カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

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四章 アイ参上!

46話 椎葉愛参上!

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「風斗さん。クラゲにやられた怪我は大丈夫?」

 昨日の海水浴場にダンジョンが現れた事件の後僕達はアイにお礼を言って別れ、僕と風斗さんは病院で軽く検査を受けた。
 僕はいつも通り怪我なく治療の必要がなかったが、風斗さんは入院が必要な程ではなかったが針で刺されたような傷が何箇所もあったらしい。

「手当てもしたし仕事に支障はない。それにアイとお前が無事だっただけで俺はいいさ」

 彼は初対面の時の冷徹な態度からは考えられないような温かい言葉をくれる。田所さんが言った根は優しいというのがしみじみと感じられる。

「それにしてもお前が来てから珍しいことばかり起こるな」
「そうなの? 前のDOを知らないからいまいち分からないけど」

 DOに関しては仕事内容や配信での姿は知っていたが、それ以外に関しては名簿に載っているDO所属の人の名前すらしっかり見ていなかった。

「エックスだったりキュリアだったり。昨日のように偶然手練れのダンジョン配信者が近くにいたりとかだな」
「確かにそう考えてみると珍しいことだらけだね」

 少なくとも自分が知っている範囲では、エックスやキュリアのようなランストのシステムを盗み出して悪用する事件なんて聞いたことがない。

「おはようございます生人さん、風斗さん」
「おっはー二人とも」

 部屋から峰山さんと田所さんが出てきて俺達が今いる待機室に入ってくる。

「こんな朝早くに呼び出して指揮官は何考えてるんだろうね?」

 田所さんが欠伸をしながら空いている椅子に深々と座る。一方峰山さんは彼とは違い丁寧に、上品に座り姿勢も真っ直ぐだ。

「田所先輩。今から指揮官から話があるんですよ? 寧々を見習ってもう少し姿勢を正してください」
「えぇ~まだ来てないからいいじゃん」

 ガタガタと椅子を揺らすこの場で最年長の彼。一方この場最年少の峰山さんが冷ややかな目で彼を見ているような感じがするのは気のせいだろうか?

「こういうところがなければこの人は本当に尊敬できるんですけどね……」

 峰山さんの瞳に宿っていた冷ややかなものは僕の見間違いではなく、彼女は心底呆れた様子でもはや彼を見ていない。

「まぁ指揮官が来るまで楽な姿勢でだらけさせてよ」
「誰が来るまでだって?」

 入り口の方から低い声が聞こえてきて、父さんが待機室に入ってくる。後ろには見慣れない茶髪の女の子を連れていた。

「今の聞かなかったことに……それよりその子誰?」

 僕だけでなく他の三人もその女の子のことなど知らず、ここに連れてきたことに多少の困惑を抱く。
 そんな中僕はふと彼女の顔にどこかで見たような気がしてくる。最近会ったような気がするのだ。
 
「あ、生人くん久しぶりだね」

 彼女は僕と目が合うなりこちらに手を振ってくる。

「なになに? 生人ちゃんあんな可愛い子と知り合いだったの? 寧々ちゃんもいるのに贅沢だねぇ~」
「いや知り合いじゃな……あれ? もしかして昨日のお姉さん?」

 昨日とは違い水着姿ではなく髪型を変えていたので分かりにくかったが、その声と顔は昨日僕を岩陰に引き込んだ彼女のものだ。

「あぁ……昨日この子が開いたライブに生人も行ってたからそこで会ったのか」
「うん……え? この子が開いた?」

 僕は父さんの発言のおかしい一箇所に反応する。
 まるで目の前にいる彼女がアイとでも言いたいようなその言動に首を傾げる。
 
「あーやっぱりメイク落としてウィッグ外してると気づかないものなのね……」

 彼女はバッグからピンク色のウィッグを取り出し頭に被る。

「あっ!」

 僕と峰山さんと風斗さん。三人同時にあることに気づき声を上げる。
 ウィッグを被ろうとしている最中に気づいたのだが、彼女の顔と声はどこかアイに似ていた。そしてあのウィッグの色合い。それは昨日アイがライブの時に着けていたものと酷似している。

「椎葉愛こと、みんなのアイドルのアイでーす! 今日からDOに入ることになったので、みんなよろしくね!」

 ウィッグをつけ終わるなりスイッチを入れたかのように態度や振る舞いを切り替える。あまりの変わりように僕達は呆気に取られてしまう。

「あれ? 反応悪いな……?」

 またスイッチが切り替わるように先程までの態度に戻り、僕達の反応を訝しむ。

「お前の変わりように驚いているんだよ。俺から説明する。
 最近キュリアなどの件もあって人員不足が危惧されて、それで彼女にアプローチをかけて入ってもらうことになったんだ。そういうわけでみんなよろしく頼む」

 父さんは椎葉さんを下がらせて代わりに説明してくれる。
 それについて僕含めみんな一応理解はできたものの、驚きが大きく椎葉さんが話した時と反応はあまり変わらない。

「もしかしてこれアタシ歓迎されてない感じ?」

 言いたいことがありすぎて逆に何も言えなくなっている僕達を見て、椎葉さんは気まずそうにしながら不安げな表情を浮かべる。

「いやそんなことはないよ! 寧ろ仲間が増えて僕達は嬉しいよ! でも何というか嬉しさより驚きの方が勝ってるって感じで……」
「なんだ良かったぁ。あまり良く思われてないのかと思って心配しちゃったよ」

 彼女は明るい笑顔を見せる。ライブに見せた時のものとはまた違ったリアルなものだ。

「それじゃあ改めてよろしくお願いね。生人くん。寧々ちゃん。田所さん。真太郎さん」

 彼女は僕達に一礼する。その後父さんは仕事に戻り、残された僕達は各々自己紹介したりここについて説明してあげたりする。

「何か風斗ちゃん様子変だけどどうかしたの?」

 その途中無口な風斗さんをおかしいと思ったのか、田所さんが肩をツンツンとつつきながら声をかける。

「べ、別に何でもないですよ」

 当の本人は何でもないと否定するが、明らかにその様子はいつもと違いどこかおかしい。
 普段ならこんな若い子が危険なDOの仕事に来るのは反対だとか、僕の時のように小言でも言いそうなのに彼女から目を逸らして何も言わない。

「目を逸らさないでくださいよ真太郎さん」

 椎葉さんはそんな彼の眼前にグイッと顔を持っていき、可愛げな表情を彼の瞳に映させる。
 
「……しいから離れてくれ」

 風斗さんは顔を少し赤くし、もごもごとギリギリ聞こえないくらいの声で何か話す。

「え? ごめんもう一度言ってくれるかな?」

 彼の近くにいた椎葉さんもその言葉を上手く聞き取れなかったようで、更に顔を近づける。

「恥ずかしいから離れてくれって言ったんだよ!」

 彼は右手で椎葉さんの肩を掴んで自分から引き離す。恥ずかしそうにしながら、できる限り赤くなった顔を見られないようもう一方の手で隠す。
 
「あれあれどうしたの風斗ちゃん? もしかしてタイプな子だった?」

 僕と峰山さんは彼が推しのアイドルを目の前にしてあの反応をしてしまったのだろうと察することができたが、昨日の彼の必死にアイを応援する姿を見ていない田所さんはどういうことなのか分かっていないようだ。
 僕は田所さんに彼の昨日の様子も踏まえ、彼女の大ファンだと言うことを伝える。

「なにそれ初耳なんだけど」

 彼の意外な趣味に田所さんは珍しく呆気に取られ軽口を言えなくなる。

「でもDOにいる間はアイじゃなくて椎葉愛としているつもりだから、そんな気張らなくてもいいよ」

 恥ずかしがってる風斗さんと驚きの連続に言葉が出なくなっている田所さんに宥めるように言う。

「でも椎葉さん。DOに入ったらライブの練習とかどうするの?」

 そんな中僕はふと頭に浮かんだ疑問を率直に言葉にする。

「ここって部屋の防音とかしっかりしてるんでしょ? それなら歌の練習はできるし、何よりアタシ天才だから他のダンスとかは練習する必要はあまりないんだ」
「ほ、本当なのそれ? じゃあ昨日のライブとかも練習してなかったの?」
「うんそうだよ。流石に本番前に振り付けとか確認はしたけどね」

 当たり前のように口にした内容は突拍子もないものだったが、かといって冗談にも聞こえない。
 実際それが本当だと思わせる才能は昨日見ているので否定はできなかった。

「そういうアイドル活動関連もやりながらしっかりDOとしての仕事もやっていくつもりだから、これからもよろしくね生人くん!」

 こうしてDOに新しい可愛らしく心強いメンバーが入ったのであった。
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