20 / 45
新たなる野球部
太陽と美緒の父は激怒した
しおりを挟む
……夜空は自分がどれくらい寝ていたのかわからなかった。気が付くと額には冷たい手拭いが乗せられていて、自分が和室で寝ていたことが分かった。そして股間の痛みに気付いたとき、自分が美緒の投げたスローカーブを捕り損ねたせいで庭でうずくまったことを思い出した。
「……気付いたかね? 君は夜空くんというそうだな。美緒からだいたいの話は聞いた」
低くて威厳のある声を聞いたとき、夜空の目に映ったのはたくましい男の顔だった。
「君が美緒に野球を教えているのは許そう。だがな、交際を申し込んだのは許せん! 君は中学生で美緒は小学生だぞ! どうしてもと言うなら道場へ来い! 君の根性を見てやる!」
男の太い腕で夜空は抱き起され、数分ほど歩かされて剣道の道場へ連れ込まれた。
「お父さん! なんで夜空くんを連れてきたの? 夜空くんは大丈夫なの? お父さん?」
見ると道場には剣道の道着を着た太陽が座っていたが、夜空を見ると立ち上がって駆け寄った。
「太陽! 美緒はどこだ? 美緒の前でこいつをぶちのめしてやる! 美緒を呼べ!」
……その数分後に美緒が現れ、ちょっとした冗談を言ったのだと父親に説明したので父親の怒りはいったん収まった。だが美緒は剣道よりも野球をやりたいと言い、結局父親を怒らせた。
「野球なんぞくだらん! 太陽! 美緒! お前たちはこの道場を継ぐんだ! 野球はやめろ!」
「やめない! じゃあ剣道やめる! それから夜空くんの彼女になって家を出る!」
美緒が叫ぶと父親は怒り余って顔が青ざめ、ふらふらとよろめいて床に倒れた。
「……ちょっと夜空くん。お姉さんが迎えに来たわよ。あらお父さん? どうしたの?」
太陽の母親が道場に来たとき、太陽は事態を説明出来ずに困ったが、美緒はただ笑っていた。
……太陽の家で思わぬ騒動に巻き込まれた夜空は姉の想子の顔を見るとほっとした。
そのとき、太陽が想子の顔をじっと見ていたことに夜空は気付かなかった。
「……気付いたかね? 君は夜空くんというそうだな。美緒からだいたいの話は聞いた」
低くて威厳のある声を聞いたとき、夜空の目に映ったのはたくましい男の顔だった。
「君が美緒に野球を教えているのは許そう。だがな、交際を申し込んだのは許せん! 君は中学生で美緒は小学生だぞ! どうしてもと言うなら道場へ来い! 君の根性を見てやる!」
男の太い腕で夜空は抱き起され、数分ほど歩かされて剣道の道場へ連れ込まれた。
「お父さん! なんで夜空くんを連れてきたの? 夜空くんは大丈夫なの? お父さん?」
見ると道場には剣道の道着を着た太陽が座っていたが、夜空を見ると立ち上がって駆け寄った。
「太陽! 美緒はどこだ? 美緒の前でこいつをぶちのめしてやる! 美緒を呼べ!」
……その数分後に美緒が現れ、ちょっとした冗談を言ったのだと父親に説明したので父親の怒りはいったん収まった。だが美緒は剣道よりも野球をやりたいと言い、結局父親を怒らせた。
「野球なんぞくだらん! 太陽! 美緒! お前たちはこの道場を継ぐんだ! 野球はやめろ!」
「やめない! じゃあ剣道やめる! それから夜空くんの彼女になって家を出る!」
美緒が叫ぶと父親は怒り余って顔が青ざめ、ふらふらとよろめいて床に倒れた。
「……ちょっと夜空くん。お姉さんが迎えに来たわよ。あらお父さん? どうしたの?」
太陽の母親が道場に来たとき、太陽は事態を説明出来ずに困ったが、美緒はただ笑っていた。
……太陽の家で思わぬ騒動に巻き込まれた夜空は姉の想子の顔を見るとほっとした。
そのとき、太陽が想子の顔をじっと見ていたことに夜空は気付かなかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
First Light ー ファーストライト
ふじさわ とみや
青春
鹿児島県の女子高生・山科愛は、曾祖父・重太郎の遺品の中から一枚の風景画を見つけた。
残雪を抱く高嶺を見晴るかす北国らしき山里の風景。その絵に魅かれた愛は、絵が描かれた場所を知りたいと思い、調べはじめる。
そして、かつて曾祖父が終戦直後に代用教員を務めていた街で、その絵は岩手県出身の特攻隊員・中屋敷哲が、出撃の前に曽祖父に渡したものであることを知った。
翌年、東京の大学に進学した愛は、入会した天文同好会で岩手県出身の男子学生・北条哲と出会い、絵に描かれた山が、遠野市から見上げた早池峰山であるらしいことを知る。
二人は種山ヶ原での夏合宿あと遠野を訪問。しかし、確たる場所は見つけられなかった。
やがて新学期。学園祭後に起きたある事件のあと、北条は同好会を退会。一時疎遠になる二人だったが、愛は、自身の中に北条に対する特別な感情があることに気付く。
また、女性カメラマン・川村小夜が撮った遠野の写真集を書店で偶然手にした愛は、遠野郷に対して「これから出合う過去のような、出合ったことがある未来のような」不思議な感覚を抱きはじめた。
「私は、この絵に、遠野に、どうしてこんなに魅かれるの?」
翌春、遠野へ向かおうとした愛は、東京駅で、岩手に帰省する北条と偶然再会する。
愛の遠野行きに同行を申し出る北条。愛と北条は、遠野駅で待ち合わせた小夜とともに「絵の場所探し」を再開する。
中屋敷哲と重太郎。七十年前に交錯した二人の思い。
そして、たどり着いた〝絵が描かれた場所〟で、愛は、曾祖父らの思いの先に、自分自身が立っていたことを知る――。
※ この話は「カクヨム」様のサイトにも投稿しています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
さよなら。またね。
師走こなゆき
青春
恋愛系。片想い系。5000文字程度なのでサラッと読めます。
〈あらすじ〉
「行ってきます」そう言って、あたしは玄関を出る。でもマンションの階段を下りずに、手すりから四階下の地面を見下ろした。
マンションの一階の出入り口から、紺のブレザーを着た男子学生が出てくる。いつも同じ時間に出てくる彼。
彼は、あたしと同じ高校に通ってて、演劇部の一つ上の先輩で、あたしの好きな人。
※他サイトからの転載です。
山田がふりむくその前に。
おんきゅう
青春
花井美里 16歳 読書の好きな陰キャ、ごくありふれた田舎の高校に通う。今日も朝から私の前の席の山田がドカっと勢いよく席に座る。山田がコチラをふりむくその前に、私は覚悟を決める。
萬倶楽部のお話(仮)
きよし
青春
ここは、奇妙なしきたりがある、とある高校。
それは、新入生の中からひとり、生徒会の庶務係を選ばなければならないというものであった。
そこに、春から通うことになるさる新入生は、ひょんなことからそのひとりに選ばれてしまった。
そして、少年の学園生活が、淡々と始まる。はずであった、のだが……。
私の話を聞いて頂けませんか?
鈴音いりす
青春
風見優也は、小学校卒業と同時に誰にも言わずに美風町を去った。それから何の連絡もせずに過ごしてきた俺だけど、美風町に戻ることになった。
幼馴染や姉は俺のことを覚えてくれているのか、嫌われていないか……不安なことを考えればキリがないけれど、もう引き返すことは出来ない。
そんなことを思いながら、美風町へ行くバスに乗り込んだ。
片翼のエール
乃南羽緒
青春
「おまえのテニスに足りないものがある」
高校総体テニス競技個人決勝。
大神謙吾は、一学年上の好敵手に敗北を喫した。
技術、スタミナ、メンタルどれをとっても申し分ないはずの大神のテニスに、ひとつ足りないものがある、と。
それを教えてくれるだろうと好敵手から名指しされたのは、『七浦』という人物。
そいつはまさかの女子で、あまつさえテニス部所属の経験がないヤツだった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる