マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#147 とても贅沢なはまぐりご飯

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「リンドさん、おはようございます」

「おお! 来てくれたがお前さん達! 上がってくれ!」


 シュージ、ジルバート、ディアナの3人は沿海州の漁師組合の集会所にやって来ていた。

 その中の会議室に入ると、中には以前シュージの食事を食べに来たこの街の有力者の人も何人かいた。


「まず、改めて礼を言わせてくれ。 お前さん達のおかげでこの街は無事だった。 本当にありがとう!」


 リンドがそう言って頭を下げると、他の者達も一斉に深々と頭を下げてきた。


「頭を上げてくれ。 皆が無事でよかったよ。 まぁ、1番の功労者はシュージだしな」

「えっ、僕、大した事してないですよ?」

「そんな事はないさ。 お前が繋いできた人との縁がこの街を救ったんだ。 ディアナなんて特にそうだろう」

「確かにね? ジルバートだけでもあのクラーケンは倒せたと思うけど、もっと苦戦してたろうし、もっと街に被害が出ててもおかしくなかったよ」

「今回怪我人の治療で活躍したネルなんかもお前が連れて来たと言ってもいい人材だし、蒼天の風のメンバーもお前の呼びかけだから迷わず駆けつけたんだ。 誇っていい」

「そう言われると少し照れますね。 力になれて良かったです」

「それで、報酬に関してなんだが、金に関しては州から……」

「いや、金はいい」

「えっ、だが、そういう訳にゃ……」

「本来、所属外の街に救援に行くのは正式な許可がいるが、今回その辺をすっ飛ばしたから割とグレーな事を俺達はしたんだ。 それで金まで受け取ると、当事者達は良くても周りからの外聞が悪い。 クラーケン討伐の報酬ともなるとかなりの額になるしな」

「うん、私もお金はいいかな。 困ってないし」

「けど、流石に無報酬は無報酬でこっちの面子も立たんし……」

「なら、シュージに海の食材を融通してやってくれ。 現金ではなくお礼の品という事にすれば周りからもそこまで角は立たんだろう」

「えっ、僕だけなのは申し訳ないんですけど……」

「シュージは貰った食材で俺達に美味いものを食わせてくれるだろう? 十分俺達にも還元されるさ」

「他の子達もお金なんかより全然喜びそうだね」

「そういう事なら任せとけ! とびっきりのもんを卸してやるよ! クラーケンが出た割には海もそこまで荒れてねぇから、1週間も経てば漁にも出れる! それに、海の魔物が大量にあるから、ひとまずはそれを持ってってくれ! 普通のやつは準備できたら連絡する!」

「そんなにいいんですか?」

「当たり前よ! クラーケンが野放しになったら、そもそもこの街が無くなってたんだからな! まだまだ足りねぇぐらいだ!」

「それなら、ありがたく受け取りますね。 ジルさんもディアナさんも、美味しいもの作りますから、楽しみにしててください」

「ああ、分かった」

「楽しみだねー」


 それから改めて他の有力者達にも一人一人感謝を告げられ、近くの市場で色々と食材を貰うシュージ達だった。



 *



「……って事がありました」

「おぉ…… 凄いですね。 クラーケンなんて、御伽話かと思ってましたよ」


 それから夜になり、ひとまずシュージを始め、沿海州に救援に行っていた蒼天の風のメンバーは自分達のギルドに帰ってきていた。

 今は夕食の用意をしつつ、ハンスに沿海州での出来事を話しているところだ。


「死骸を見ましたけど、凄かったですよ。 下手すればこの国の王城くらい大きかったと思います」

「それを倒してしまうジルさんもディアナさんも凄いなぁ…… 僕には一生かけても無理そうです」

「一人一人ができる事をやればいいと思いますよ。 今回の件でも改めてそう思いました」

「そうですね。 ……で、今日は炊き込みご飯ですか?」

「はい。 魔物食材と、生け簀で生かされてた貝類などを貰ってきたので、今日は贅沢にはまぐりを使った炊き込みご飯です」


 会話をしている二人の横の炊飯器で今もふつふつと炊かれているのは、ぶつ切りにした大粒のはまぐりがライスの上にこれでもかと散りばめられ、それをはまぐりと昆布で取っただし汁で炊いた炊き込みご飯だ。

 そろそろ炊き上がるのだが、蓋を開けなくても排気口から出てくる香気だけでもう美味しさが伝わってくる。

 今日はもうこれをメインにしてもらいたいので、蒼天の風にある炊飯器をフル動員して大量に炊き、横には味噌汁とほうれん草のお浸しを添えた和食テイストの夕食にした。


 ピーッ


「お、炊き上がりましたね。 ……うーん、いい匂いです」

「うわ、めちゃくちゃ美味そうですね……!」


 それから程なくしてしっかり炊き上がったはまぐりご飯を切るようにしてザッと混ぜ、お椀によそってメンバー達に渡していく。


「今日のご飯はこちらのはまぐりご飯がメインです。 沢山用意したので、お代わりは自由にどうぞ」


 そんなシュージの説明が終わると、まずは皆んなとても良い匂いを放っているはまぐりご飯を口に運んでいった。


「これは美味いな」

「本当だね。 これが食べれただけでも今回沿海州で頑張った甲斐があったよ」


 そんな風に一口食べたジルバートとディアナが言うのも納得で、はまぐりから出た香り高く濃厚な旨みがライスにしっかりと染み渡っており、文句の付け所がカケラもない美味しさになっていた。

 はまぐりの身もゴロゴロ入っているおかげで、食事のメインに相応しい食べ応えもあり、どんどん皆んなの箸が進んでいっている。


「そういえばディアナお前、クラーケンと戦ってる時、暴走してなかったな。 俺はクラーケンと同じくらいお前にも警戒してたんだが」

「酷いなぁ。 でも、確かにね? 凄い楽しかったはずだけど、妙に落ち着いてた気がするよ」

「俺との鍛錬でも前ほど暴走はしなくなったしな」

「もしかしたら、シュージの食事のおかげかもね!」

「そうなんですか?」

「実際、ここを拠点にする前までは戦闘衝動に従って生きるのが私の生き方だったんだ。 でも、ここに来てから若手に色々教えたり、ジルバートと鍛錬したり、毎日毎食美味しいご飯を食べてたら、なんか心が充実してる気がするんだよね」

「それは良い変化ですね。 心の余裕は健やかな生活には欠かせませんから」

「確かにねー」

「ぜひそのままもっと落ち着いてくれ」

「でも、戦うのは好きだから、これからもジルバートと鍛錬はするよ!」

「……たまにな」

「そういうジルバートだって、昔に比べたらなんか穏やかになってない?」

「歳も取ったしな。 まぁ、確かにシュージが来てから事務仕事でくたびれたりしても、毎食美味い飯が食えているおかげで、毎日良い気分でよく眠れているし、起きたら良い気分で一日が始まるから、常に活力が体に満ちているんだ」

「食事はやっぱり偉大ですねぇ」

「そうだな」

「そうだねー」


 そんな感じで食事の大切さに改めて気付かされつつ、今日も美味しいご飯で一日を締めくくるシュージ達であった。
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