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三章 廻転
十九.風
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一五五五年(天文二十四年)。
寒さも厳しい二月。
一日、暇を貰った翔隆(二十歳)は一人、《霊術》の修行をしていた。
〈…風は操れないのか…?〉
幾らどう頑張っても、風の《力》だけが扱えないのだ。
《念動力》や《対話》などは出来ても、不知火一族の者に見られる風と水の《力》の内、一つが使えない…。
何日も試みてはいるのだが、扱える気配すらないのである。
瞬間的になら出せる。
ならば扱える筈なのだがーーー。
〈何故だ?! 手応えすらないなんて…〉
悩んでいると、嵩美(十四歳)が握り飯の差し入れを持って来てくれた。
「翔隆様、少し休まれてはいかがです?」
「……うむ…」
翔隆は溜め息を吐いて岩に腰掛け、嵩美の差し出す握り飯を食う。
それを見つめ、嵩美は隣りに座る。
「…翔隆様は欲張りなのですね」
「…そうか?」
「ええ。雷撃も雨も炎も使えるというのに、この上風まで欲するなんて、贅沢ですよ」
嵩美が微苦笑して言うと、翔隆は真顔で考え込む。
言われてみれば、今まで万能な拓須を目指していたような気がする…。
常に師匠を目指し、追い付こうと必死になっていたのだ…と、気が付いた。
〈…操れないという事は、素質がない、という事なのかもしれん…〉
そうなると、諦めるより外に無い。
なんだか悔しいが、仕方がないのだろう。
そう考え握り飯を食べ終えると、翔隆は水を飲んで嵩美を見る。
「そうだな…。欲張りだったのやもしれん。取り敢えずは諦めるが…………ついでだ。手合わせでもしようか?」
翔隆は笑って嵩美に言った。
すると嵩美はクスッと微笑して立ち上がる。
「ええ、そのつもりで参りました。着物も、捨てる予定の物を着てきましたしね」
「…そうか。では、やるか!」
翔隆は立ち上がって少し離れ、印を結んだ。
すると嵩美は紅蓮の炎を巻き上げて、翔隆に放つ。
翔隆も、炎の盾でそれを弾いた。
炎と炎の霊術戦を、二人は楽しむようにしていた…。
諦める…と言いながら、翔隆はその後も挑戦しては悩んでいた。
元々、不知火一族が使える霊術は《水》と《風》…。
《火》と《大地》は狭霧一族だ。
拓須が教え込んだから、使えるのは当たり前ーーーそう考えていた。
だからこそ、諦めたくない…。
拓須に〝良い弟子〟だと思われたかったのもあるし、やはり拓須のようになりたいのも事実。
翔隆は出来る事を信じて、訓練を続けていた。
そんな事を繰り返していくと、少しずつ…風の方が諦めるかのように少しずつ、使えるようにはなっていた。
寒さも厳しい二月。
一日、暇を貰った翔隆(二十歳)は一人、《霊術》の修行をしていた。
〈…風は操れないのか…?〉
幾らどう頑張っても、風の《力》だけが扱えないのだ。
《念動力》や《対話》などは出来ても、不知火一族の者に見られる風と水の《力》の内、一つが使えない…。
何日も試みてはいるのだが、扱える気配すらないのである。
瞬間的になら出せる。
ならば扱える筈なのだがーーー。
〈何故だ?! 手応えすらないなんて…〉
悩んでいると、嵩美(十四歳)が握り飯の差し入れを持って来てくれた。
「翔隆様、少し休まれてはいかがです?」
「……うむ…」
翔隆は溜め息を吐いて岩に腰掛け、嵩美の差し出す握り飯を食う。
それを見つめ、嵩美は隣りに座る。
「…翔隆様は欲張りなのですね」
「…そうか?」
「ええ。雷撃も雨も炎も使えるというのに、この上風まで欲するなんて、贅沢ですよ」
嵩美が微苦笑して言うと、翔隆は真顔で考え込む。
言われてみれば、今まで万能な拓須を目指していたような気がする…。
常に師匠を目指し、追い付こうと必死になっていたのだ…と、気が付いた。
〈…操れないという事は、素質がない、という事なのかもしれん…〉
そうなると、諦めるより外に無い。
なんだか悔しいが、仕方がないのだろう。
そう考え握り飯を食べ終えると、翔隆は水を飲んで嵩美を見る。
「そうだな…。欲張りだったのやもしれん。取り敢えずは諦めるが…………ついでだ。手合わせでもしようか?」
翔隆は笑って嵩美に言った。
すると嵩美はクスッと微笑して立ち上がる。
「ええ、そのつもりで参りました。着物も、捨てる予定の物を着てきましたしね」
「…そうか。では、やるか!」
翔隆は立ち上がって少し離れ、印を結んだ。
すると嵩美は紅蓮の炎を巻き上げて、翔隆に放つ。
翔隆も、炎の盾でそれを弾いた。
炎と炎の霊術戦を、二人は楽しむようにしていた…。
諦める…と言いながら、翔隆はその後も挑戦しては悩んでいた。
元々、不知火一族が使える霊術は《水》と《風》…。
《火》と《大地》は狭霧一族だ。
拓須が教え込んだから、使えるのは当たり前ーーーそう考えていた。
だからこそ、諦めたくない…。
拓須に〝良い弟子〟だと思われたかったのもあるし、やはり拓須のようになりたいのも事実。
翔隆は出来る事を信じて、訓練を続けていた。
そんな事を繰り返していくと、少しずつ…風の方が諦めるかのように少しずつ、使えるようにはなっていた。
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