2 / 7
俺五歳になる
しおりを挟む「さすが騎士団長のお子さんね。立派なオスになりそうだわ」
「これでペンドラゴン家も安泰ですわねぇ」
俺の目の前には色とりどりのドレスで着飾った巨乳が並んでいる。
下から見ると顔が見えないぞ!
今日は俺の五歳の誕生日。
その誕生日会なのだが、とっても盛大だ。
「アンディ、ご挨拶しなさい」
カーラに促され、俺は巨乳に頭を下げた。
アンディ・ペンドラゴン。それが今の俺の名前だ。
前世は名前負けしていたからな。長谷川竜太郎。どこの国会議員だって感じの厳つい名前だが、当の本人はいわゆる陰キャのひょろメガネだ。
五歳児らしい挨拶を終えると、子どもたちが集まってきた。
「庭に案内したらどうだ?」
トーマスが渋い声で言うけど、俺つい最近までこの人のおっぱい吸ってたんだよな……。
俺は巨乳を名残惜しみながら、子どもたちを連れて庭に出た。
この五年で分かったことがある。
まず、この世界は前とは違う世界であること。
魔法はないけど、騎士団なんてのがいて、女王様がいる。王様じゃない、女王様。
どうやらこの世界、政治はメスが、肉体労働はオスと役割分担が決まっているらしい。
なので王様はメスだ。金髪のこれまたものすごい巨乳の迫力美女だった。カーラが宰相だから、一度お忍びで屋敷に来たことがある。
俺を見て「将来が楽しみね。うちの娘の婿に欲しいくらいだわ」って言われたっけ。
それはともかく、トーマスは騎士団長で、カーラは宰相、女王様のお眼鏡にもかなった。俺、勝ち組。
それから分かったことは、俺たちの身体には尻尾が生えている。
うろこはないけど、蛇とも違う。ちょっとゴツゴツしてて骨っぽいんだけど、柔軟に動く。
普段はくるりと巻いてるが、伸ばすと床につくくらい。
髪の色と同じだから、俺の尻尾は赤い。
俺の知ってる人間とは違うんだが、○○人なんて呼び方はしない。だってみんな尻尾があるから分ける必要がないんだ。どこかに尻尾のない人間もいるかもしれないけれど尻尾があるのが普通だからな。
で、俺の予想では俺たちの種族はファンタジーで言うところの竜人だと睨んでいる。
なんせ俺の名前はペンドラゴンだし。前の名前だって竜太郎だし。
翼もないし火もはかないけどどう見てもこの尻尾は竜だと思うんだよな。
未だに神様的なもののお告げはないので、よくはわからないが、あながち間違いではないと思う。
それから一番大事なことは、どうやらこの世界ではオスが子どもを産むらしい。
さすがにどうやって? とは聞けないのでわからないが、この間も執事のセバスチャンが出産休暇に入った。
お相手は女中のメアリだ。メアリは若くて美人で巨乳なのに、なぜ老年にさしかかろうとするセバスチャンを選んだのかは、我が家最大の謎らしい。しかもこれで五人目。
普段は厳格で無表情なセバスチャンが、まんざらではない顔でお腹を撫でていた。なんか見てはいけないものを見てしまった気がした。
つまり、俺はいずれ子どもを産まなきゃいけないことになる。
正直、無理。
今だって俺の周りには可愛い女の子がたくさんで、これぞ異世界チーレム! って感じにみんな俺をちやほやしてくれるんだ。
けど、やっぱり俺は女の子を抱きたい!
前世で叶わなかった巨乳に顔を埋めて、腰を振りたいって思うのは、仕方ないことだと思うんだ。
女王様から婿に……なんて言われたけど、冗談じゃない。
ていうか今日の誕生日会にもその女王様の娘、つまりは王女様もいた。
「アンディ様! わたしがつくったクッキーですの!」
「アンディさま~。うちの職人につくらせたスカーフです~」
「アンディ様っ! 領地で取れたルビーの指輪をっ!」
「あらみなさん、アンディが困っていましてよ? さ、アンディこちらでお話しましょう?」
みんな同じ年頃なはずだよね? 身長はそんな変わらないから多分そのはず。
なのにぐいぐい来るし、その……おっぱいが当たってるんだけど! なんなの? この年でもおっぱいあるの? 早くない?
最後に俺のことを呼ぶ捨てにしているのが王女のミレーネ。くるくるした金髪で女王様に似ていて、尊大な態度、まだ十歳なのに迫力ある美人だ。腕にめっちゃおっぱい押し付けてきてる。
むにゅっとしていてドキドキはするんだけど、目が怖いんだよっ! もうギラギラしてるの。
そこは女王様とは似てないんだよな。
カーラもそうだけどこの世界の女の人ってみんな巨乳。当たり前のようにぶるんぶるん揺らしてるんだよ。
母乳も出ないのになんであんなに大きいの?
いや、おっぱいは母乳のためだけじゃないのは分かるけど。
あと尻尾。尻尾絡めてこないで。
生まれたときからあるにはあるけど、なんか尻がむずむずするからやめてほしい。
とにかく五歳から十歳くらいの女の子に取り囲まれて、身体におっぱい当てられて、尻尾絡めてこられる俺の身にもなってくれ。
もともと陰キャなんだよ、慣れてないんだよ。
異世界チーレムやっほーい! なんて思ってたけど、いざその立場になってみると、恐怖しかない。
なんせこの子たち、いずれ俺を妊娠させるんだよ?
正直みんなの目が怖すぎて見れない。
って誰? 俺の子どもちんこに触ろうとしてるのは!
絶対ミレーネだろ! 近いんだよ、距離がっ!
「悪いが、ちょっと……」
無理無理無理無理。
頭の中はすっごい焦ってるけれど、できる限り冷静に、ゆっくり彼女たちの腕から引き抜いて、一歩後ろに下がる。
トイレに行くふりをして、俺は庭から離れのほうへ向かった。
離れに住むのは我が家の使用人たちだ。
出産休暇中のセバスチャンのところにでも行こうかと思ったら、入り口にぽつんと子どもが座っていた。
「レイ? どうした?」
「坊ちゃまこそ、今日はお誕生日会なのに。なんで泣きそうな顔をしてるんですか? ブサイクに見えますよ?」
座っていたのはセバスチャンの子でレイ。僕の遊び相手のひとりだ。
五歳上だから今十歳のレイは俺にとってはお兄ちゃんみたいなものだ。
メアリに似てすっごい美形。真っ白い肌に淡い水色の髪。この辺りホント異世界って感じ。もちろん尻尾も水色で触ると冷たそう。
ただ、性格はどちらかというと父親………じゃなかった、ママのセバスチャンに似ている。
顔は無表情だし、言うことはキツイ。でも、実はスゴイ優しいってことは分かる。
今だって呆れた顔しながら、ポンポンって自分の隣を叩いて座れって言ってくれる。
レイのとなりに座ると、俺は膝にあごを乗せて地面を見つめた。
「だってみんなスゴイ怖いんだよっ」
「あぁ坊ちゃまオスとしての魅力がありますからね」
「はぁ……せっかくチーレムだと喜んだけど、思ってたのと違うっ」
「チーレム? あぁ坊ちゃま語ですね」
レイにはいろいろ話した。多分半分も信じてもらえていない。
それでも誰かに吐き出さないと辛い時期が、俺にもあったのだ。拙い言葉で説明するのを、レイは「へぇ……」「はぁ……」って感じで聞いてくれた。
驚くでもなく、蔑むでもなく。本当に聞くだけ。どっちかっていうと馬鹿なやつを見る目だったが、聞いてくれるだけで俺の精神は保てた気がする。
「そう。可愛い女の子に惚れられて、ウハウハのモテモテの予定だったんだ……。それなのに!」
「さっきまでモテモテだったんでしょう?」
「あれはセクハラだ! ちんこ触ってきたりして、どこのエロ親父だっ!」
「メスは求愛行動激しいですから仕方ありませんよ」
そうなのだ。
この世界の女、いやメスはとっても積極的。
カーラもモテモテだったトーマスを射止めるためにあの手この手で迫った上に、逃げられないよう外堀を埋めていったらしい。
詳しくは知らないし、聞きたくない。
まぁトーマスも幸せそうなのでいいんだけど、俺としては女の子には癒やしを求めているのであって、あんな肉食女子は願い下げなのだ。
俺は結婚するなら、おしとやかで、優しくて、俺を癒やしてくれる可愛らしい子がタイプなのだ。結婚するなら。
「ってなにしてるの? レイ」
「いえ、坊ちゃまの髪が乱れてましたので、編み直しております」
ああ。慌てて逃げてきたときに誰かに引っ張られたから。俺の赤い髪はトーマスみたいにサイドだけ伸ばしている。
いつもはトーマスが編んでくれるけど、指が太いからか器用なことは苦手なんだよな。
ちょっとしたことでほつれてくる。
レイはそれを手ぐしで梳いて、器用に編み込んでくれた。
レイの手はひんやりしていて気持ちがいい。
朝から支度や挨拶回り、女の子たちからのセクハラでスゴイ疲れていたみたいだ。俺はレイの膝でそのまま眠ってしまった。
尻尾を絡めながら。
11
あなたにおすすめの小説
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
『推しに転生したら、攻略対象が全員ヤンデレ化した件』
春夜夢
ファンタジー
「推しキャラが死ぬバッドエンドなんて認めない──だったら、私が推しになる!」
ゲーム好き女子高生の私が転生したのは、乙女ゲームの中の“推しキャラ”本人だった!
しかも、攻略対象たちがみんなルート無視で私に執着しはじめて……!?
「君が他の男を見るなんて、耐えられない」
「俺だけを見てくれなきゃ、壊れちゃうよ?」
推しキャラ(自分)への愛が暴走する、
ヤンデレ王子・俺様騎士・病み系幼なじみとの、危険すぎる恋愛バトルが今、始まる──!
👧主人公紹介
望月 ひより(もちづき ひより) / 転生後:ヒロイン「シエル=フェリシア」
・現代ではゲームオタクな平凡女子高生
・推しキャラの「シエル」に転生
・記憶保持型の転生で、攻略対象全員のヤンデレ化ルートを熟知している
・ただし、“自分が推される側”になることは想定外で、超戸惑い中
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる