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俺、犬と結婚します
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その後、渚はすぐに職場に復帰したらしい。
心配だったけど、同族企業だからそこまで風当たりも無かったみたいだ。
今までの仕事の穴は、二人の弟さんで埋めてたとか……何だか申し訳なかった。
俺は相変わらず育児休暇中。
子供達を寝かせた後、毎晩電話して、今まで話せなかった分を取り戻すみたいに沢山のことを渚と話し合った。
住む場所のこと、挨拶と両親顔合わせの日程、どこで保育園を探すかと、俺の復職計画、お袋のこと……。
今まであれだけ拗れていた割には、俺たちの結婚計画はたいした議論もなく着々と固まった。
家は、引っ越したばっかりだけど、そこに渚も入るとなると手狭なので、やっぱり犬塚家のマンションの一室を貸して貰うことにした。
二人が保育園に通いだして、同時に熱出したりした時に預ける事を考えると、両親がどっちも近い方がいいし、職住近接がやっぱり望ましかったので。
そういや職場にも結婚の報告をしたんだけど、俺のことは出産も含めやっぱり結構な噂になってるみたいだった。俺がオメガだってこと自体知らない同僚も結構いたもんな。
復帰しづれぇなぁと思うけどまあ仕方ない。その内に菓子折り持って大学に挨拶に行こう。
まあそんな感じで順調ではあったんだけど、ーー話し合いが進んで、お互いの両親への挨拶を始めると、今度はなかなかに波乱と緊張の連続だった。
いや、反対されたとかそんな訳じゃねぇんだけど……。
まず犬塚さんがウチに来てくれたのは良かったんだが、いきなりお袋に土下座始めちまってさ。
突然目の覚めるような金髪のハンサムがやってきたと思ったら、唐突にフローリングに頭擦り付けて「順番が逆で本当に申し訳ないけれど、息子さんをください」みたいなことやり始めちまったもんだから、お袋も目が点だし、やめさせるの大変だった。
俺はもうすぐ35のオッサンだし、そもそもこっちが勝手に産んだのであって渚は一ミリも悪く無ぇじゃん。
渚はちょっと不安になる程に根が真面目なんだなーと改めて思ったよ。
そして鳩羽家側の挨拶を済ませた後は、今度は俺が犬塚さん側に挨拶に行く番で。
こっちはこっちで何故だか一族総出の大歓迎パーティーが用意されてたのが俺的には驚愕だった。
むしろ俺は、大事な息子を引きこもりにしたり、勝手に子供二人も産んでみたり、殆ど殺される覚悟で行ったんだ。それこそ渚ばりに土下座でもしようかって思ってたから。
ところが逆におめでたいムードで、恐縮しつつも、出だしはポカーンとなった。
マンションの壁をぶち抜いて繋いだ広大過ぎるリビングに、可能な限り全員、人身人面で集まった犬塚一族に歓迎されながら、すっかり圧倒されて……。
美人で品の良い癒し系のお母さんも、渚を年取らせたみたいな優しそうなお父さんも、俺や連れてった子供達を温かく迎えてくれて、突然孫が増えたにも関わらず大喜びで、凄ぇ有難かった。
それと、犬塚さんの真面目な方の弟さん、いかにも「家長」て感じの厳格なお祖父さん、洋楽好きらしい夏美さんのお父さんにあたる犬塚さんの叔父さん、他にも親戚複数人とその家族がウワーッと出てきて、しかも全員顔が似てるもんだから、主要人物以外はとても一発で覚えられる気がしなくてさ。
そうそう、渚をキリッとさせたような顔の、革ジャン着たパンクな感じの美青年に突然、「あはっ、美人さん久しぶりだねー!」なんて言われて、その人だけは直人さんだと分かったくらいかな。
あと、綺麗で活発そうな彼の奥さんは、やっぱり橋で会ったあの飼い主の女性で、「あらあら!」と驚かれた。
その奥さんーー恵《めぐみ》さんだけは普通の人間で、「大変だけど頑張ってね! なにか困ったことがあったら相談して!」と励まされて、連絡先を貰えた。
獣人ハーフの子育ての先輩だし、これから気軽に相談できる相手ができて、それは凄ぇ心強かったなー。
そうそう、それから夏美さんは……来ていなかった。
聞いた感じだと、まだ渚と顔合わせ辛くて、今回も自粛したらしい。式の出席ももしかすると、難しいかも……って話だった。
ある意味彼女がいなかったら俺たち再会することもなかったかもしれないし、何というか……複雑な気持ちだ。
いつか、わだかまりなく会える日が来ると良いんだけどな。岬と航も彼女によく懐いてたし……。
そして夕方、賑やかな歓迎会が終わり、俺が渚に送られながら子供達連れてお暇しようとした時、お母さんに呼び止められたんだ。
「渚が引きこもりやめてから、一度もちゃんと二人で会えていないんでしょう。式場探しとか指輪の用意とか色々あるでしょうから、今度ウチで子供達を預かるわ。新婚旅行の時も預かるんだし、今から少しずつ慣らしてあげないとね」
ーーそんな優しい提案に、とんでもないと俺は遠慮したんだけど、渚に、獣人は一族みんなで協力して子育てするんだよ、とやんわり説得されてお言葉に甘えることになった。
確かに、夏美さんも秀人くんの面倒みたりしてたけど……。普通なら未婚の女性が従兄弟の子を預かるとかあんまり無ぇもんな。
本当に良いのかなって思ったけど、結局、俺と渚はその日から毎週日曜、数時間ずつ犬塚家に子供を預けて結婚の具体的な準備をすることになった。
……それにしても新婚旅行なんて、行く気すら全く無かったけどなぁ。
赤ちゃん放って遊びに行くなんて、と世の中の人には叩かれそうだけど、どうやら獣人の一族ではちっちゃい内から預けあって同世代の子供をみんな兄弟みたいに育てるの、ごく普通のことらしい。
俺は物心ついた時から親戚全然居なかったし、こういうの、慣れねぇけど……純粋に嬉しくて有難かった。
いつか、俺も恩返し出来ると良いんだけどな……。
そしてーー次の週から、子供二人を少しずつ犬塚家に慣らしていきながら、俺たちは結婚へ向けたタスク・リストを一つ一つこなし始めた。
まず最初に実行したのは、蛇の目さんのいるBLネット池袋に寄って、結婚報告をすること。
成婚料取られるシステムの会社じゃねぇけど、縁結びの神だから一応な。
心配だったけど、同族企業だからそこまで風当たりも無かったみたいだ。
今までの仕事の穴は、二人の弟さんで埋めてたとか……何だか申し訳なかった。
俺は相変わらず育児休暇中。
子供達を寝かせた後、毎晩電話して、今まで話せなかった分を取り戻すみたいに沢山のことを渚と話し合った。
住む場所のこと、挨拶と両親顔合わせの日程、どこで保育園を探すかと、俺の復職計画、お袋のこと……。
今まであれだけ拗れていた割には、俺たちの結婚計画はたいした議論もなく着々と固まった。
家は、引っ越したばっかりだけど、そこに渚も入るとなると手狭なので、やっぱり犬塚家のマンションの一室を貸して貰うことにした。
二人が保育園に通いだして、同時に熱出したりした時に預ける事を考えると、両親がどっちも近い方がいいし、職住近接がやっぱり望ましかったので。
そういや職場にも結婚の報告をしたんだけど、俺のことは出産も含めやっぱり結構な噂になってるみたいだった。俺がオメガだってこと自体知らない同僚も結構いたもんな。
復帰しづれぇなぁと思うけどまあ仕方ない。その内に菓子折り持って大学に挨拶に行こう。
まあそんな感じで順調ではあったんだけど、ーー話し合いが進んで、お互いの両親への挨拶を始めると、今度はなかなかに波乱と緊張の連続だった。
いや、反対されたとかそんな訳じゃねぇんだけど……。
まず犬塚さんがウチに来てくれたのは良かったんだが、いきなりお袋に土下座始めちまってさ。
突然目の覚めるような金髪のハンサムがやってきたと思ったら、唐突にフローリングに頭擦り付けて「順番が逆で本当に申し訳ないけれど、息子さんをください」みたいなことやり始めちまったもんだから、お袋も目が点だし、やめさせるの大変だった。
俺はもうすぐ35のオッサンだし、そもそもこっちが勝手に産んだのであって渚は一ミリも悪く無ぇじゃん。
渚はちょっと不安になる程に根が真面目なんだなーと改めて思ったよ。
そして鳩羽家側の挨拶を済ませた後は、今度は俺が犬塚さん側に挨拶に行く番で。
こっちはこっちで何故だか一族総出の大歓迎パーティーが用意されてたのが俺的には驚愕だった。
むしろ俺は、大事な息子を引きこもりにしたり、勝手に子供二人も産んでみたり、殆ど殺される覚悟で行ったんだ。それこそ渚ばりに土下座でもしようかって思ってたから。
ところが逆におめでたいムードで、恐縮しつつも、出だしはポカーンとなった。
マンションの壁をぶち抜いて繋いだ広大過ぎるリビングに、可能な限り全員、人身人面で集まった犬塚一族に歓迎されながら、すっかり圧倒されて……。
美人で品の良い癒し系のお母さんも、渚を年取らせたみたいな優しそうなお父さんも、俺や連れてった子供達を温かく迎えてくれて、突然孫が増えたにも関わらず大喜びで、凄ぇ有難かった。
それと、犬塚さんの真面目な方の弟さん、いかにも「家長」て感じの厳格なお祖父さん、洋楽好きらしい夏美さんのお父さんにあたる犬塚さんの叔父さん、他にも親戚複数人とその家族がウワーッと出てきて、しかも全員顔が似てるもんだから、主要人物以外はとても一発で覚えられる気がしなくてさ。
そうそう、渚をキリッとさせたような顔の、革ジャン着たパンクな感じの美青年に突然、「あはっ、美人さん久しぶりだねー!」なんて言われて、その人だけは直人さんだと分かったくらいかな。
あと、綺麗で活発そうな彼の奥さんは、やっぱり橋で会ったあの飼い主の女性で、「あらあら!」と驚かれた。
その奥さんーー恵《めぐみ》さんだけは普通の人間で、「大変だけど頑張ってね! なにか困ったことがあったら相談して!」と励まされて、連絡先を貰えた。
獣人ハーフの子育ての先輩だし、これから気軽に相談できる相手ができて、それは凄ぇ心強かったなー。
そうそう、それから夏美さんは……来ていなかった。
聞いた感じだと、まだ渚と顔合わせ辛くて、今回も自粛したらしい。式の出席ももしかすると、難しいかも……って話だった。
ある意味彼女がいなかったら俺たち再会することもなかったかもしれないし、何というか……複雑な気持ちだ。
いつか、わだかまりなく会える日が来ると良いんだけどな。岬と航も彼女によく懐いてたし……。
そして夕方、賑やかな歓迎会が終わり、俺が渚に送られながら子供達連れてお暇しようとした時、お母さんに呼び止められたんだ。
「渚が引きこもりやめてから、一度もちゃんと二人で会えていないんでしょう。式場探しとか指輪の用意とか色々あるでしょうから、今度ウチで子供達を預かるわ。新婚旅行の時も預かるんだし、今から少しずつ慣らしてあげないとね」
ーーそんな優しい提案に、とんでもないと俺は遠慮したんだけど、渚に、獣人は一族みんなで協力して子育てするんだよ、とやんわり説得されてお言葉に甘えることになった。
確かに、夏美さんも秀人くんの面倒みたりしてたけど……。普通なら未婚の女性が従兄弟の子を預かるとかあんまり無ぇもんな。
本当に良いのかなって思ったけど、結局、俺と渚はその日から毎週日曜、数時間ずつ犬塚家に子供を預けて結婚の具体的な準備をすることになった。
……それにしても新婚旅行なんて、行く気すら全く無かったけどなぁ。
赤ちゃん放って遊びに行くなんて、と世の中の人には叩かれそうだけど、どうやら獣人の一族ではちっちゃい内から預けあって同世代の子供をみんな兄弟みたいに育てるの、ごく普通のことらしい。
俺は物心ついた時から親戚全然居なかったし、こういうの、慣れねぇけど……純粋に嬉しくて有難かった。
いつか、俺も恩返し出来ると良いんだけどな……。
そしてーー次の週から、子供二人を少しずつ犬塚家に慣らしていきながら、俺たちは結婚へ向けたタスク・リストを一つ一つこなし始めた。
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成婚料取られるシステムの会社じゃねぇけど、縁結びの神だから一応な。
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