奇妙な日常

廣瀬純七

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朝の身支度

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### 奇妙な朝の支度

「これ、どうやって履くの……?」  
一花の体に入った隆一が、ベッドの上で黒いタイツを伸ばしながら眉をひそめた。その姿に、自分の体のはずの隆一が冷静に答える。  

「足を入れて引き上げるだけ。簡単でしょ?」  
「簡単じゃない!引っ張ると爪が引っかかる!」  
「だからネイルの扱いには慣れろっていつも言ってるのよ!」  

朝から軽い口論が始まったが、そんな時間はなかった。二人とも通勤に遅れるわけにはいかない。  

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### 鏡の前の混乱

「一花のブラウスって、こんな窮屈だっけ?」  
一花の体に入った隆一は、自分のスーツシャツを着ようとして四苦八苦していた。袖口のボタンを留めるのに手間取り、額にうっすら汗が滲む。  

「わかった、私がしてあげるからこっち来て。」  
隆一の体に入った一花が、スムーズに袖口をボタンで留める。「ああ、なるほどこうやるのね」と呟きながら鏡越しに自分(の体)の姿を見ると、いつも以上にきちんとした印象に仕上がっていた。  

「髪も整えたほうがいいよ、髪がボサボサだと変に思われるから。」  
「じゃあ、そのボサボサをどうにかしてくれよ!」  

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### 朝食の攻防

食卓にはパンとサラダ、そしてコーヒーが用意されていた。一花の体に入った隆一がフォークでサラダをつつきながら苦々しい表情をする。  

「このサラダドレッシング、酸っぱすぎる。」  
「健康にいいのよ。私の体のことなんだから文句言わないで。」  
「俺の体も健康を考えてくれるなら、朝食にもっとタンパク質を入れてくれ。」  

お互いに不満を言い合いながらも、なんとか食事を終える。  

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### 駅への道

家を出ると、最寄り駅までの道を急ぎ足で進む二人。いつも通りの道なのに、体が入れ替わったことで一歩ごとに違和感がつきまとう。  

「歩き方、もう少し自然にして。」  
一花が隆一に向かって注意する。「そんなに腕振らないで、私の普段の歩き方に見えない。」  

「わかったよ……でもお前も、俺の体ならもっと胸を張れ。猫背だぞ。」  

互いに不慣れな体で、ようやく駅にたどり着いた。ホームで電車を待ちながら、一花は隆一の体でふと思う。  
「大変だけど会社に行ったらバレない様にいつも通りにやらないとね……」  

隆一も同じことを考えているようで、深いため息をついた。奇妙な朝が、さらに奇妙な一日を予感させていた。  

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