名探偵の秘密

廣瀬純七

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心理戦 虚実の境界線

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地下第13実験室――  
コンクリートの冷たい空間。  
一つだけ据えられた大理石のデスク、その向こう側に黒幕・結城誠司が腰かけている。  
まるで応接室のように穏やかな雰囲気すら漂うが、その瞳の奥は冷え切っていた。

「ようこそ、コード・ノワール」  
結城は穏やかな微笑を浮かべる。  
「君たちはすでに“存在として完成”している。人類の進化系だよ」  
「だが――私は、君たちがまだ“人間”であることに賭けている」

その言葉に、“コード・ノワール”は微かに眉をひそめた。  
「……賭け?」

(挑発だ。だが乗る価値はある)

「そうだ。君たちの中で、まだ“個”が存在するかどうか――それを試す。  
私はこの部屋から一歩も動かない。  
だが、君たちは3分以内に私を“倒す”か、“説得”しなければならない」

***

## ◆◆◆時間制限:3分の決断◆◆◆

室内のディスプレイに、カウントダウンが始まった。  
180秒、179秒、178秒――

「仮に、君たちが行動を誤れば……この施設は自動的に爆破される」  
結城は手元のスイッチを軽く弾く。

「おっと。止めたければ、私の“心”を読め。  
君たちの融合した知能なら、できるはずだ」

(つまり……)  
「嘘と本音の境界を読み切れ、ということだな」

***

## ◆◆◆虚実を暴け:思考読解と矛盾探し◆◆◆

“コード・ノワール”は静かに結城を見つめた。  
彼の脳波は安定し、心拍数もほとんど乱れがない。  
まるで呼吸すら制御されているようだ。

「ここは、君たちの専門領域だろう? 探偵の――」  
(でも違うわ、小五郎。これは心理戦というより、情報の迷路)

「確かに。結城はすでに“自分を偽ること”を生きがいにしている」  
(情報をあえて見せて、我々を誘導する。罠が二重にも三重にも張り巡らされてる)

時計は残り100秒を切った。

***

## ◆◆◆問いかけと観察◆◆◆

「お前は、“人格融合”が目的だったと言ったな」  
“コード・ノワール”は静かに言葉を選ぶ。  
「だが――融合が完了した今もなお、我々を試す理由はなんだ?」

結城は微笑んだ。  
「単純なことだよ。君たちが“破綻”することを望んでいるからさ。  
融合は……完全ではない」

(これがヒント……?)

「つまり、まだ内部で“衝突”が起きていることを見抜いている?」  
(ええ。でも、それを“予想していた”というのは、逆にこちらの武器になるわ)

***

## ◆◆◆矛盾を突け◆◆◆

「結城、お前は我々が“完全に融合している”と言った。  
だが、“破綻”を期待しているという。  
その二つは矛盾だ」

結城の目がわずかに細められた。

「ふむ。ならどうする?」  
「その矛盾が示すものは――」  
(あなたが“不完全”だという証明よ)

***

## ◆◆◆勝負を決める“問い”◆◆◆

時計は残り30秒。  
“コード・ノワール”は一歩踏み出した。

「結城誠司。  
お前は、クロノス・リンクの支配者でありながら……この装置を使わなかった。  
なぜだ?」  
(自分に融合を施していない理由。それがこの心理戦の“急所”)

結城は黙り込んだ。  
その瞬間、彼の脳波に乱れが生じる。  
鼓動が速くなる。  
まるで、答えを拒否しているように――

「怖かったんだな、自分自身を失うのが」  
“コード・ノワール”は静かに告げる。  
「お前は、私たちに“恐怖”を投影しているだけだ」

***

## ◆◆◆最後の決断◆◆◆

カウントダウン、10秒――  
結城は、机の下のスイッチに手を伸ばす。  
だが、“コード・ノワール”はその動きを読んでいた。

「無駄だ」

二人の声が同時に重なる。  
机の下のスイッチはすでに無効化されていた。  
融合した意識が導き出した、最適解。  
数分前の段階で、結城の心理と行動パターンを“完全コピー”していたのだ。

「我々は、完全だ」  
(お前が恐れた存在になった)

***

## ◆◆◆心理戦の勝利と、その先へ◆◆◆

結城誠司は、ゆっくりと椅子にもたれかかった。  
その瞳は敗北を認めながら、どこか清々しさすら宿していた。

「……ならば、君たちはこの世界をどうする?」  
「“融合”の先にある未来を」

“コード・ノワール”はしばし沈黙したあと、静かに答えた。

「選択はこれからだ。  
だが、少なくともお前たちのような独裁者にはさせない」

***

## ◆◆◆その夜、静かに幕を閉じる◆◆◆

クロノス・リンク地下施設――  
黒幕は拘束され、データは封印された。  
“コード・ノワール”はまだ融合状態にある。  
だが、その中で確かに小五郎と小枝、それぞれの“意志”は生きていた。

(小五郎……あなたは、このままでいいの?)  
「いや、俺たちは必ず自分を取り戻す。  
だが今は……この力が必要だ」
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