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聖女は魔王に嫁ぎます!
後日談
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予想通りと言うか――予想よりもずっと早かったと言うか。
アマリリスが悪魔の奥さんになって、悪魔の世界にやってきた。
わたしがジオルドの花嫁になって二か月後のことよ。
お前の姉が攫われてきたぞ――なんてジオルドが言うから、わたしはびっくりして、「無理やり攫わない」って言う約束が守られているのかを確かめるためにすぐにアマリリスのもとに連れてきてもらった。
アマリリスは七人いる魔王の一人、アズベール様って人の奥さんになったらしいの。
ジオルドから聞いた話だけど、魔王様って好みが激しいんですって。だから今までの生贄の儀式で花嫁に選ばれたのは、わたしと、百年前に選ばれたヴァンスラム様って魔王様の奥さんだけらしい。
ジオルドによると、アズベール様は少し気難しい方らしくて、アマリリスが心配になったんだけど、アズベール様の城についたわたしはそれが杞憂だってことがすぐにわかった。
「もう、アズベール、いい加減下ろして」
困った顔を赤くして、アズベール様の膝の上で小さな抵抗を見せているのはアマリリス。どうやらずっと膝の上に抱えられているみたい。
アマリリスはわたしの顔を見ると、さらに顔を真っ赤にして、それから次に目をうるうるさせると、アズベール様の膝の上で両手を広げた。
「シェイラ!」
さすがに姉妹の感動の再会の邪魔をする気はないらしいアズベール様が、今度こそアマリリスを開放してくれて、わたしはアマリリスとしっかりと抱きしめあった。
「よかった! アズベールがシェイラはジオルド様のところで幸せにしてると教えてくれたけど、やっぱり心配で。本当によかったぁ……!」
「心配かけてごめんなさい。でも、アマリリスこそ、どうしてアズベール様のところに?」
抱擁を解いてわたしが訊ねると、アマリリスはポッと頬を赤らめた。
「だ、だってアズベールったら、この二か月毎日会いに来るんですもの……。贈られる花で部屋はいっぱいになっちゃうし、しまいには部屋に入り浸っちゃって侍女たちが怖がっちゃうし……、仕方がなかったのよ」
仕方がなかったって言うけど、その顔は「仕方がない」って顔じゃないわよアマリリス。
どうやらアズベール様はアマリリスを落とすことに成功したみたいね。
わたしとしては姉が幸せそうでとても嬉しい。
ジオルドもアズベール様も、わたしたち姉妹が自由に会えるように、転移魔方陣? っていうものを作ってくれた。よくわかんないけど、一瞬でお互いの暮らす城に移動できるんですって。これで好きなときにおしゃべりができるわ。
アマリリスによると、お父様は心労で寝込んじゃったらしいわ。
そしてびっくりなのが、エスリール国の女性たちよ。
悪魔の皆さんって美形ぞろいなんですって。
それで、なんと、自分たちも悪魔のお嫁さんになりたいって騒ぎ出す人が多いらしい。
マディーなんて花嫁探しをしている悪魔に必死になってアピールしているって言うから驚きよ。
ジオルドが、あの女がこちらに来ることはないだろうなって言っていたからちょっとホッとしちゃったけどね。
だって、またマディーの厭味に付き合うのかと思ったら頭が痛くなりそうだもの。
ちなみに、マディーは他国の王子と婚約していたんだけど、悪魔に侵略されている国の姫なんて娶れるかって婚約破棄されたらしいわ。マディーが悪魔の気を引こうとするのにはここにも理由があるみたいね。
一番上のお兄様も隣国の姫との婚約が破談になったらしいし、エスリール国は次の聖女が現れるまでに持ちこたえることができるのかしら?
悪魔の皆さんは好きなだけ花嫁探しができてご満悦らしいけどね。
そして、ちょっと気になったのが、ジオルドの国の悪魔さんたちよ。ほかの国は大手を振って花嫁探しを楽しんでいるらしいけど、ジオルドの国の悪魔さんたちはジオルドが禁止令を出したから花嫁探しに行けないの。不満がでるんじゃないかしら? って思っていたら、ジオルドってば悪魔的な笑みを浮かべてこう言ったのよ。
――自分たちで嫁を攫ってくるなとは言ったが、他人に頼むなとは言っていない。
えっとどういうこと? って思ったら、つまりはほかの国の悪魔たちにかわりにお嫁さんを探してきてもらうのは全然オッケーよってことらしい。
まったくずる賢いわね。さすが悪魔ってかんじよ。
お前がこちらに来たおかげで悪魔の世界が活気づいていいなって笑うから、喜んでいいのかちょっと悩んじゃうわ。
アズベール様がじーっと恨めしそうにこちらを見ているから、アマリリスを彼に返してあげて、わたしはひらひらと手を振った。
「また来るわ。結婚式はいつなの?」
「明日よ」
どうして悪魔ってすぐに結婚式をしたがるの⁉
わたしは唖然としたけれど、アマリリスが幸せそうだからまあいっか。
じゃあ、明日また来るわねーって言って、わたしはジオルドと彼の城へ戻る。
わたしを抱っこしたジオルドが「満足か?」っ言うから、少し考えて頷いた。
アマリリスも幸せそうだし、もちろんわたしも幸せだし、満足よ。
「悪魔ってもっと怖いのかと思ってたわ」
ジオルドの首に腕を回して甘えながらわたしが言えば、彼は心外だって顔をして。
「悪魔は花嫁には優しいんだ」
なんて言うの。
そうね。わかっているわ。
だってこの二か月、ジオルドはとても優しかったもの。
「ジオ、大好きよ」
わたしが笑いながら言えば、彼は優しいキスをくれる。
余談だけど、ジオルドがわたしを花嫁にしようと思った理由はね。
――一目ぼれだったんですってよ。
~~~完~~~
アマリリスが悪魔の奥さんになって、悪魔の世界にやってきた。
わたしがジオルドの花嫁になって二か月後のことよ。
お前の姉が攫われてきたぞ――なんてジオルドが言うから、わたしはびっくりして、「無理やり攫わない」って言う約束が守られているのかを確かめるためにすぐにアマリリスのもとに連れてきてもらった。
アマリリスは七人いる魔王の一人、アズベール様って人の奥さんになったらしいの。
ジオルドから聞いた話だけど、魔王様って好みが激しいんですって。だから今までの生贄の儀式で花嫁に選ばれたのは、わたしと、百年前に選ばれたヴァンスラム様って魔王様の奥さんだけらしい。
ジオルドによると、アズベール様は少し気難しい方らしくて、アマリリスが心配になったんだけど、アズベール様の城についたわたしはそれが杞憂だってことがすぐにわかった。
「もう、アズベール、いい加減下ろして」
困った顔を赤くして、アズベール様の膝の上で小さな抵抗を見せているのはアマリリス。どうやらずっと膝の上に抱えられているみたい。
アマリリスはわたしの顔を見ると、さらに顔を真っ赤にして、それから次に目をうるうるさせると、アズベール様の膝の上で両手を広げた。
「シェイラ!」
さすがに姉妹の感動の再会の邪魔をする気はないらしいアズベール様が、今度こそアマリリスを開放してくれて、わたしはアマリリスとしっかりと抱きしめあった。
「よかった! アズベールがシェイラはジオルド様のところで幸せにしてると教えてくれたけど、やっぱり心配で。本当によかったぁ……!」
「心配かけてごめんなさい。でも、アマリリスこそ、どうしてアズベール様のところに?」
抱擁を解いてわたしが訊ねると、アマリリスはポッと頬を赤らめた。
「だ、だってアズベールったら、この二か月毎日会いに来るんですもの……。贈られる花で部屋はいっぱいになっちゃうし、しまいには部屋に入り浸っちゃって侍女たちが怖がっちゃうし……、仕方がなかったのよ」
仕方がなかったって言うけど、その顔は「仕方がない」って顔じゃないわよアマリリス。
どうやらアズベール様はアマリリスを落とすことに成功したみたいね。
わたしとしては姉が幸せそうでとても嬉しい。
ジオルドもアズベール様も、わたしたち姉妹が自由に会えるように、転移魔方陣? っていうものを作ってくれた。よくわかんないけど、一瞬でお互いの暮らす城に移動できるんですって。これで好きなときにおしゃべりができるわ。
アマリリスによると、お父様は心労で寝込んじゃったらしいわ。
そしてびっくりなのが、エスリール国の女性たちよ。
悪魔の皆さんって美形ぞろいなんですって。
それで、なんと、自分たちも悪魔のお嫁さんになりたいって騒ぎ出す人が多いらしい。
マディーなんて花嫁探しをしている悪魔に必死になってアピールしているって言うから驚きよ。
ジオルドが、あの女がこちらに来ることはないだろうなって言っていたからちょっとホッとしちゃったけどね。
だって、またマディーの厭味に付き合うのかと思ったら頭が痛くなりそうだもの。
ちなみに、マディーは他国の王子と婚約していたんだけど、悪魔に侵略されている国の姫なんて娶れるかって婚約破棄されたらしいわ。マディーが悪魔の気を引こうとするのにはここにも理由があるみたいね。
一番上のお兄様も隣国の姫との婚約が破談になったらしいし、エスリール国は次の聖女が現れるまでに持ちこたえることができるのかしら?
悪魔の皆さんは好きなだけ花嫁探しができてご満悦らしいけどね。
そして、ちょっと気になったのが、ジオルドの国の悪魔さんたちよ。ほかの国は大手を振って花嫁探しを楽しんでいるらしいけど、ジオルドの国の悪魔さんたちはジオルドが禁止令を出したから花嫁探しに行けないの。不満がでるんじゃないかしら? って思っていたら、ジオルドってば悪魔的な笑みを浮かべてこう言ったのよ。
――自分たちで嫁を攫ってくるなとは言ったが、他人に頼むなとは言っていない。
えっとどういうこと? って思ったら、つまりはほかの国の悪魔たちにかわりにお嫁さんを探してきてもらうのは全然オッケーよってことらしい。
まったくずる賢いわね。さすが悪魔ってかんじよ。
お前がこちらに来たおかげで悪魔の世界が活気づいていいなって笑うから、喜んでいいのかちょっと悩んじゃうわ。
アズベール様がじーっと恨めしそうにこちらを見ているから、アマリリスを彼に返してあげて、わたしはひらひらと手を振った。
「また来るわ。結婚式はいつなの?」
「明日よ」
どうして悪魔ってすぐに結婚式をしたがるの⁉
わたしは唖然としたけれど、アマリリスが幸せそうだからまあいっか。
じゃあ、明日また来るわねーって言って、わたしはジオルドと彼の城へ戻る。
わたしを抱っこしたジオルドが「満足か?」っ言うから、少し考えて頷いた。
アマリリスも幸せそうだし、もちろんわたしも幸せだし、満足よ。
「悪魔ってもっと怖いのかと思ってたわ」
ジオルドの首に腕を回して甘えながらわたしが言えば、彼は心外だって顔をして。
「悪魔は花嫁には優しいんだ」
なんて言うの。
そうね。わかっているわ。
だってこの二か月、ジオルドはとても優しかったもの。
「ジオ、大好きよ」
わたしが笑いながら言えば、彼は優しいキスをくれる。
余談だけど、ジオルドがわたしを花嫁にしようと思った理由はね。
――一目ぼれだったんですってよ。
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