きつく縛って、キスをして【2】

青森ほたる

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浣腸のお仕置きと鞭

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だらだらと涙がこぼれ落ちていく。

なにもない壁と向かい合って立つ、背中のほうからは、しゅぅっとやかんでお湯が沸くような音と、かちゃかちゃとプラスチックのぶつかる音がしていた。

激しい嗚咽がこみあげてきて、でも私はもうその場から動くことができずに立っていた。

こわい……。本当に、俊光様は最初からだってやり直しする。もうあの拘束台には戻りたくない。お灸だって……もう一生二度目はなくていい。

しばらくすると、ぺたん、と足元につるつるとした黒いシーツが敷かれたのが視界に入る。

「シーツの上に立て。顔はそっちをむいたままだ。両手は壁についていろ」

私は言われた通り黒いシーツの上に立って目の前の壁に手をつく。シーツはおそらく防水かなにかの効果のあるものなのだろう。

このまま浣腸を打たれるんだろうか。この体勢は嫌だ。すでにきゅっと下腹のあたりが痛くなった気がした。お腹が痛くなるのはこれからのはずなのに。

「今から熱湯浣腸を打つ。時間は私がいいというまでだ。わかったな?」

「は、はいっ……」と返事をした声はひっくりかえる。

やっぱりこのままここで打たれるんだ……。熱湯っていったって、どれくらい熱いのだろう。

「もう少し足を開け」
パチィンンッと太ももをはたかれた。

「ぃぃはいっ」

私が足をひらくとお尻の膨らみを撫でるようにゆっくりと手のひらが触れ、すぐに、ぐっと指先で尻たぶの割れ目を広げられる。

「ぅ……っ」

指先で蕾を縦になぞられ、ぐにぐにと押され、最終的にずぼっと指がナカに挿れられた。

浣腸の準備のためにほぐされていると分かっていても、ついきゅっと反応しそうになる自分が嫌だ。

蕾の入り口をほぐしていた俊光様の指がずるりと抜かれ、パシッパシッと軽く尻を打たれて「ひぃっ」と、小さな悲鳴が漏れた。


うしろで、ちゃぽっと、水音がする。

そして「自分で尻を持って思いきり開いていろ」と指示された。

ぐずぐずしたら余計に叱られる。自分で腫れた尻たぶを掴むと、じぃんと痛んだがすぐに掴んだまま横に開く。

冷たい空気に触れた蕾はせっかくほぐしてもらったのに緊張できゅっと締まるような心地がした。

「ぁっ」

浣腸器の先端がぎゅっと挿し入れられて異物を突っ込まれた鈍い痛みが襲う。次の瞬間、さぁっと蕾の中に液体が流し込まれた。

「ひぃぃっ……ぁっ熱っっぁぁあっぁぁっっっ!!!!!!!!!!」

一気に流し込まれた熱湯が、内壁を焼くような熱さで支配したのは一瞬だった。なぜなら、流し込まれた熱湯を私は叫び声をあげながら数秒と持たずに、放出してしまっていたからだ。

びしゃぁぁっと、熱いお湯は足元のシーツにこぼれ落ち、はねた水滴が足首にかかるその温度すら熱くて両足が跳ねた。

「ぁっ……ぁっっ……っ」

熱さが引いて一気に絶望感に頭が真っ白になる。

やってしまった。

やってしまった。

「とっ、俊光様……っ」

思わず振り返ろうとした後頭部をがっと掴まれて、おでこが勢いよく目の前の壁にぶつかる。
おでこの痛みよりも、これからが怖くて足が震えた。

頭を壁に押さえつけられたまま、パチィィィンッベチィィンッパシシィィンッとお尻に平手が落ちる。
「うぅぅっっっぅううっごめんなさぁいっっ、ちゃんと、我慢しますっごめんなさぃっ……」

「ケインを取ってこい」

そう指示されて「はいっ」と、私は道具のかけられた壁へとすっ飛んでいった。

細長い棒状の鞭、ケインを手に戻って来た私は、ちらっと俊光様の表情を伺おうとしたが、ケインを手にした俊光様はすぐに私の肩を押してまた無地の壁と向かい合わせに立たされた。

「自分で尻を持って思いきり開く」

「はぃっ」

尻を持って開くと、先ほど浣腸器を突っ込まれたときと同じ体勢になる。

そこへ、ヒュッバシィィィッ!!といきなり、大きく広げたお尻の奥の蕾に硬いケインが叩きつけられる。

「――――っっっっ!!!!!」

息が詰まって声も出ないほどの激痛が全身を走り抜ける。お尻の膨らみを叩かれるのと全然違う。反射的に両足は爪先立ちになり、両手はお尻からすり抜けて、目の前の壁に倒れ込むような体勢になっていた。

「これをあと三回だ。お尻を開いて立て」


ざっと顔から血の気がひく。壁にへばりつくような格好のまま、無意識に首を振っている自分がいた。

無理っっ。

叩かれた蕾はまだビリビリとした痛みに支配されている。また同じのなんて無理……。

「物覚えが悪いな。さっき愚図って熱湯浣腸を打たれることになったのを忘れたのか。五秒以内に準備をしろ。遅れたらペナルティを増やす。5、4、3、2、1」

「っっっ……!!!」

俊光様は高速でカウントをとるので、私は元の体勢に戻らざるを得ない。

ぴと、とお尻の割れ目にそって、ケインが縦にあてがわれて体が震える。

バシィィッッツツ!!!バシィィッッツツ!!!バシィィッッツツ!!!!
「ひっっぃっっっっ………………ぃぃっっっぁあっぁぁぁぁっぁ!!!!!!!!!」

間隔をあけずに三回。裂かれるみたいな痛みに悶えながら、気がついた時にはしゃがみこんでいた。

「本番はこれからだろ」

俊光様がしゃがみこんだままの私のお尻に、無理やり浣腸器を突き挿し、熱湯が流し込まれる。

「ぁああぁあつぁあああつ熱ぃぃっっっ!!!!!!」

私の叫び声に一切構わず熱湯を打たれ、最後にぎゅぅっと硬いものでアナルに栓をされたのがわかる。

「千尋、アナルプラグをちゃんと自分で押さえていろ。次に許可なくだしたら、アナルプラグの代わりにショウガを突っ込んで栓をするからな」

「ひぃはぃいっっっ」

熱い……っ 痛ぃっ…… 苦しいっ……

視界が歪んでいる。もう何分経った?

打たれた熱湯は内壁を焼くような刺激を与え続け、おそらく混ぜられた薬剤のグリセリンが腸を刺激して腹痛を引き起こす。体は熱いのに、だらだらと冷たい汗がながれていく。

「としみつさまぁ……っっもうぅっゆるしてくださぁぃ……」

しゃがみこんだまま、立ち上がることも振り返ることもできず右手でアナルプラグを押し込んだ格好の私は、壁に向かって声をしぼりだす。

「まだダメだ」

飛んでくる声は冷たい。

「ぅぅ……っっ」

ぼろぼろと涙が汗と混じって頬を濡らす。ぎゅうぅっとお腹が激しく絞られるように痛みだし、呼吸が浅くなる。

「っ……ぁっ……むりぃっ……もうっもうっ」
「まだ我慢しろ」

「むりっむりっ、が、まん、できなぁぃっ……」

「千尋」
声のトーンが優しくなる。私は、期待に目を見開く。

「私を見て、それから今回の悪かったこと、反省の言葉を聞こうか」
「ぅ、は、ぃ……っ!」

苦しいお腹をかばうようにしながらじりじりと振り返り、腕を組んで立つ俊光様を見上げる。

「としみつさまにっないしょでっ、携帯のでんげんきったこと、かっ、かってに、えすえむパーティにっ、さんかしたこと……っ……お酒、いっぱい、のんだこと……っ酔っ払って、昔の知り合いのひとの……おぅちにいったこと……っぜんぶ、ぜんぶごめんなさぃっ。あとっ、すなおに……っおしおき受けられなかったことも……っ」



「はぁ。今回は、ずいぶん悪い子だったな」

俊光様が呆れたように首をふる。

「だっって、さみしかったんですっっっ。ずーーっと、っはなればなれで、連絡もっ、思うように、つかなくてっ。篤志じゃなくて、私がいっしょにっ、いきたかったぁ」

「若手に経験を積ませるのも大事なことだろう。それにこれからも海外出張くらい何度でもあるぞ。千尋はその度に悪い子になるのか?」
「ならないぃっですっっ」

もうこんなお尻を叩かれるだけじゃ済まなくなるレベルのお仕置きは二度とごめんだ。

「じゃあこれからはどうする?」

「これからはっ、ずっと、おうちで、としみつさまがっ、かえってくるのをっまってます」

俊光様はじっと私を見下ろしていた。そして、やっと……

「よし、これでお仕置きを終わりにしてやる」

と、組んでいた腕をほどいて言った。

「ぃいい、もうっ、うごけなぃ……ですぅっ……」

私はアナルプラグはぎゅっと押し込んだまま、べたっと床に頬をつける。

「べつに、そこに粗相をしても構わない。私が全部きれいにしてやる」
「そん、なの、いやぁっ……ですっ!!」
「仕方がないな」

私は素早く抱きかかえられ、このお仕置き部屋にある専用のトイレまで運ばれていった。
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