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05-2.職場のエレベーターで元同級生と
しおりを挟む「宮田今日飲み会行く?」
昼食から戻るとエレベーターホールに1つ上の
仲良い賢斗さんがいたので、
一緒にエレベーターを待っていた。
「賢斗さん行くなら行こうかなー」
「同期が佳蓮最近ノリ悪いんすよって言ってるよ」
「飲み会多すぎて肝臓もたないんですよ」
後ろからスニーカーの足音がする。
普段なら別に気にしないけど、
何か気になって振り返ると、
この前大学卒業後に久しぶりに会って
酔った勢いでやらかしてしまった龍矢が
スマホを弄りながら
こちらに向かって歩いてきている。
思わず凄い勢いで前に向き直したものだから
賢斗さんも後ろを振り返って怪訝な顔をする。
「どうかした?」
「えっ、いえ、何も」
タイミングよくエレベーターが到着する。
私たちの後に続いて龍矢も
スマホから目を離さないまま乗り込んでくる。
こちらには気づいていないみたいだ。
私は行き先ボタンの目の前に立って
ひたすら到着を待った。
数秒なのに途轍もなく長く感じる。
「11階です」
ドアが開いて、タバコと香水の匂いを残して
龍矢が降りていく。
「ここのフロアの奴みんな柄悪すぎない?」
賢斗さんが唐突に嫌な顔をする。
「今の奴めっちゃ金髪だったし、タバコくせーし」
「あっ、えっハハ、そうですねわかります」
別に悪い人じゃないんだけどな。
賢斗さんみたいに人のこと悪く言ったりしないし、
って何で私龍矢のこと庇ってんだろ…
"さっき会社の人といたから声かけなかったけど
髪切ったんだ、いいね"
大学ぶりのLINE、用も特にないからしてなかった。
"ありがと"
"休憩行くとき連絡してよ、用ある"
子供の頃から、こう、何か予告されて
呼び出されるのが苦手だった。
何を言われるのか気が気でないので、
仕事にも身が入らない。
昼休みに出たばかりだったので、
2時間くらい経った頃に、資料を1つ
まとめたところで龍矢に連絡を入れた。
この前偶然再会した、ビルの喫煙所で待ち合わせる。
「ごめん待たせた」
「いえいえ…」
電子タバコにカートリッジをセットして
スパスパやる。
「用って何?」
私が切り出すと、ポケットから何か取り出して
私に差し出す。
「忘れ物」
「あっ、ピアスなくしたと思ってたやつこれ!
ありがと~~」
ちょっと高かったものなのでホッとした。
「仕事中は電子なの」
私の手元に目をやる。
「うん、別に私法人営業だからお客様がーとか
関係ないけど、社内の人がね…嫌がるかなって」
「ふーん」
そう言ってなんの前触れもなく
私に向かって煙を吐く。
「うわっ!ちょっと…!」
めちゃくちゃヤニ臭いであろう右手で
私の手を引く。
「龍矢っ……」
降りてきたエレベーターに乗って、
龍矢は最上階のボタンを押す。
最上階行きは、途中で止まらないから。
「龍矢ッ…っん、っ」
めちゃくちゃ
タバコの味がする。
壁に押さえつけられて動けない。
出先の後輩から電話がかかってきてる。
舌を絡めたまま、私の携帯を奪って
着信を切られる。
「…佳蓮、集中してよ」
「や、無理…ッ戻らないと、っンッ」
私がそう言うと拗ねた顔をする。
「そんな顔してもだめ…っ」
息が上がってる。
職場のエレベーターでこれは刺激強すぎる。
「スーツの佳蓮に言われると
めちゃくちゃ興奮する」
最上階まで上がってドアが開くが
またすぐに閉められて今度は下に向かう。
これ以上できないけど、正直また龍矢としたい。
「佳蓮今日またうち来なよ…続き、しよ?」
「飲み会ある…」
「その後でもいいよ」
ギュッと抱きしめられて、ドアが開く。
私が降りるフロアだ。
「じゃあ…また夜連絡する」
軽く口角を上げてドアを閉める龍矢を見送った。
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