174 / 194
特別編6-星空に願う夏の夜編-
第3話『浴衣女子』
しおりを挟む
7月5日、日曜日。
みんなで行くと約束した七夕祭りの当日になった。
まだ梅雨の時期だけど、今日は朝から曇っており、雨は降っていない。たまに、雲の切れ間から青空が見える時間があるほどだ。
天気予報によると、今日の天気は曇りで降水確率は10%。雨が降る心配はないという。今日はサクラ達と一緒に七夕祭りに行くし、浴衣を着ていく人もいる。この予報がちゃんと当たるように祈ろう。短冊に書いて、笹に飾ることはしていないけど。
午後5時半頃。
俺は今、サクラの部屋でサクラが浴衣に着替える様子を眺めている。
一紗や杏奈達とは、午後6時に四鷹駅の改札前で待ち合わせすることになっている。そのため、この時間にサクラが浴衣に着替えることにしたのだ。また、着替える様子を見ていてもいいとサクラが言ってくれたので、お言葉に甘えてここにいる。
ゴールデンウィーク頃から、入浴のときなどサクラが着替える姿をよく見ている。それでも、浴衣を着ている姿を見るのは初めてだから、何だかドキッとする。
「お風呂のときとか、ダイちゃんの前で着替えることはいっぱいあるけど、浴衣に着替えるのは初めてだからちょっとドキドキする」
「俺も同じようなことを思っていたよ」
「ふふっ、そうだったんだ」
サクラは頬をほんのりと紅潮させながら微笑んだ。それが可愛くて、またドキッとする。
サクラの着る浴衣は赤い生地に、ピンクの桜の花びらがたくさんあしらわれたデザイン。サクラは暖色系の色が好きだし、桜の花も好きだから、サクラらしい浴衣だと思う。
浴衣を着て、淡いピンク色の帯を巻き終わると、サクラは髪をお団子の形に纏めていく。普段からお風呂で髪を洗った後はお団子のように髪を纏めているのもあってか、鮮やかな手つきだ。
お団子の形で髪を纏めると、サクラは赤いかんざしを挿した。
「はい、お祭りコスチューム完成!」
「おおっ」
お祭りコスチュームの美しさはもちろん、特に苦戦することなく浴衣を着たり、髪を纏めたりしたのもあり、思わず声が漏れる。
「その浴衣、よく似合っているよ。綺麗だし、可愛らしさもあるし」
「ありがとう! お気に入りの浴衣だから嬉しいな。背が伸びて、今みたいな体格になった中3の七夕祭りから着ているの」
「そうなのか」
「だから、この浴衣を着て、これからダイちゃんと一緒に七夕祭りに行けるのが嬉しいよ」
「……そう言ってくれて俺も嬉しいよ」
俺がそう言うと、サクラは「えへへっ」と声に出して笑う。その笑顔も相まって、浴衣姿がより魅力的に見えて。こんなに魅力的な姿のサクラを一昨年、去年の七夕祭りで多くの人が見ていたのか。羨ましいぜ。俺も行っておけば良かったよ。
「サクラ。凄く可愛いし、スマホで写真を撮ってもいいか?」
「うん、いいよ!」
「ありがとう」
その後、俺はスマホで浴衣姿のサクラの写真を何枚も撮影する。また、サクラの希望で俺とのツーショットの自撮り写真も撮って。浴衣姿の可愛いサクラを見られたし、写真もいっぱい撮ったからこの時点で満足感がある。
ツーショットの自撮り写真を中心にLIMEでサクラに送った。それを確認するサクラはニコッと笑っていた。
「ありがとう、ダイちゃん」
お礼を言うと、サクラは俺にキスしてきた。これまでたくさんキスしてきたけど、浴衣姿なのもあって特別な感じがした。
「いえいえ。今は5時40分過ぎか。待ち合わせは6時だし、出発するか」
「うんっ!」
俺はサクラと一緒にサクラの部屋を後にする。
リビングにいる父さんと母さんに七夕祭りに行ってくると伝えると、2人ともサクラの浴衣姿を凄く褒めていた。サクラの母親の美紀さんに送るからと、母さんがスマホで俺達のことを撮影していた。
母さんによる写真撮影会が終わり、俺達は家を出発する。
夕方の5時半も過ぎて、雲の切れ間から青空がちょっと見える程度。なので、暑さはそこまで感じない。これから夜になっていくし、お祭りを楽しむにはちょうどいい気候だと思う。
付き合っているのもあり、サクラと手を繋いでいる。ただ、サクラが浴衣姿であったり、サクラが履いている下駄による「カタ、カタ……」という足音が聞こえたりと、夏の風情が感じられる。
「ダイちゃんとまた七夕祭りに行けて嬉しいよ」
「俺も嬉しいよ。4年ぶりか」
「そうだね。ダイちゃんは昔と変わらず普段着だよね」
「小学校の3、4年の頃から、お祭りに行くときも普段着になったな」
それ以前は浴衣を着ていたけど。ただ、浴衣だと動きづらいし、普段着の方が気楽でいいと考えて、小学校の3、4年くらいからはずっと普段着でお祭りに行っている。ちなみに、今はスラックスに半袖のVネックシャツである。
「みんなはどんな服装だろう。一紗ちゃんはダイちゃんに浴衣姿を見せたいから浴衣は確定で、青葉ちゃんは去年浴衣を着ていたから、たぶん今年も浴衣だと思う」
「そうか。杏奈と羽柴は……分からないな。2人とも一緒にお祭りに行ったことがないし。みんなの服装も楽しみだな」
「そうだねっ」
サクラは笑顔でそう答えた。
サクラと話しながら歩いているので、気付けば四鷹駅が見えていた。俺達と行き先が同じなのか、浴衣や甚平姿の人が四鷹駅に向かう姿がちらほらと見受けられる。
バイト先のマスバーガーの前を通り過ぎ、俺達は四鷹駅南口のエスカレーターを上がっていく。今は……5時50分過ぎか。約束の時間まで10分弱だけど、待ち合わせ場所の改札前にはもう4人はいるだろうか。
エスカレーターを上がって、改札の方へ向かうと、
「あっ、文香と速水君が来た! おーい!」
待ち合わせの改札前には、既に4人全員が揃っていた。小泉さんがこちらに向かって元気良く呼びかけ、笑顔で右手を大きく振っている。一紗も杏奈も羽柴も小泉さんほどではないがしっかりと手を振る。そんな4人に俺達も手を振った。
一紗と杏奈と小泉さんは浴衣姿で、羽柴は七分袖のジャケット姿の普段着だ。みんな似合っているな。あと、美男美女ばかりだから、男女問わず彼らに視線を向ける人が多い。
「みんな、こんばんは!」
「こんばんは。俺達が最後だったんだな」
「そうだな。俺が10分以上前に最初に着いて。そのすぐ後に小鳥遊が来て。小鳥遊が来てから5分後くらいに、小泉と麻生が一緒に改札から出てきたんだ」
「四鷹駅まで一緒に行こうって一紗と約束していたの」
「直接電車で待ち合わせしてね。電車で青葉さんと会えて、ここでみんなと会えて良かったわ。……ところで、私の浴衣姿はどうかしら、大輝君」
ワクワクとした様子でそう言うと、一紗は一歩前に出てくる。
一紗の浴衣は黒い生地に白い百合の花模様があしらわれたもの。カチューシャを付けたロングヘアの髪型はいつもと変わらないけど、カチューシャの柄は青と黒の市松模様と和風だ。おそらく、着ている浴衣に合わせたのだろう。
「黒い浴衣なのもあって、凄く大人っぽい雰囲気で素敵な浴衣姿だと思うよ。綺麗だ。市松模様のカチューシャもいいね。似合ってるよ」
「凄く素敵だと思うよ! いつも以上に大人っぽい雰囲気になっているよ、一紗ちゃん!」
「2人にも似合っていると言ってもらえて嬉しいわ。ありがとう」
一紗はとても嬉しそうな笑顔でそう言う。その笑顔もあって、綺麗なだけじゃなくて可愛らしさも感じられる。魅力的な女の子だ。
杏奈の着る浴衣は、白い生地に青や水色、青紫のあじさいの花模様がたくさんあしらわれたデザイン。髪型はいつもと変わらぬショートボブだ。
「杏奈も浴衣がよく似合っているね。白い浴衣だし、あじさいの色が青系だから、爽やかな雰囲気がしていいなって思う」
「爽やかでいいよね。あじさいは夏の花だから今の季節にピッタリで。似合っているよ、杏奈ちゃん」
「ありがとうございますっ」
えへへっ、と杏奈も嬉しそうに笑う。そのことで杏奈が元々持っている可愛い雰囲気がさらに増した気がする。
小泉さんの着る浴衣は、青い生地に大小様々な大きさの水玉模様のデザイン。髪型はいつものハーフアップとは違って、今のサクラと似たお団子の髪型になっている。髪型も違うから、普段と違った雰囲気だ。
「小泉さんも爽やかな雰囲気の浴衣でいいな。似合ってる」
「似合ってるよ、青葉ちゃん! 今年もその浴衣姿を見られて嬉しいよ」
「ありがとう。気に入っているから嬉しいよ」
と、小泉さんは嬉しそうに言った。去年も着たお気に入りの浴衣か。そういう意味ではサクラとお揃いだ。気に入っている浴衣なら何年も着たくなるものか。
「羽柴は俺と一緒で普段着か。ジャケット姿なのが羽柴らしいけど」
「これから夜になるし、七分袖だからちょうどいいかなって。小さい頃から、お祭りにはいつも着ているような服で行くんだ」
「そうなのか。俺も小3小4くらいから普段着で行ってるよ」
「そうなんだな。普段着だから、いつもの速水って感じだ」
「ですね。いつもの休日の大輝先輩って感じです」
「そうだね、杏奈ちゃん。休みの日に会う速水君って感じね」
「浴衣姿や甚平姿も興味があるけど、普段着の大輝君も素敵よ!」
「ははっ、そうか。ありがとう」
いつも着ているような服装だけど、何だか嬉しい気持ちになる。
「文香は今年も桜の赤い浴衣だね! あたしもまた見られて嬉しいよ!」
「とても可愛らしい雰囲気だわ。よく似合っているわ」
「桜の花びら模様が似合っていますね! お団子の形に纏めた髪型も似合ってます!」
「名字に桜が入っているし、桜井らしい感じがしていいな」
「みんなありがとう!」
みんなに浴衣姿を褒められて、サクラはとても嬉しそうだ。恋人が褒められているから、俺も嬉しい気持ちになるよ。
「みんな集まったし、女子はみんな浴衣姿だから写真を撮りたいわ」
「あたしもそう思っていたよ」
一紗と小泉さんがそう言ってくる。可愛い浴衣姿の女子もいるから、写真撮りたくなるよな。さっきの俺がそうだったもん。
一紗と小泉さんの要望に俺、サクラ、杏奈、羽柴は快諾し、それから少しの間は写真撮影会になった。
みんなで行くと約束した七夕祭りの当日になった。
まだ梅雨の時期だけど、今日は朝から曇っており、雨は降っていない。たまに、雲の切れ間から青空が見える時間があるほどだ。
天気予報によると、今日の天気は曇りで降水確率は10%。雨が降る心配はないという。今日はサクラ達と一緒に七夕祭りに行くし、浴衣を着ていく人もいる。この予報がちゃんと当たるように祈ろう。短冊に書いて、笹に飾ることはしていないけど。
午後5時半頃。
俺は今、サクラの部屋でサクラが浴衣に着替える様子を眺めている。
一紗や杏奈達とは、午後6時に四鷹駅の改札前で待ち合わせすることになっている。そのため、この時間にサクラが浴衣に着替えることにしたのだ。また、着替える様子を見ていてもいいとサクラが言ってくれたので、お言葉に甘えてここにいる。
ゴールデンウィーク頃から、入浴のときなどサクラが着替える姿をよく見ている。それでも、浴衣を着ている姿を見るのは初めてだから、何だかドキッとする。
「お風呂のときとか、ダイちゃんの前で着替えることはいっぱいあるけど、浴衣に着替えるのは初めてだからちょっとドキドキする」
「俺も同じようなことを思っていたよ」
「ふふっ、そうだったんだ」
サクラは頬をほんのりと紅潮させながら微笑んだ。それが可愛くて、またドキッとする。
サクラの着る浴衣は赤い生地に、ピンクの桜の花びらがたくさんあしらわれたデザイン。サクラは暖色系の色が好きだし、桜の花も好きだから、サクラらしい浴衣だと思う。
浴衣を着て、淡いピンク色の帯を巻き終わると、サクラは髪をお団子の形に纏めていく。普段からお風呂で髪を洗った後はお団子のように髪を纏めているのもあってか、鮮やかな手つきだ。
お団子の形で髪を纏めると、サクラは赤いかんざしを挿した。
「はい、お祭りコスチューム完成!」
「おおっ」
お祭りコスチュームの美しさはもちろん、特に苦戦することなく浴衣を着たり、髪を纏めたりしたのもあり、思わず声が漏れる。
「その浴衣、よく似合っているよ。綺麗だし、可愛らしさもあるし」
「ありがとう! お気に入りの浴衣だから嬉しいな。背が伸びて、今みたいな体格になった中3の七夕祭りから着ているの」
「そうなのか」
「だから、この浴衣を着て、これからダイちゃんと一緒に七夕祭りに行けるのが嬉しいよ」
「……そう言ってくれて俺も嬉しいよ」
俺がそう言うと、サクラは「えへへっ」と声に出して笑う。その笑顔も相まって、浴衣姿がより魅力的に見えて。こんなに魅力的な姿のサクラを一昨年、去年の七夕祭りで多くの人が見ていたのか。羨ましいぜ。俺も行っておけば良かったよ。
「サクラ。凄く可愛いし、スマホで写真を撮ってもいいか?」
「うん、いいよ!」
「ありがとう」
その後、俺はスマホで浴衣姿のサクラの写真を何枚も撮影する。また、サクラの希望で俺とのツーショットの自撮り写真も撮って。浴衣姿の可愛いサクラを見られたし、写真もいっぱい撮ったからこの時点で満足感がある。
ツーショットの自撮り写真を中心にLIMEでサクラに送った。それを確認するサクラはニコッと笑っていた。
「ありがとう、ダイちゃん」
お礼を言うと、サクラは俺にキスしてきた。これまでたくさんキスしてきたけど、浴衣姿なのもあって特別な感じがした。
「いえいえ。今は5時40分過ぎか。待ち合わせは6時だし、出発するか」
「うんっ!」
俺はサクラと一緒にサクラの部屋を後にする。
リビングにいる父さんと母さんに七夕祭りに行ってくると伝えると、2人ともサクラの浴衣姿を凄く褒めていた。サクラの母親の美紀さんに送るからと、母さんがスマホで俺達のことを撮影していた。
母さんによる写真撮影会が終わり、俺達は家を出発する。
夕方の5時半も過ぎて、雲の切れ間から青空がちょっと見える程度。なので、暑さはそこまで感じない。これから夜になっていくし、お祭りを楽しむにはちょうどいい気候だと思う。
付き合っているのもあり、サクラと手を繋いでいる。ただ、サクラが浴衣姿であったり、サクラが履いている下駄による「カタ、カタ……」という足音が聞こえたりと、夏の風情が感じられる。
「ダイちゃんとまた七夕祭りに行けて嬉しいよ」
「俺も嬉しいよ。4年ぶりか」
「そうだね。ダイちゃんは昔と変わらず普段着だよね」
「小学校の3、4年の頃から、お祭りに行くときも普段着になったな」
それ以前は浴衣を着ていたけど。ただ、浴衣だと動きづらいし、普段着の方が気楽でいいと考えて、小学校の3、4年くらいからはずっと普段着でお祭りに行っている。ちなみに、今はスラックスに半袖のVネックシャツである。
「みんなはどんな服装だろう。一紗ちゃんはダイちゃんに浴衣姿を見せたいから浴衣は確定で、青葉ちゃんは去年浴衣を着ていたから、たぶん今年も浴衣だと思う」
「そうか。杏奈と羽柴は……分からないな。2人とも一緒にお祭りに行ったことがないし。みんなの服装も楽しみだな」
「そうだねっ」
サクラは笑顔でそう答えた。
サクラと話しながら歩いているので、気付けば四鷹駅が見えていた。俺達と行き先が同じなのか、浴衣や甚平姿の人が四鷹駅に向かう姿がちらほらと見受けられる。
バイト先のマスバーガーの前を通り過ぎ、俺達は四鷹駅南口のエスカレーターを上がっていく。今は……5時50分過ぎか。約束の時間まで10分弱だけど、待ち合わせ場所の改札前にはもう4人はいるだろうか。
エスカレーターを上がって、改札の方へ向かうと、
「あっ、文香と速水君が来た! おーい!」
待ち合わせの改札前には、既に4人全員が揃っていた。小泉さんがこちらに向かって元気良く呼びかけ、笑顔で右手を大きく振っている。一紗も杏奈も羽柴も小泉さんほどではないがしっかりと手を振る。そんな4人に俺達も手を振った。
一紗と杏奈と小泉さんは浴衣姿で、羽柴は七分袖のジャケット姿の普段着だ。みんな似合っているな。あと、美男美女ばかりだから、男女問わず彼らに視線を向ける人が多い。
「みんな、こんばんは!」
「こんばんは。俺達が最後だったんだな」
「そうだな。俺が10分以上前に最初に着いて。そのすぐ後に小鳥遊が来て。小鳥遊が来てから5分後くらいに、小泉と麻生が一緒に改札から出てきたんだ」
「四鷹駅まで一緒に行こうって一紗と約束していたの」
「直接電車で待ち合わせしてね。電車で青葉さんと会えて、ここでみんなと会えて良かったわ。……ところで、私の浴衣姿はどうかしら、大輝君」
ワクワクとした様子でそう言うと、一紗は一歩前に出てくる。
一紗の浴衣は黒い生地に白い百合の花模様があしらわれたもの。カチューシャを付けたロングヘアの髪型はいつもと変わらないけど、カチューシャの柄は青と黒の市松模様と和風だ。おそらく、着ている浴衣に合わせたのだろう。
「黒い浴衣なのもあって、凄く大人っぽい雰囲気で素敵な浴衣姿だと思うよ。綺麗だ。市松模様のカチューシャもいいね。似合ってるよ」
「凄く素敵だと思うよ! いつも以上に大人っぽい雰囲気になっているよ、一紗ちゃん!」
「2人にも似合っていると言ってもらえて嬉しいわ。ありがとう」
一紗はとても嬉しそうな笑顔でそう言う。その笑顔もあって、綺麗なだけじゃなくて可愛らしさも感じられる。魅力的な女の子だ。
杏奈の着る浴衣は、白い生地に青や水色、青紫のあじさいの花模様がたくさんあしらわれたデザイン。髪型はいつもと変わらぬショートボブだ。
「杏奈も浴衣がよく似合っているね。白い浴衣だし、あじさいの色が青系だから、爽やかな雰囲気がしていいなって思う」
「爽やかでいいよね。あじさいは夏の花だから今の季節にピッタリで。似合っているよ、杏奈ちゃん」
「ありがとうございますっ」
えへへっ、と杏奈も嬉しそうに笑う。そのことで杏奈が元々持っている可愛い雰囲気がさらに増した気がする。
小泉さんの着る浴衣は、青い生地に大小様々な大きさの水玉模様のデザイン。髪型はいつものハーフアップとは違って、今のサクラと似たお団子の髪型になっている。髪型も違うから、普段と違った雰囲気だ。
「小泉さんも爽やかな雰囲気の浴衣でいいな。似合ってる」
「似合ってるよ、青葉ちゃん! 今年もその浴衣姿を見られて嬉しいよ」
「ありがとう。気に入っているから嬉しいよ」
と、小泉さんは嬉しそうに言った。去年も着たお気に入りの浴衣か。そういう意味ではサクラとお揃いだ。気に入っている浴衣なら何年も着たくなるものか。
「羽柴は俺と一緒で普段着か。ジャケット姿なのが羽柴らしいけど」
「これから夜になるし、七分袖だからちょうどいいかなって。小さい頃から、お祭りにはいつも着ているような服で行くんだ」
「そうなのか。俺も小3小4くらいから普段着で行ってるよ」
「そうなんだな。普段着だから、いつもの速水って感じだ」
「ですね。いつもの休日の大輝先輩って感じです」
「そうだね、杏奈ちゃん。休みの日に会う速水君って感じね」
「浴衣姿や甚平姿も興味があるけど、普段着の大輝君も素敵よ!」
「ははっ、そうか。ありがとう」
いつも着ているような服装だけど、何だか嬉しい気持ちになる。
「文香は今年も桜の赤い浴衣だね! あたしもまた見られて嬉しいよ!」
「とても可愛らしい雰囲気だわ。よく似合っているわ」
「桜の花びら模様が似合っていますね! お団子の形に纏めた髪型も似合ってます!」
「名字に桜が入っているし、桜井らしい感じがしていいな」
「みんなありがとう!」
みんなに浴衣姿を褒められて、サクラはとても嬉しそうだ。恋人が褒められているから、俺も嬉しい気持ちになるよ。
「みんな集まったし、女子はみんな浴衣姿だから写真を撮りたいわ」
「あたしもそう思っていたよ」
一紗と小泉さんがそう言ってくる。可愛い浴衣姿の女子もいるから、写真撮りたくなるよな。さっきの俺がそうだったもん。
一紗と小泉さんの要望に俺、サクラ、杏奈、羽柴は快諾し、それから少しの間は写真撮影会になった。
0
読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や感想をお待ちしております。
『クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。』の続編がスタートしました!(2025.2.8) 学園ラブコメです。是非、読みに来てみてください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/89864889
『高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。』は全編公開中です。 学園ラブコメ作品です。是非、読みに来てみてください。宜しくお願いします。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/441389601
『まずはお嫁さんからお願いします。』は全編公開中です。高校生夫婦学園ラブコメです。是非、読みに来て見てください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/120759248
『クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。』の続編がスタートしました!(2025.2.8) 学園ラブコメです。是非、読みに来てみてください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/89864889
『高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。』は全編公開中です。 学園ラブコメ作品です。是非、読みに来てみてください。宜しくお願いします。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/441389601
『まずはお嫁さんからお願いします。』は全編公開中です。高校生夫婦学園ラブコメです。是非、読みに来て見てください。
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/347811610/120759248
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説

僕(じゃない人)が幸せにします。
暇魷フミユキ
恋愛
【副題に☆が付いている話だけでだいたい分かります!】
・第1章
彼、〈君島奏向〉の悩み。それはもし将来、恋人が、妻ができたとしても、彼女を不幸にすることだった。
そんな彼を想う二人。
席が隣でもありよく立ち寄る喫茶店のバイトでもある〈草壁美頼〉。
所属する部の部長でたまに一緒に帰る仲の〈西沖幸恵〉。
そして彼は幸せにする方法を考えつく――――
「僕よりもっと相応しい人にその好意が向くようにしたいんだ」
本当にそんなこと上手くいくのか!?
それで本当に幸せなのか!?
そもそも幸せにするってなんだ!?
・第2章
草壁・西沖の二人にそれぞれの相応しいと考える人物を近付けるところまでは進んだ夏休み前。君島のもとにさらに二人の女子、〈深町冴羅〉と〈深町凛紗〉の双子姉妹が別々にやってくる。
その目的は――――
「付き合ってほしいの!!」
「付き合ってほしいんです!!」
なぜこうなったのか!?
二人の本当の想いは!?
それを叶えるにはどうすれば良いのか!?
・第3章
文化祭に向け、君島と西沖は映像部として広報動画を撮影・編集することになっていた。
君島は西沖の劇への参加だけでも心配だったのだが……
深町と付き合おうとする別府!
ぼーっとする深町冴羅!
心配事が重なる中無事に文化祭を成功することはできるのか!?
・第4章
二年生は修学旅行と進路調査票の提出を控えていた。
期待と不安の間で揺れ動く中で、君島奏向は決意する――
「僕のこれまでの行動を二人に明かそうと思う」
二人は何を思い何をするのか!?
修学旅行がそこにもたらすものとは!?
彼ら彼女らの行く先は!?
・第5章
冬休みが過ぎ、受験に向けた勉強が始まる二年生の三学期。
そんな中、深町凛紗が行動を起こす――
君島の草津・西沖に対するこれまでの行動の調査!
映像部への入部!
全ては幸せのために!
――これは誰かが誰かを幸せにする物語。
ここでは毎日1話ずつ投稿してまいります。
作者ページの「僕(じゃない人)が幸せにします。(「小説家になろう」投稿済み全話版)」から全話読むこともできます!

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ
桜庭かなめ
恋愛
高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。
あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。
3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。
出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2024.8.2)
※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の加瀬桔梗のクラスには、宝来向日葵という女子生徒がいる。向日葵は男子生徒中心に人気が高く、学校一の美少女と言われることも。
しかし、桔梗はなぜか向日葵に1年生の秋頃から何度も舌打ちされたり、睨まれたりしていた。それでも、桔梗は自分のように花の名前である向日葵にちょっと興味を抱いていた。
ゴールデンウィーク目前のある日。桔梗はバイト中に男達にしつこく絡まれている向日葵を助ける。このことをきっかけに、桔梗は向日葵との関わりが増え、彼女との距離が少しずつ縮まっていく。そんな中で、向日葵は桔梗に可愛らしい笑顔を段々と見せていくように。
桔梗と向日葵。花の名を持つ男女2人が織りなす、温もりと甘味が少しずつ増してゆく学園ラブコメディ!
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしています。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?
みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。
普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。
「そうだ、弱味を聞き出そう」
弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。
「あたしの好きな人は、マーくん……」
幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。
よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

管理人さんといっしょ。
桜庭かなめ
恋愛
桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。
しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。
風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、
「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」
高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。
ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!
※特別編10が完結しました!(2024.6.21)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※続編がスタートしました!(2025.2.8)
※1日1話ずつ公開していく予定です。
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる