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【3】黒鬼の花嫁。
しおりを挟む俺の運命の花嫁。
黒鬼のたったひとりの花嫁。
代々いる黒鬼の、一代につき必ずひとりいる特別な花嫁。
それは人間かもしれないし、鬼かもしれない。どちらかは分からない。
でもどちらにせよ黒鬼の威圧や言霊が効かない特殊な存在である。
でも花嫁は自分で探しにいかないといけない。他鬼には分からないから。
そして探しに行くにはとりま……外に出ても大丈夫なくらい成長しなくちゃな。
「うんしょっ」
のそっ、のそりと立ち上がり、とぼとぼと歩き出す。かなり遅いが歩ける。足元をみる限り、確実に赤ん坊ではない。まぁ、鬼だからなー。
人間と鬼の混血ーー半鬼でもない限り、赤ん坊の鬼はいない。
とは言え半鬼は鬼ではない、鬼になれない半端者。しかし人間にもならない外れもの。黒鬼にとっては同胞には含めない紛い物ーーって、ちゃうちゃうちゃ――――――うっ!!!
「ちょ待てや――――――っ!!」
思わず誰もいない屋敷で絶叫した。
うぅ~~っ、ついつい黒鬼の本能解説に脳内を任せてしまったが、何してんの俺の脳内~~っ!黒鬼の本能~~~~っ!
「そゆーのやめ~~いっ!」
あのな!?そう言うのフラグだから!そしてそのせいで不遇な思いをしてきた半鬼だなんて……っ!あ、ぐぐっ!ダメだよそんなの~~っ!やだやだ、そんな不遇物語とか俺泣いちゃう~~っ!!
本能の中に潜む黒鬼が呆れたような顔をした気がするのだが。
でも一応聞け!ほら、お前も!
※二重人格ではありません。
俺、前世は儚い人生だったけども、割りと名家の子息であった。
ほぼ病床だったけども、名家であるがゆえに、父親のおぉぉぉ~~~~っ、ばっきゃろおぉぉぉ~~~~~~うっ!!!父親は愛人をっ!愛人を囲ってたのおおぉっっ!
そして愛人の子……異母弟がいたの~~っ!その異母弟がね、早くに母親亡くして、でも俺があんな病弱だったから跡取りとして育てられながらも家の連中には毛嫌いされつつも跡取りとして祭り上げられてて、俺が気が付いた時にはもう手遅れだったのぉ~~っ!
あんな悲劇は、再び招いてはならない!分かったか、黒鬼いぃぃ~~~~っ!!
クツクツと嗤う黒鬼の本能。ずっと退屈だった黒鬼の性がどこか浮き足だっている?
うん、まさかね。
……てなわけで、ひとり寂しくひとりツッコミ決めながらトコトコ歩いていたら~~、鏡見つけました――――――。
いやー、ひとりツッコミいいよね。ひとりっきりで寂しくて心細くても、ひとりツッコミさえあれば恐くなぁ~いっ!他にひとがいて見られた時めっちゃはずいけど!前世ではひとりツッコミ中に看護師さんが巡回に来てめっちゃはずかったけどねー!
でも今この屋敷には俺しかいない!それは分かる!だから安心だ!黒鬼の本能あっざまぁぁぁ――――――っす!
さぁ~てさて、長らくお待たせしました~!念願の主人公転生後の姿はどんなんだろな~!?ドッキドキのコーナー、来たァ――――――っ!みんな~~、お、ま、た、せっ!ずっと寝たきりで分からなかった俺の今生での容姿を、とくとご覧あれ!
「じゃ、じゃじゃあぁぁ――――――んっ!!」
ほう、ほほう?
今生の俺も見事な黒髪。しかし前世ではここまでのうる艶漆黒の髪ではなかったかも。
そして目は切れ長で金色。瞳孔は縦長で鋭い眼光。
肌は雪のように白く滑らか。
さらには黒鬼であることを示すように、頭からは黒く長い角がすっと伸びている。
一般の鬼はもっと小さめな角で、だいたいが灰色か白、薄茶。ここまでの黒で立派な角は、黒鬼しか存在しない。そして鬼たちは本能で俺が特別な黒鬼であると分かるのだ。
そして前世とは明らかに違う……いかにもなイケメンな顔立ち。
年齢は人間の10歳くらいだが、既に相当整った顔立ちであると判別できる。俺、どんだけイケメンならぬ、イケ鬼なのだ。言っておくがナルシーではないかなら?ここ、重要。しかしそれほどまでに俺の顔はイケ鬼であった。
それは黒鬼の本能も告げている。鬼の中でも特別な黒鬼は、ひときわ美しく、鬼であろうが人間であろうが、その魅惑の美しさに目を、心すらも奪われる。
それが黒鬼!KU・RO・O・NI!!
「イッエェェ――――――――イッ!!」
――――――なお、この美は孤高の証でもあるのだけどな。
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