悪役令嬢はヒロインを虐めている場合ではない

四宮 あか

文字の大きさ
108 / 171
星降る夜を見上げている場合ではない

第9話 わかりあえない

しおりを挟む
 ジークの冷ややかな目線を何とかするべく、いろいろと言い訳を並べてみる。
 でも、私が口にしてしまったエロ本という言葉は重かった。
 挽回しようとするもむなしく、外商が来て話しは打ち切られてしまう……
 間違いなく言えることは、ジークはおそらくもうベッドの下や私が探しそうな場所には二度と、みられて困るようなものは隠さないだろうということだけだ。

 適当に当分必要そうな物を手に入れてほっとする。
 8階の窓からみるアンバーの景色もやっぱり美しかった。
 高さ制限があるのか、ジークのホテルは海からは少し離れているけれど、遠くから眺める海もわるくはないわね。
 何よりかにより、ジークが部屋にいることで、部屋が涼しい。
 アンバーの暖かさはアンバーの魅力ではあるけれど、クーラーがない世界はつらいものがある。
 昨年の夏もジークが私の部屋に居座ってからはすっかりジークはクーラーとして大活躍だったなぁと思いだす。


 私がこの世界にきて、もう1年がたとうとしていた。
 ゲームで知っていたことを回避して、平穏にと言う思いはどこへやら、私は次々厄介事に巻き込まれてきた。
 ゲームのシナリオとは全く違う事態だ。
 婚約を解消したことで起こった厄介事は、どう鎮静化していいかわからない。

 それにしても、フォルトがいつもだったら、そんなに間を開けずに私の様子を見に来てくれただろうに……それがないのも気になる。


「ジーク様。唐突ですが、紙とペンをかしていただけませんか?」
「かまわないよ」
 ジークはそういうと、テーブルに紙とペンを持ってきてくれた。
 紙にサラサラとデフォルメしたキャラクターを書いていく。

 今回に関係ありそうな人物は、とりあえずフォルト、そしてさっきあった兄弟のどっちか、それと会ってないほう。
 私と婚約を解消したジーク。
 私が盟約をしたリオンとシオン……
「うまいものだな」
 私がサラサラっと書いた似顔絵にジークが関心といった声をあげる。
「ジーク様、もし気がついたことがあったらおっしゃってください」

「これは推測ですが、跡目争いといっても、序列のようなものがあるのではないでしょうか。なんていうか、王位継承権第一位みたいな」
「うーん、はっきりとしたものはないだろうけれど。実力に関しては、今自分が跡目争いをしてるなかで何番目かはわかるだろうね……」
 私の部屋に訪問してきたほうは、少なくとも学園に今在籍している生徒ではない。
 理由は簡単だ、態度はかなり高圧的であったけれど、私とフォルトと血縁関係にあるだけあって、顔が整っていたから。
 学園にいるイケメンは、もれなく1度は私とアンナとミリーのお茶会でお話がでるはずなのだ。
 その話題がちっとも出てこないということは、学園をすでに卒業した年齢であると考えるほうが自然。
 私が直系にも関わらず領主教育がされないのは私の魔力が著しく弱いから。

 これでは、何かあったときに領主として魔力をつかった戦闘ができないのは致命的だ。
 だから、フォルト以外の二人も、一定以上の魔力があったから領主候補として選ばれたのだと思う。
 去年の春ジークがグスタフとやり合った際、ジークは本来の実力がほとんど出し切れていなかった。
 それくらい、1年生と6年生では全然実力が違う。

「私と同い年で有るフォルトはおそらく二人の兄弟に比べて年齢がかなり若いから、当然今の段階では魔力量や魔力の扱い方などすべてにおいて二人に劣っていた」
「レーナの推理通りだと思うよ。跡目争いは、実際のところフォルトの跡取り候補は名ばかりで、他の候補者達に比べて年齢も随分と離れていたこともあって。これまではすべてが彼らよりフォルトは劣っていた。だから、これまでは、兄弟どっちが跡を継ぐことになるかでもめても、フォルトは格下ゆえに眼中になかった」
 ジークはそういって私からペンを奪う。
 そして私とジークのイラストが並ぶ間に一本の線を引いた。
「でも、レーナと私は婚約を解消してしまったから、その絶対的な序列のパワーバランスが崩れてしまった。レーナというゲームを一瞬で台無しにしてしまうかのような切り札ができてしまったんだ」


 シオンとも話したけれど、原因はやっぱりそこだ。
「序列的にまったくライバル視されていなかったフォルトだったけれど。私の婚約者候補としては、私と年齢も同じだからこそ筆頭候補になりかねない」
「フォルトはまじめでいいやつだと思う。だが、身体強化も雷の魔法の使い手だからこその使い方があるが、フォルトはまだそれを会得できていない。魔法の使い手としては、今の実力では二人にはるかに劣るだろう。でも君を手に入れたらそれは全部チャラになるのではないかと思っているのだろうね。公式の場で、ダンスを披露することがなくてよかったよ……そうじゃなかったら、今頃リオンをどうやって止めるかの話し合いをしていただろうね」
 ジークはそう言ってスラリと剣を抜いた。



「ジーク様でしたら、リオンを止めれますか?」
「無理だろうね。技量でも悔しいが今本気でやり合っても勝てる気はしない。氷での足止めという手段もあるが、手足を落としても再び生やしたりくっつけることができる回復魔法の使い手というのが達が悪い。首でも1発で落とさない限り、君が命令を解かない限りリオンは何度でも魔力が尽きない限り、腕を生やし、足を生やし向かってくるだろうね」
 ゾンビのように何度も再生して立ち上がる姿を想像してゾッとしてしまう。
「私を無理やり手篭にすれば、副産物としてこんなことになりますってプレゼンしてみたらどうかなと思うのですが……」
「君が魔力をあまり保持していないことを知らない者は身内でいないだろう。君が魔力が低いことを知っている者なら、どう考えてもリオンを君がよもや血の盟約で本当にしばっているだなんてこと信じないと思う」

しおりを挟む
感想 582

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。