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特別編10

第8話『1学期最後の夜』

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 夕食後。
 今日の夕食の後片付け当番は美優先輩だ。なので、俺は夕食を食べ終わると、先輩と自分の分のアイスティーを淹れ、ソファーでくつろぐことに。
 アイスティーを一口飲んでいると、
 ――プルルッ。プルルッ。
 ローテーブルに置いてある俺のスマホと美優先輩のスマホが何度も鳴る。
 自分のスマホを手に取って、スリープを解除すると、LIMEというSNSアプリで風花、俺、美優先輩、花柳先輩、加藤、橋本さん、霧嶋先生、大宮先生がメンバーのグループトークに写真やメッセージが届いていると通知が。だから、俺と美優先輩のスマホが同時になったのか。
 通知をタップすると、グループトークのトーク画面が開き、和室の写真や風花が写っている写真や、

『無事に山梨のホテルに着きました! ホテルの夜ご飯をいっぱい食べました。あと、泊まる部屋はこんな感じです』

 という風花のメッセージ、それに対して花柳先輩や霧嶋先生などが『無事に着いて良かった』『いい部屋だ』といったメッセージを送っている。
 水泳部のみんな……無事に大会の会場近くにあるホテルに着いたか。良かった。
 あと、ホテルの部屋は和室か。畳なので落ち着いた雰囲気があってとてもいいな。会場から近いそうだし、この部屋なら、大会期間中はゆっくりと休めるんじゃないだろうか。
 あと、和室で過ごすのは旅行くらいなので、個人的に和室は非日常感がある。それに、この家には和室はないし、実家には和室があるけど客間だけだったし。

『無事に到着して良かったよ、風花。ホテルの部屋、落ち着いた感じの和室でいいな。明日から頑張れよ』

 というメッセージを送った。その直後に美優先輩のスマホが鳴って。トーク画面を開いている人が3人いるようで、送ったメッセージはすぐに『既読3』とマークが付いた。

「後片付け終わったよ」
「お疲れ様です。ありがとうございます、美優先輩。アイスティーを淹れておきました」
「ありがとう」
「あと、風花から、先輩もメンバーのグループトークにホテルに着いたってメッセージが来てました。泊まるホテルの部屋の写真も」
「そうなんだ。見てみよっと」

 美優先輩は俺のすぐ隣でソファーに腰を下ろし、自分のスマホを手に取る。
 風花から送られてきた写真を見たのか、美優先輩は「わぁっ」と可愛らしい声を漏らす。

「落ち着いたいい雰囲気の和室だね」
「そうですね」
「みんなでふとんを敷いたりするのかな。でも、修学旅行じゃないから自分で敷くことはしないのかな」
「どうでしょうねぇ。高校生の団体が泊まっていますから敷く可能性はありそうです。あと、修学旅行で布団を敷くの……懐かしいです。小学校も中学校も、修学旅行の部屋は和室だったので、夕食を食べた後に自分達で布団を敷きました」
「そうだったんだ。私もやったよ。懐かしいなぁ。布団を敷くときに、どこで寝るとか、誰の隣で寝るのかって盛り上がって」
「そうですか。俺は枕投げで盛り上がりました」
「ふふっ、枕投げか。小学校の修学旅行ではやったなぁ」

 小学校や中学校のときの修学旅行を懐かしんでいるのか、美優先輩は優しい笑顔になっている。
 俺も枕投げのエピソードを話したから、当時のことを思い出す。修学旅行懐かしいなぁ。小学校も中学校も楽しかった。そういえば、午後に地元の友達の何人かから、1学期が終わって夏休みになったってメッセージ来てたな。
 ――ププッ。
 と、スマホが振動するので画面を見てみる。すると、グループトークに美優先輩が、

『無事に着いて良かったよ。ホテルの部屋、素敵なお部屋だね! 今日はゆっくりと休んで、明日からの関東大会頑張ってね!』

 というメッセージが送られていた。美優先輩らしい温かなメッセージだ。
 メッセージを送ると、美優先輩はローテーブルに置いてある自分のアイスティーを一口飲む。

「ほんのり甘くて美味しい」
「良かったです。……修学旅行といえば、高校の修学旅行は2年生で行くんですよね」
「うん。2学期に行くよ。由弦君と一緒に行きたいけど、学年が違うからそれはできないよね」
「こればっかりは……しょうがないですよね。俺も一緒に行きたいですけど」

 修学旅行といえば、高校生活の中でも最大ともいえるイベントだ。それを一緒に体験ができない。そこが学年の違うカップルの辛いところだなって思う。

「修学旅行に行っている間は、風花ちゃんみたいに写真を送るよ。いっぱい送る。電話もするよ」
「はい。そのときは楽しみにしています。俺も来年修学旅行に行くときには写真を送ったり、電話したりしますね」
「うんっ。約束だよ」

 ニコッと笑ってそう言うと、美優先輩は俺にキスしてくる。約束のキスかな。美優先輩の修学旅行は何ヶ月も先だし、俺の修学旅行は来年だ。そんな先のことでも約束のキスをしてくるところが可愛くて。あと、先輩がさっきアイスティーを飲んでいたので、キスしたときに紅茶の香りがほんのりと香った。
 数秒ほどして唇を離すと、すぐ目の前には美優先輩の可愛い笑顔があって。キスされたのもあってドキッとした。
 それから程なくして風花から、

『ありがとうございます! いい部屋ですし、ホテルの夕ご飯が美味しかったので、ちょっと旅行気分になってます。部員がいるので合宿みたいな感じもして。明日からの関東大会頑張ります!』

 というメッセージが送られた。風花の言う通り、いい部屋に来て、ホテルの美味しい夕ご飯を食べると旅行気分にもなれるよな。そういったことが、明日からの大会でのレースの力に繋がるといいな。

「明日から応援頑張ろうね」
「はい」
「うんっ。……ねえ、由弦君」

 俺の名前を言うと、美優先輩は俺の右手に手を重ねてきて、

「お風呂に入った後にえっちしない? そのときは制服を着て」

 と、甘い声で肌を重ねることを誘ってくる。

「制服を着て……ですか」
「うん。今日で1学期が終わったから、1学期の締めのえっちをしたくて」
「鍋の締めにラーメンを食べたいみたいな感じで言ってきますね」
「ふふっ。夏休み中に学校に行く用事はないから、しばらく制服を着る機会はないし。だから、制服えっちしたいなって。まあ、一緒に住んでいるし、夏休み中にいつでもやろうと思えばすぐできるけど」
「あははっ。じゃあ、お風呂に入ったら、制服を着てしますか。俺もしたいです」
「うんっ! ありがとう! じゃあ、1学期の締めえっちをいっぱいしようね」

 美優先輩はとても嬉しそうに言うと、俺にキスをしてきた。



 それからは美優先輩と一緒にお風呂に入り、先輩の希望通り、制服を着て1学期の締めえっちを寝室でする。
 互いに裸になってするのもいいけれど、制服を着て、素肌の一部分が見える状態でするのもいいな。気持ちがいい。お互いに相手の着ている服を少しずつ脱がすのも興奮して。
 締めえっちをしたいと誘ってきたのもあり、美優先輩がリードして積極的に動くときもあって。そのときの先輩はいつも以上に大人っぽくて。それがまた魅力的で。
 好きと伝え合って、唇中心に体中にキスし合って。美優先輩と一緒に気持ち良くて幸せな時間を過ごしていった。



「気持ち良かったね、由弦君」
「ええ。気持ち良かったです」

 何回かした後、美優先輩と俺はベッドの上で寄り添った体勢になる。肌を重ねている中で服を脱がしたので、今はお互いに裸の状態だ。

「今日は特に激しいときがあったね」
「制服を着た状態で気持ち良さそうにしている美優先輩が可愛くて。つい、激しく動くときが」
「ふふっ、そういうこと」
「美優先輩も、積極的に体を動かしているときがありましたよ」
「制服を着た状態でえっちすることが珍しいから興奮しちゃって。由弦君が気持ち良くしてくれるから、私も気持ち良くしたいなって。腰を激しく動かした自覚ある」
「ははっ、そうでしたか。可愛いですね」

 俺がそう言うと、美優先輩は「ふふっ」と笑いながら俺の左腕をぎゅっと抱きしめてくる。肌と肌が直接触れているので、美優先輩の柔らかさがダイレクトに伝わってきて。特に胸は柔らかくて。あと、何度も肌を重ねた後だから、先輩から伝わってくる熱がいつもより強くて。それがとても心地いい。

「由弦君のおかげで、気持ち良くて幸せな気持ちで1学期を締めくくれるよ」
「それは良かったです。俺も先輩のおかげで、気持ち良くて幸せな気持ちで締めくくれます」
「ふふっ、良かった。……春休みに由弦君がこの家で住み始めたから、2年生の1学期はとても楽しかったよ。1学期の間に由弦君と恋人になれたし」
「そう言ってくれて嬉しいです。俺も美優先輩のいるこの家で住み始めたから、高校生活はいいスタートを切ることができて、楽しい1学期になったと思います」
「良かった。こう言っていいのか分からないけど……二重契約しちゃった伯父さんに感謝だね」
「そうですね」

 美優先輩と一緒に住み始めたきっかけは、このアパートの契約や金銭面で管理している美優先輩の伯父さんが、風花と俺に同じ部屋に二重契約してしまったことからだったな。
 契約でミスがなかったら。先にあけぼの荘に着いたのが俺だったら。近所のアパートやマンションに空きがあったら。美優先輩と一緒に住むことはなかったかもしれない。

「美優先輩と一緒に住んでいなかったら、ここまで楽しい1学期にはならなかったでしょうね」
「嬉しい。私もそう思ってるよ。由弦君と一緒に住んでいなかったら、2年生の高校生活がこんなに楽しくはならなかったと思う」
「そうですか。嬉しいです」

 俺達はお互いに気持ちを伝え合って、笑い合う。
 春休みにこの家に引っ越してきてから、美優先輩の笑顔がいつもすぐ側にあって。だからこそ、俺は陽出学院高校での高校生活をとても楽しめているんだ。

「美優先輩、いつもありがとうございます。1学期お疲れ様でした」
「こちらこそいつもありがとう、由弦君。1学期お疲れ様。これからもよろしくね」
「はい。よろしくお願いします」

 そして、俺から美優先輩にキスをする。
 肌を重ねている間にたくさんキスをしたけど、美優先輩とのキスは何度してもいいなって思えるし、幸せな気持ちになれる。
 少しして、俺から唇を離す。すると、目の前には幸福感に満ちたような笑顔を見せてくれる美優先輩がいて。何て可愛いんだろう。

「ふああっ……」

 と、美優先輩は可愛らしいあくびをして。そのことに先輩は照れ笑いをして。それもまた可愛くて。

「いっぱいえっちしたから眠くなってきちゃった」
「俺もです。明日は午前中から風花の応援をしますし、そろそろ寝ましょうか」
「うんっ。おやすみ、由弦君」
「おやすみなさい」

 美優先輩からおやすみのキスをして、先輩はゆっくりと目を瞑る。あくびをするほどだからか、さっそく寝息を立て始めている。
 ベッドライトを消して俺も目を瞑る。
 いっぱい体を動かしたことの疲れもあるし、美優先輩の温もりや柔らかさ、甘い匂いがとても心地いいので、それから程なくして眠りについた。
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