どうやら私はラスボス魔王の娘に憑依したらしい。

枝豆@敦騎

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目が覚めるとそこは暗くて冷たい石で出来た牢屋の中だった。
私は手首と足首を縛られ転がされているようだ。
鉄格子の向こうにぼんやりとオレンジ色の蝋燭の明かりが見える。

(……どうかセーラが無事でありますように……)

はじめて人が刺されるのを見た。
私を知ろうとしてくれた優しく温かいセーラ。
お城には魔術医のクローケンがいるからきっと大丈夫だと自分に言い聞かせる。
そうでもしないと不安で押し潰されそうだった。

「目が覚めた?」
「ひゃっ!?」

いきなり後ろから声がして肩が跳ねる。
振り返ると幼い少年が同じ様に縛られた状態でこちらを見ていた。ルヴィアナと同い年くらいだろうか。

「ごめん、驚かせるつもりは無かったんだ」
「いえ、こちらこそ……変な声出しちゃってごめんなさい。あなたも、誘拐されたの?」

少年に向き直り尋ねると彼は小さく頷いた。

「ごめん。君を誘拐したの、僕の兄ちゃんなんだ」
「お兄さん……?」

ということはこの子はあの男の弟なのか。
こうして捕まっているという事は、あの男は弟を人質に取られて仕方なく私を誘拐したことになる。
騎士やサイアスという魔王がいる城の中から私を難なく連れ出せたということは、男を操っている黒幕はそれなりに城に詳しい人間だろう。

(もしかしてリーアとか言う、あの勘違い女かしら?それともルヴィアナを虐待してたあの侍女?)

もしくは私がまだ出会ったことのない、サイアスに恨みを持つ人物だろうか。

「ねぇあなた、名前は?私は……ヴィアよ」

今はとにかく情報を集めようと少年に声をかける。
ルヴィアナと名乗りかけて止め貰った名前を名乗った。

「ヴィアだね。僕はコルトっていうんだ、よろしくね」
「こちらこそ」

微笑みかけるとコルトも微笑み返してくれる。

「ねぇ、コルトは誰に誘拐されたの?」
「女の人2人だよ、多分片方は貴族の女の人」
「どんな人か覚えてる?」
「えっと」

コルトが答えようとした時、コツコツと石の通路を歩く音が響いた。
私達は思わず息を潜める。
段々と足音が近づいて来て、その姿が蝋燭の明かりに照らされた。

「ごきげんようルヴィアナ様」

姿を現したのは自称魔王の婚約者で勘違い女のリーアだった。そしてその後ろには腕と足に包帯を巻いたあの虐待をしていた吊り目の侍女がいる。
彼女達は私を見下ろしてニヤニヤと笑みを浮かべていた。
見事に予想は的中してしまった。

「わたくしのこと、覚えておいでですわね?ルヴィアナ様のせいで、愛しい魔王陛下に会えなくなってしまったではありませんか。それどころかあなたはこちらのサーリが気に食わないからと、魔王陛下に嘘をついて彼女を牢屋に閉じ込め鞭打ちにの刑にしたとか。なんて極悪非道な子供なのかしら」
「リーア様の仰る通りです!あなたのせいで私は心に癒えぬ傷を受けました!」

この侍女はサーリと言う名前なのか。初めて知った。
というか、彼女達は自分がサイアスに受けた罰を全部私のせいにして逆恨みしているだけではないか。
サーリが心に癒えぬ傷を受けた?バカバカしい。心を傷つけられていたのはルヴィアナの方だ。
どの世界にも加害者であるにもかかわらず被害者ぶっている馬鹿者はいるようだ。呆れて反論する気にもなれない。

「ですからわたくしは、サーリの手を借りて悪い子のルヴィアナ様にお仕置きして差し上げることにしましたの。魔王陛下のためにも未来の義母として躾をする役割がありますから。サーリ、ルヴィアナ様を連れていらして。しっかり躾をしてあげましょう」
「はい、リーア様」

サーリは鉄格子の扉を開けると私の髪を乱暴に掴む。

「……っ!」

まさか髪を掴まれるとは思わなくてバランスを崩した私は無様にも地面に倒れ込んだ。

「うふふっ、なんて無様なのかしら!これじゃあ陛下にも愛されないはずだわ!」

リーアはおかしくて仕方ないというように扇を口元で広げながら笑っている。
それはサーリも同じだった。

(この顔、見たことある……)

それは私をイジメて楽しげに笑う加害者どもの顔とよく似ていた。
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