イディーラ学園の秘密部

碧猫 

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ふわふわ世界で

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「ちょっとトイレ行ってくる」

 もう下校時間は過ぎている。でも、やっぱりちょっと心配だから空姫ちゃんにトイレの前まで着いてきてもらった。

「あら、あら、まだ学園に人がいるのですわ」

 誰だろう。すごく可愛い人。

「あら?……うふふふふ」

 気づいてないふりしてトイレ済ませた方が良いかも。なんだかいやな感じがするし。

「……」

 えっと、トイレっとこんな場所だったっけ?

 もっと狭くてトイレという名前がついている機械があるだけな気がするんだけど。

 なんでこんなにふわふわなの?

 ……うん。見なかった事にして締めよっか。

 こういう時はこれが一番。私はなにも見ませんでした。

「だめよ」
「きゃ!」

 誰かに背中を押されて中に入った。

 急いで出ようとするけど扉がなくなってる。

 誰かがとか場所がとか今はどうだっていい。そんな事よりも重要な事がある。

「トイレ行きたい」

 トイレに行った目的が果たされずにこんな場所に閉じ込められて、我慢できなくなってる。

「うぅぅ」
「トイレなら向こうにありますわよ」
「ありがと」

 背中を押して閉じ込めた張本人だとか今はそういう事は考えられない。とにかくトイレが先。

      ******

 ふぅ、トイレ行ってすっきりしたし考える事にするよ。

 まずはあの女の人だよね。なんだろう。今日転校してきた天従くんと似た感じがしたの。

 こんな事にならなかったら疑うなんてしたくなかったけど、やっぱりそういう事なんだろうね。

 次はこの場所。真っ白いふわふわとした場所。ふわふわでふかふか、まるで雲の上にいるみたい。

「あら、驚かないですわね」
「……」
「うふふふふふ、そういうところ嫌いじゃありませんわよ」
「……」
「安心してくださいませ。あたくしはご令嬢の味方でございますわ」
「味方?」
「そうですわ。ご令嬢は重要な事を忘れているのですわ。それをあたくしの魔法で思い出させてあげますわ」

 魔法ってそういう使い方もできるの?

 ってそうじゃなくて、明らかに怪しいんだから警戒しなきゃだめなの。

「うふふ、そんなに警戒なさらずとも悪いようには致しませんわ」
「名前も知らない人の事信用しちゃだめだから」
「そうですわね。では、名乗らせて頂きますわ。初めまして星音嬢、あたくしは御従春恋みづかいはるこいと申しますわ。よろしくお願いいたしますわ」

 名前を聞いたところでこんな状況怪しさ満載なんだけど。逆にどうすれば怪しくないって思うのかなってくらい怪しいよ。

「うふふ、警戒するのも良いですけど、知りたくないのですか?ここから出る方法を」

 それは知りたい。でも、だからってそれを信用しても良いのかな?
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