293 / 549
第7章 天下分け目の大決戦編
67.三浦宮御所の戦い(20)
しおりを挟む
志太連合軍に政豊率いる木内軍が加わった事により、兵の勢いは更に増した。
そして次々と幕府軍の兵たちを倒していき、ついには御所付近にまで兵を進めるにまで至った。
祐永
「それにしても、先刻までは敵として戦っておった者に案内されるとはな…戦とは、真に思いもよらぬことが起きるものよのぅ…」
祐永は政豊と共に行動する事を不思議に思っていた。
すると、祐宗が祐永に対して言う。
祐宗
「どうやら父上が上手く政豊殿を説得されたようじゃな。いずれにせよ我が軍は持ち直したわい…」
祐宗は、自軍壊滅の危機を祐藤の政豊に対する説得で回避出来た事に安堵の表情を浮かべていた。
同時に父である祐藤の逆境に立ち向かう姿勢に改めて感服させられていた。
幕府軍の兵たちは志太連合軍の猛攻を受けた事により、士気は著しく低下していた。
そうして戦意も次第に喪失しつつある幕府軍を見ながら政豊が言う。
政豊
「幕府の者どもは我らの兵を見て怖気づいたようじゃな。では、このまま御所に突っ込んで継晴の首を取りに行くとするかね。」
政豊は活き活きとした表情であった。
しかし、祐宗は顔をしかめて政豊を制止しながら言う。
祐宗
「継晴はいくら暗愚とは言えど、国を束ねし歴代将軍の血を引く者にござる。それ故、油断されると足元をすくわれる恐れも十分に有り得ますぞ。」
三浦家は、数百年も続く幕府の頂点に立つ将軍家である。
代を重ねる毎にその権威は薄れつつあるのが今日の現状ではあるが、それでも幕府を開くという偉業を成し遂げた始祖の血が流れている事は紛れもない事実。
継晴も今この場で祖先より受け継がれし能力が覚醒されてもおかしくは無いのだ。
祐宗のその言葉を聞いた政豊は笑い飛ばした後に言う。
政豊
「なぁに、心配は無かろう。今や幕府に味方する者はほとんどおらぬではないか。かような状態で一体何が出来ようというのじゃ。」
確かに現在の三浦幕府の味方は、縁戚や譜代など古くより幕府に縁のある者などしか居ない状況である。
しかし、そういった境遇であっても幕府から離れていく者たちも少なくは無かったという。
まさに四面楚歌の状態と言っても良いであろう。
祐永
「人望無き将は恐るるに足らず、と申したいようじゃな。しかし、かような将にはなりたく無いものよな…」
祐永はそう呟いていた。
志太家による脅威を感じた事によって降伏せざるを得ないと判断した結果の離反も原因の一つだ。
しかし、それ以上に将軍である継晴に人望が無かった事が決定的な原因と言っても良いであろう。
継晴と言う一人の将軍の失態によって幕府は滅亡寸前にまで追い込まれている…
一方、御所内では幕府軍の兵たちの士気低下によって全軍壊滅の危機に瀕している事を悟った義久が口を開く。
義久
「継晴様!このままでは我らの兵が志太軍にやられてしまいますぞ!」
継晴
「む…志太軍どもに恐れをなして固まっておるというのか…真に情けない奴らよ…」
継晴は戦意が喪失しつつある幕府軍の兵たちに対して不満の声を述べていた。
すると、その場にいた教晴が継晴に対して声を上げる。
教晴
「父上!ここは拙者が人質の監視を行い、兵たちの逃亡を防ごうかと思いまする。どうか拙者にその役をお申し付けくださいませ!」
教晴は御所内に囚われている人質の監視役を自身に任せてくれと懇願した。
これは今回の戦の前において義久と密談していた通り、最終的には継晴を追い詰める策を実行する為の準備である。
あくまでも本来の目的は幕府軍の兵たちの寝返りの助長であって、逃亡の阻止では無いのだ。
継晴はそんな教晴の腹の中などつゆ知らず嬉しそうな表情をして言う。
継晴
「おぉ!流石は余の息子じゃ。兵を逃さぬ策じゃな。真に良き策である。よし、それでは人質の監視を教晴に申し付ける!頼んだぞ!」
人質を上手く利用する事で兵の統率を図る。
継晴は、この非人道的とも言える卑劣な策を口にした教晴を褒めていた。
そしてその事に気分を良くしたのか、すぐさまに教晴へ主命を言い渡していた。
この事が後の幕府の運命を大きく分ける事になろうとは継晴は知る良しも無かった…
教晴
「ははっ!それでは早急にことを進めさせていただきますぞ!」
教晴は急いだ様子を見せてその場を立ち去ろうとしていた。
すると、義久が弱々しい表情で教晴に対して小さな声を上げる。
義久
「教晴様…よろしくお願いいたします…」
教晴は義久に近寄ると、小声で義久に対して耳打ちをした。
教晴
「義久、もう少しの辛抱ぞ。必ずや余が人質を全員救出いたす。人質の安全が保証されたその時が父上の…継晴の最期ぞ。」
教晴は真剣な目つきをしていた。
そして次々と幕府軍の兵たちを倒していき、ついには御所付近にまで兵を進めるにまで至った。
祐永
「それにしても、先刻までは敵として戦っておった者に案内されるとはな…戦とは、真に思いもよらぬことが起きるものよのぅ…」
祐永は政豊と共に行動する事を不思議に思っていた。
すると、祐宗が祐永に対して言う。
祐宗
「どうやら父上が上手く政豊殿を説得されたようじゃな。いずれにせよ我が軍は持ち直したわい…」
祐宗は、自軍壊滅の危機を祐藤の政豊に対する説得で回避出来た事に安堵の表情を浮かべていた。
同時に父である祐藤の逆境に立ち向かう姿勢に改めて感服させられていた。
幕府軍の兵たちは志太連合軍の猛攻を受けた事により、士気は著しく低下していた。
そうして戦意も次第に喪失しつつある幕府軍を見ながら政豊が言う。
政豊
「幕府の者どもは我らの兵を見て怖気づいたようじゃな。では、このまま御所に突っ込んで継晴の首を取りに行くとするかね。」
政豊は活き活きとした表情であった。
しかし、祐宗は顔をしかめて政豊を制止しながら言う。
祐宗
「継晴はいくら暗愚とは言えど、国を束ねし歴代将軍の血を引く者にござる。それ故、油断されると足元をすくわれる恐れも十分に有り得ますぞ。」
三浦家は、数百年も続く幕府の頂点に立つ将軍家である。
代を重ねる毎にその権威は薄れつつあるのが今日の現状ではあるが、それでも幕府を開くという偉業を成し遂げた始祖の血が流れている事は紛れもない事実。
継晴も今この場で祖先より受け継がれし能力が覚醒されてもおかしくは無いのだ。
祐宗のその言葉を聞いた政豊は笑い飛ばした後に言う。
政豊
「なぁに、心配は無かろう。今や幕府に味方する者はほとんどおらぬではないか。かような状態で一体何が出来ようというのじゃ。」
確かに現在の三浦幕府の味方は、縁戚や譜代など古くより幕府に縁のある者などしか居ない状況である。
しかし、そういった境遇であっても幕府から離れていく者たちも少なくは無かったという。
まさに四面楚歌の状態と言っても良いであろう。
祐永
「人望無き将は恐るるに足らず、と申したいようじゃな。しかし、かような将にはなりたく無いものよな…」
祐永はそう呟いていた。
志太家による脅威を感じた事によって降伏せざるを得ないと判断した結果の離反も原因の一つだ。
しかし、それ以上に将軍である継晴に人望が無かった事が決定的な原因と言っても良いであろう。
継晴と言う一人の将軍の失態によって幕府は滅亡寸前にまで追い込まれている…
一方、御所内では幕府軍の兵たちの士気低下によって全軍壊滅の危機に瀕している事を悟った義久が口を開く。
義久
「継晴様!このままでは我らの兵が志太軍にやられてしまいますぞ!」
継晴
「む…志太軍どもに恐れをなして固まっておるというのか…真に情けない奴らよ…」
継晴は戦意が喪失しつつある幕府軍の兵たちに対して不満の声を述べていた。
すると、その場にいた教晴が継晴に対して声を上げる。
教晴
「父上!ここは拙者が人質の監視を行い、兵たちの逃亡を防ごうかと思いまする。どうか拙者にその役をお申し付けくださいませ!」
教晴は御所内に囚われている人質の監視役を自身に任せてくれと懇願した。
これは今回の戦の前において義久と密談していた通り、最終的には継晴を追い詰める策を実行する為の準備である。
あくまでも本来の目的は幕府軍の兵たちの寝返りの助長であって、逃亡の阻止では無いのだ。
継晴はそんな教晴の腹の中などつゆ知らず嬉しそうな表情をして言う。
継晴
「おぉ!流石は余の息子じゃ。兵を逃さぬ策じゃな。真に良き策である。よし、それでは人質の監視を教晴に申し付ける!頼んだぞ!」
人質を上手く利用する事で兵の統率を図る。
継晴は、この非人道的とも言える卑劣な策を口にした教晴を褒めていた。
そしてその事に気分を良くしたのか、すぐさまに教晴へ主命を言い渡していた。
この事が後の幕府の運命を大きく分ける事になろうとは継晴は知る良しも無かった…
教晴
「ははっ!それでは早急にことを進めさせていただきますぞ!」
教晴は急いだ様子を見せてその場を立ち去ろうとしていた。
すると、義久が弱々しい表情で教晴に対して小さな声を上げる。
義久
「教晴様…よろしくお願いいたします…」
教晴は義久に近寄ると、小声で義久に対して耳打ちをした。
教晴
「義久、もう少しの辛抱ぞ。必ずや余が人質を全員救出いたす。人質の安全が保証されたその時が父上の…継晴の最期ぞ。」
教晴は真剣な目つきをしていた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説

小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる