだろうから、アパートやマンションだとご近所さんに迷惑がかかる可能性があると考え、一軒家である花柳先輩の家で配信を見て応援することになったのだ。花柳先輩の母親の亜衣さんと、父親の良樹さんからは、大きな声で応援してOKだと許可をいただいている。
それから、俺達3人はあけぼの荘に帰り、夕方頃まで3人とも好きなアニメを観るのであった。
昇降口のある1階までは階段で下り、1階に着いたときにこの後部活がある加藤と橋本さんとは別れた。その際、明日から水泳の関東大会がある風花に、
「風花、明日からの関東大会頑張ってね!」
「頑張れよ、姫宮」
とエールを送っていた。そのことに風花は嬉しそうな様子で「ありがとう!」とお礼を言っていた。
4人になり、俺達は校舎を後にしてあけぼの荘に向かって歩いていく。
今も雨がシトシトと降っており、蒸し暑い。お昼時なのもあり、登校してきたよりも蒸し暑くて。ただ、今日で1学期も終わったし、何よりも美優先輩と相合い傘をしているのでこの天候が特に嫌だとは思わない。
「由弦達が作ってくれる冷やし中華楽しみですっ!」
風花は持ち前の明るい笑顔でそう言った。
この後、うちで風花と花柳先輩と4人でお昼を食べる。メニューは風花のリクエストで冷やし中華だ。
水泳の関東大会は明日の午前中からレースがある。そのため、風花の所属する陽出学院高校の水泳部は今日の午後に山梨県に向かい、会場近くのホテルに宿泊するのだそうだ。午後2時に校門前に集合し、リムジンバスに乗って行くとのこと。
今日はお昼前に学校が終わるので、お昼は風花と花柳先輩と一緒にうちで食べて、集合時間になったら水泳部のみんなを見送ることになっている。事前に風花に何を食べたいのかリクエストを訊き、「冷やし中華がいい」とリクエストされた。材料は昨日のうちに揃えてある。
また、月曜日の夜に帰ってくるので、そのときの夕食も風花のリクエストした料理を作ることになっている。ちなみに、リクエストされた料理はハンバーグだ。
「帰ったら、由弦君と瑠衣ちゃんと作るからね」
「そうですね、美優先輩」
「後輩のためだもの」
「みなさんありがとうございますっ」
風花はニコニコ顔でそう言ってくれる。風花が元気良く関東大会の会場に行くためにも、先輩方と一緒に美味しい冷やし中華を作らないとな。
「そういえば、風花ちゃんみたいに、一旦家に帰って、また学校に行く水泳部の部員って多いの?」
「家が近いとそうしている部員が多いですね。通知表や夏休みの課題も配られましたし。ただ、家が遠めの部員は集合時間に間に合わないので、登校したときに遠征の荷物も持ってきて、家には帰らずに学校の食事でお昼食べて、集合時間までは校内でゆっくりしているそうです」
「そうなんだね」
下校時刻から集合時間までは2時間半。陽出学院高校は最寄り駅の伯分寺駅から徒歩7,8分なので、遠くから電車で通学する生徒もいる。中には、遠征用の荷物を取りに家に帰ったら間に合わない部員もいるか。
あと、下校してすぐには行かないんだな。お昼時だからお昼ご飯を食べたり、顧問の先生が下校後に会議など外せない仕事があったりするのだろうか。
陽出学院高校からあけぼの荘までは5分ほどなので、あけぼの荘に到着するまではあっという間だった。
俺と美優先輩は花柳先輩と一緒に101号室に帰宅する。また、風花は着替えたり、荷物を置いてきたりするために自宅である102号室に行った。
「じゃあ、さっそく作ろうか」
「そうね」
「作りましょう」
俺と美優先輩と花柳先輩は寝室にある勉強机に荷物を置き、キッチンに行ってさっそく冷やし中華作りに取りかかり始める。ちなみに、俺は麺担当で、美優先輩と花柳先輩は麺の上に乗せる具材担当だ。
「3人でキッチンに立っていると、料理部の特別活動って感じがしますね。七夕にそうめんパーティーの準備をしたときにも思いましたが」
「ふふっ。そうだね、由弦君」
「部活動と同じで、今は制服の上にエプロンをしているものね」
「部活って感じがするよね。風花ちゃんのために美味しい冷やし中華を作りましょう」
『おー!』
美優先輩の言葉に、俺と花柳先輩が元気良く返事をする。それが面白かったのか、美優先輩は「ふふっ」と楽しそうに笑った。
俺が料理部の特別活動のようだと言ったのもあり、1学期中の料理部での思い出話をしながら冷やし中華を作っていった。結構楽しい時間になった。
「はい、完成!」
俺が茹でた麺の上に、美優先輩と花柳先輩が用意した玉子、焼豚、キュウリ、もやし、カニカマを乗せ、酢醤油味のタレをかけて完成した。彩り豊かでとても美味しそうだ。
俺と美優先輩が配膳をして、花柳先輩が風花を呼びに行った。
配膳が終わった頃、風花と花柳先輩がやってきた。風花はハーフパンツに半袖のTシャツを着ている。
「風花。いらっしゃい」
「いらっしゃい、風花ちゃん。動きやすそうな服装だね」
「ええ。陸上トレーニングのときの練習着なんです。今日は移動だけなので、この服装で行こうと思います」
「そうなんだね。可愛いね、風花ちゃん」
「似合っているよ、風花」
「ありがとうございますっ。……わぁっ、美味しそうな冷やし中華です!」
配膳した食卓の前まで行き、風花は笑顔で冷やし中華を見ている。その目は輝いていて。美味しそうな冷やし中華を見て食欲をそそられたのか、風花のお腹が「ぐうっ」と鳴って。そのことで俺達4人は笑いに包まれた。
俺達4人は食卓の椅子に座る。ちなみに、俺と美優先輩、風花と花柳先輩がそれぞれ隣同士に座り、俺の正面に風花が座っている。
「じゃあ、食べようか。いただきまーす」
『いただきます!』
美優先輩の号令で、俺達はお昼ご飯を食べ始める。
麺と具材を酢醤油のタレとよく絡ませた後、冷やし中華を一口食べる。
「……うん、美味しい」
さっぱりとした酢醤油のタレと中華麺、焼豚や玉子などの具材とよく合っている。俺が担当した中華麺のちょうどいい感じに茹でられたな。麺も茹でた後に冷水で締めたし、具材もさっきまで冷蔵庫まで入れてあったから冷たくて。もちろん、タレも。だから、全てが冷たくてたまらない。
「美味しい」
「美味しくできたね。麺の茹で加減もいいよ」
「美味しいわ。風花ちゃん、どうかしら?」
「さっぱりしていて美味しいですよ! 麺もコシがありますし、玉子や焼豚とかの具材とも合っていますし」
風花はニッコリとした笑顔でそう言ってくれた。そのことにとても嬉しくなる。
「良かったよ、風花」
「風花ちゃんがそう言ってくれて嬉しいよ」
「そうね、美優。ちなみに、美優とあたしが具材担当で、桐生君が麺担当よ」
「そうだったんですね。具材は食べやすいですし、麺はコシがあって。さすがは料理部3人ですね!」
風花は持ち前の明るい笑顔でそう言ってくれて。美優先輩と花柳先輩と一緒に褒めてくれたのが嬉しくて、気付けば頬が緩んでいくのが分かった。先輩方も嬉しそうな笑顔になっていた。
1学期の学校生活のこととか、水泳のこととかを話しながら、冷やし中華を食べていった。風花はとても美味しそうに食べていて。モリモリ食べるので、見ていると気持ちがいい。
「ごちそうさまでした! 美味しかったです! ありがとうございました!」
風花が最初に食べ終わり、そうお礼を言ってくれた。冷やし中華を作って良かったなと思わせてくれる。これからも、大会の直前にはこうして風花がリクエストした食事を作りたいと思う。
お昼ご飯を食べ終わった後は、集合時間の近くになるまでは、風花の選んだ4人とも好きな日常系アニメを観ながら食休みをした。
午後1時45分。
集合時間も近くなってきたので、俺達4人は水泳部の集合場所である陽出学院高校の正門前に行くことに。天気予報の通り、朝から降り続いていた雨が止んでいた。
ちなみに、俺が風花の荷物が入ったキャリーケースを運び、美優先輩と花柳先輩がバックパックをかわりばんこで背負っている。こうして風花の荷物を運んでいると、先月の都大会で水泳部を見送りに行ったときのことを思い出す。あのときは日帰りだったのでエナメルバッグだったけど、今回は3泊4日なのでキャリーケースだ。ただ、キャスターが付いているので今回の方が運ぶのは楽かな。
「みなさんが荷物を運んでくれるので楽です。ありがとうございます」
「いえいえ。試合は明日だけど、少しでも楽でいてほしいからな」
「由弦君の言う通りだね」
「そうね、美優」
都大会のときと同じく、俺達が志願して風花の荷物を集合場所で運ぶことになったのだ。これで風花の役に少しでも立てたら嬉しい。
「ねえ、風花ちゃん。都大会では2日目に御両親が会場まで応援しに来てくれたけど、関東大会はどうなっているのかな?」
「今回は予定が合って、両親と中学生の妹が3日全て会場で応援しに来てくれることになっています。大学生の兄は大学の期末試験が近いので、試験勉強や課題をしながら、自宅からネット配信を見て応援してくれるそうです」
風花は嬉しそうに話す。今回は3日全て御両親と妹さんが応援してくれるのか。
あと、風花のお兄さんが通う大学はこれから期末試験なのか。そういえば、雫姉さんも去年、俺が中学の夏休みに入った直後の時期は勉強とか課題とかを真剣にやっていたな。7月の下旬頃に期末試験をやる大学が多いのかな。
ちなみに、俺達は動画サイトの生配信を見て水泳部を応援する予定だ。
「両親と妹は山梨の食事とか温泉も楽しむつもりらしいです。観光もちょっとすると。旅行のきっかけになれて良かったと思ってます」
「ふふっ、そうなんだ」
俺が小学生の頃に、家族旅行で山梨県へ行ったことがあるけど、観光名所があったり、美味しいグルメやスイーツを楽しめたりするからな。
「両親と妹と会えるのが楽しみですっ」
風花はニッコリとした笑顔でそう言った。きっと、御両親と妹さんに会えることも、風花が関東大会で頑張れる力になることだろう。
あけぼの荘を出発してから数分ほど。
陽出学院高校の正門とその近くに停車しているリムジンバスが見えた。正門近くにいる生徒達の姿も。都大会を応援しに行ったので、彼らが水泳部の生徒達であることはすぐに分かった。
「あっ、風花ちゃん!」
「桐生君達と一緒に来たんだね!」
などと、数人の女子生徒が笑顔でそう言い、こちらに手を振ってきた。そんな彼女達に風花は笑顔で「来たよー!」と元気に挨拶した。
風花は顧問の女性教師に出席を報告。
また、今は花柳先輩が背負っているバックバッグは風花に渡して、俺が運んできたキャリーケースはリムジンバスのトランクに入れた。
「桐生君達いたわ」
「予想通りいたね、一佳ちゃん」
荷物入れにキャリーケースに入れた直後、霧嶋先生と大宮先生のそんな声が聞こえた。声がした方に顔を向くと、正門の近くに霧嶋先生と大宮先生がいた。俺達4人は先生達に「こんにちは」と挨拶する。
「都大会のとき、桐生君と白鳥さんが水泳部の子達を見送った話を聞いていたから。桐生君達がいるんじゃないかと思っていたの」
「なるほどです。今回も風花ちゃん達水泳部を見送りに来ました」
「風花の荷物を運びたかったのもあります」
「今回はお昼だったのであたしも。成実先生と一佳先生はどうしてここに?」
「水泳部が2時頃に学校を出発するって聞いていたからね」
「休憩も兼ねて、成実さんと一緒に見送りに来たの」
「そうだったんですか。一佳先生、成実先生、ありがとうございます!」
風花は嬉しそうな様子で霧嶋先生と大宮先生にお礼を言う。
都大会のときは俺と美優先輩が見送った話をしていたから、関東大会のときには見送ろうと決めていたのかもしれない。
「頑張ってね、姫宮さん。明日と明後日は桐生君達と一緒に、月曜日は学校の職員室から配信を見て応援するわ」
「頑張ってね、風花ちゃん。東京から応援してるよ」
「ありがとうございますっ! インターハイ出場を目指して頑張りますっ! 都大会の後も調子がいいですし、出場する3種目全てでインターハイ出場を決めたいです!」
風花はとても明るい笑顔で俺達のことを見ながらそう言った。都大会の後も調子がいいのか。それなら、有言実行で、出場する種目全てでインターハイ出場を決められるかもしれないな。
それからも、荷物を持った水泳部の部員が続々とやってくる。
今日で1学期が終わったからだろうか。それとも、明日の関東大会でレースができるからだろうか。明るかったり、意気込んだりしている部員が多い。いい雰囲気だな。
やがて、水泳部の部員が全員集まった。
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「2年の白鳥です。明日からの関東大会を頑張ってください。配信を見る形ですが、東京から応援しますね」
「2年の花柳です。あたしも配信で応援します。頑張ってください!」
「霧嶋です。都大会を勝ち抜いたみなさんなら、自分の持てる力を発揮して、関東大会でもきっといい結果に出せると思っています。頑張ってください」
「大宮です。インターハイを目指して頑張ってください。東京から応援しますね」
「1年の桐生です。関東大会は山梨での開催ですので、東京から配信を見る形で応援します。出場するみなさんがいい結果を出して、インターハイ出場を決められることを祈っています。頑張ってください」
俺達5人がエールを送ると、水泳部のみなさんは「ありがとうございます!」と元気良くお礼を言ってくれた。風花は特に大きな声で言ってくれた。頑張ってほしい。
「いってきます!」
風花は笑顔で俺達に手を振ってリムジンバスの中に入る。
その後も、水泳部のみなさんと顧問の女性教師はリムジンバスに乗り、程なくしてリムジンバスが出発し始める。
風花を含めバスに乗っている水泳部のみんなは俺達に向かって手を振ってくれる。そんな彼らに俺達5人は大きく手を振り、リムジンバスが見えなくなるまで降り続ける。みんな、頑張ってください。
「桐生君、白鳥さん、花柳さん、また明日」
「一佳ちゃんと一緒に瑠衣ちゃんのお宅に伺うわ」
そう言い、俺達に手を振って、霧嶋先生と大宮先生は校舎へと歩いていった。
関東大会の応援は花柳先輩の家でする予定だ。5人で大きな声で応援するだろうから、アパートやマンションだとご近所さんに迷惑がかかる可能性があると考え、一軒家である花柳先輩の家で配信を見て応援することになったのだ。花柳先輩の母親の亜衣さんと、父親の良樹さんからは、大きな声で応援してOKだと許可をいただいている。
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