8 / 25
8. 「何をしているんだ!」「あの、男としての尊厳の確認を」※
しおりを挟む俺は立派な部屋に案内された。
ここが俺の部屋らしい。ありがたい。
とりあえず、バルさんだと思ったけど、あのバル殿下はバルさんじゃないな。
自分でも何を言ってるかわからないが、バルさんに見えるけど、全然肉屋の時と違う。遠山の金さんもそうだよな。お裁きの時と町での陽気な感じは違うもんな、と思うけど、多分違う人なんだな。
じゃああんなに似てるバルさんって何なんだ。やばいな。俺は王家の秘密に食い込んでしまったのか──なんてな。
「さて……」
俺には色々考えることがありすぎて、どうしたらいいかわからない。
「まず、何を考えたらいいんだ……??」
頭がパンクしそうだ。
そういえば、身体がという話があったな、とふと思い出す。
いやでも、なんかこんな状態でいっぱいいっぱいで、自家発電する余裕もない。男としての尊厳がどうとか、どうでもいいかな。
いや、ちゃんと確認しないと、心配といえば心配だ。
ベッドに腰かけて、俺は自分のモノを取り出した。
まあ、勃たないよね。
何か想像……エッチな、何かエッチなお姉さん……
俺は自分の想像力のなさを舐めていた。普段は動画見ながらとかだから。
そういえば、スマホあるじゃん。
何かダウンロードされてなかったかな。
スーツのポケットからスマホを取り出す。
かろうじて充電は6%あったけど、使ったら一瞬で死んでしまう。
モバイルバッテリーがリュックの中にあったはず。
モバイルバッテリーを繋いでみると、結構充電できそうでホッとする。でも、用途がこれってどうなの。
イヤホンも出して、ハッとする。
俺のスマホ、充電しながらイヤホンつけられないタイプだった。
仕方ない。
とりあえず、何か残ってないか探すと、オフラインで見られそうな動画が残っていた。
よっぽど好きなタイプだったはずなのに、全然ときめかない。ヤバイ。やっぱり男性として機能しないのかな。
俺は勃たないものを無理矢理勃たせようとしたが、全然勃たない。もう泣きそう。
俺が女の子のアンアン言ってる声と、自分のモノに集中してたら、いきなり「何をしているんだ!」と声がかかった。
ビックリしたけど、涙目でそっちを見たら、バル殿下が恐ろしい顔をしてこちらを見ていた。目をひんむいて、眉間にはどこの彫刻家が彫ったのかというくらい深いシワがある。
「あ、う……男としての尊厳の確認を……」
俺は、股間を晒したまま、そう答えていた。
早くしまわなきゃって思うのに、全然動けない。
バル殿下は、はあとため息をついて、「それで確認できたのか?」と聞いてくる。え、この状態でそれ聞いちゃうの。プライベート踏み込んでくるなよ。てか、こういう時は部屋から出てってくれよ。お前は俺のお母さんかよ。
もう嫌だ。
「見たらわかるだろ!! 勃ってないだろ!!」
バル殿下は、俺の股間にチラッと視線をむけると、「そうだな」と言った。男としての尊厳どころか人間としての尊厳もぼろぼろだ。
『アアン……イクッ……イッちゃうぅ……』
空気を読まずに動画の女の子がイッてしまった。
もう嫌だ。
俺は動画を消して、モノをしまう。
「何か用でしたか?」
スン、と表情を消した俺に、バル殿下は「いや……」と口をにごす。俺は気持ちを切り替えることにした。
「あーそうだ! バル殿下は、独りでする時どうやってするんですかー?!」
変なテンションで聞いてやった。わはは。
俺の尊厳を踏みにじった復讐だ。
「あ、いや、それは……」
さすがにバル殿下が口ごもる。
「何か見て? 想像して??」
俺がバル殿下の顔を覗き込むと、バル殿下は視線をそらした。
「それは……」
「それは??」
畳みかけると、バル殿下のしかめ面がめちゃめちゃ険しくなって、舌打ちが聞こえた。
「……お前の尊厳の確認を手伝ってやる」
バル殿下は、俺の肩を押してベッドに倒した。
「は?」
俺は間抜けな顔をしてベッドに埋もれた。
「いやいや!! ストップストップ!!」
バル殿下を押し返して、俺はジタバタした。
「そういうの、いいですから!」
俺が怒ってにらみつけると、バル殿下はグッと唇を引き結び、渋い顔をして「冗談だ」と小さい声で言って部屋を出ていった。
「何なんだよ……」
俺はバル殿下が出ていった扉をポカンと見つめていた。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
イケメンな先輩に猫のようだと可愛がられています。
ゆう
BL
八代秋(10月12日)
高校一年生 15歳
美術部
真面目な方
感情が乏しい
普通
独特な絵
短い癖っ毛の黒髪に黒目
七星礼矢(1月1日)
高校三年生 17歳
帰宅部
チャラい
イケメン
広く浅く
主人公に対してストーカー気質
サラサラの黒髪に黒目
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる