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その男、初恋泥棒につき
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しおりを挟む(アメリアに素敵な出逢い、だと?
彼女がそれを望んでいるというのか?
…………このままではまずい。
俺の! 天使が! 何処の馬の骨ともわからない他の男に奪われるなんてことがあってはいけない!
万が一、否、億が一、そんなことが起きれば、俺はそいつを丁寧に切り刻んだ後、燃えたぎる炎の中に投げ入れてしまう。
だが、そんな血に汚れた手で純白の天使に触れるなんて、たとえ大天使アメリア様、神様が赦しても俺は自分を許せない……!
嗚呼、でも心配しないで、愛しのアメリア。
君を置いてはいかないよ。
もしそうなったら、君を殺して、俺も共に逝こう。
たとえ天国でも、俺たちならうまくやっていけるさ。
大丈夫。死ぬのが嫌というなら、俺の手を切り落としてしまおう。
君を抱き締める腕がなくなるのは正直辛いが、君から抱きついてもらえばいい。うん、それはそれで最高だ。むしろそっちの方がいいのでは……。
……ゴホン、しかし、それは最悪の場合だ。
そんな未来、今から俺が壊してみせるとも。
待っていておくれ、最愛のアメリア。
美しい瞳に浮かぶ涙も宝石のようにきっと綺麗なのだろうけれど、君を悲しませることはしないよ。
他の男なんて目に入らないぐらい、俺が君を愛するから。
もしそれでも君が他の男に目を奪われるようなら、その愛らしい瞳をくり抜いて食べてしまおう。
安心しておくれ、その時は俺が君の瞳になるよ。
そのままどこにも行かないように閉じこめて、二人きりで幸せに暮らそう。
だから、アメリア、まずははじめましてから始めよう。
今日こそ、君に認知してもらうぞ。
君にはじめましてと言ってもらえたなら、今日という日は記念日だ。国民の祝日にしてもらえないか、皇帝陛下に掛け合ってみることにしよう。
……嗚呼、兎にも角にも、今は君の危険を排除することが先決だ。
こうしちゃいられない、君との眩い未来はこのルーカス・フォードが救ってみせる……!)
アメリアと顔も知らない誰かの“素敵な出逢い”を阻止するべく、目に光を取り戻したルーカスはロングコートを翻し、足早に屋敷の前を立ち去った。
今日こそは彼女の知り合いにランクアップするのだと、息巻いていたルーカス。
初恋を拗らせに拗らせた男が行き着いた先は、彼女を影から見守るストーカーだった。
好きな人にどうアプローチしていいのか、わからない。
常人の皮を被った、救いようのない狂人である。
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