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王都へ 2

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ヴァイツェンのエスコートで馬車を降りると、甘い香を乗せた風が吹き抜け癒してくれる。
「いい匂い」
「気に入ってくれたかい、この香はリアンという花の匂いだ。これだけの群生地は他にないよ、ここで休憩時間が取れて良かった」
道の片側が草原となっており、白い小さな花が一面に咲いていた。
そこに十歩程踏み入った所に大きな布が敷かれてお茶とお菓子が用意されている。
若い男性が膝をついてセッティングしており、あと二人敷物からそれぞれ5メートル位左右に離れて立っていた。
服装はシャツとズボンに黒の外套を羽織っている、腰に剣があるから騎士さんかもしれない、がたいが良いし。
出発する時、すぐに馬車に乗っちゃったから見てなかったけど、オーガストさん以外にも護衛の人がいたのね。
「おいで、ティータイムにしよう」
紅茶とコックさん達から貰ったクッキーが置かれている。
この世界の食べ物は元の世界と似ていて、名称や風味が微妙に違ったりするが概ね受け入れられる味がする。
ドゥーベ辺境伯家では魔石を使った冷蔵庫のような物もあり、冷凍は出来ないが冷やすだけなら出来ると言っていた。
なんて優雅な時間だろうか、隣には王子様がいるってどこのお伽話だろうかと思う。
そうだ、それよりさっきの事謝った方がいいかな、いや、お礼を言うべきかしら。
「あの、さっきは肩を貸して下さってたみたいで、その」
「ああ、あのままだと倒れて怪我などしてはいけないと、つい近づいてしまった。寝心地は悪くなかっただろうか」
太陽の下でキラキラの笑顔を向けられ、大型犬がお腹に突進してきたかの如くよろめいた。
「おふ」
「おふ?」
「あ、いえ。大丈夫です、ありがとうございました。でも殿下に枕の代わりをして頂くなんて畏れ多くて」
「私は役得だったよ」
どうしてくれようこの王子様。
はぁ、本当に綺麗な顔をしてるわね、馬車の中で聞いたら二十二歳って言ってた。
私の身体的年齢より年上だったのね、中身がアラフォーだから少年に感じたのかな、改めて見ると理想の王子様よねぇ。
とはいえ、息子でもおかしくない年齢だなと思う。
ヴァイツェンを直視するのが眩しくなり目を逸らすと、オーガストさんの肩に毛虫のようなものがくっついているのが見えた。
あれ、刺されたら大変かもと声を掛けようと口を開けたら、サクッとした物が口内へ突っ込まれた。
「どこを見てるのかな、君は今、私といるのだけれど。クッキーは美味しいかい、私にも食べさせて欲しいな」
口に入った物はクッキーのようだ、そして私は今、強制あーんのご返杯を強要させられようとしている。
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